不思議な女の子(2)
違う点は、オレと違って身体をすこし揺さぶりながら起こしているという点だ。
「ダメだ、意識がないよ」
「じゃあ、救急車でも呼ぶか?」
「救急車を呼んでどうやって説明するのよ、空から謎の女の子が降ってきたんですって、正直に言うの?」
「…………まあ、信じてもらえるとは思えないな。でもオレたちの手にはどうしようもないなら、そうするしかないだろ」
「じゃあ、警察に?」
「警察だって同じだろ。ただ、警察のほうが身元を探してくれたりするかもしれないな」
「ああー! どうしよう! 星空を見るどころの話じゃなくなっちゃった! 素直に警察に行こう? 警察ならきっとどうにかしてくれるよ」
「ああ、そうするしかないか…………」
スマートフォンを取り出し、電話アプリを開いて110の文字を押す。
「じゃあ、かけるぞ」
「うん…………」
「…………ん…………んん…………」
「――――っっ!!」
謎の女の子が反応を示した瞬間、猫よりも速くその場から離れた。今のやばい動きは見逃さなかったぞ。
「い、い、いいい。今、女の子が、ん、って…………」
「ああ、オレも聞こえた。意識が戻るのかもしれないな」
「…………んん…………」
ゆっくりと、しかししっかりとした吐息が聞こえる。まるで眠りから目覚める前の動きのようだ。
「…………ん…………」
パチリと、その目が開いた。
「こんばんは。オレの言葉は通じるか?」
「……………………」
「あたしの声も、聞こえますか…………?」
オレの後ろにピタリとくっつきながら、顔だけ出して話しかける。
「……………………」
「聞こえているのなら返事をしてほしい。もしかして、オレたちの言葉が通じないのか?」
「……………………ん……………………」
ついにオレたちの呼びかけに対して反応が返ってきた。どうやら言葉は通じているようだ。
「…………聞こえ…………ます…………」
「ちゃんと言葉も通じているようで良かったよ。あんたは空から降ってきたんだ」
「…………空から…………?」
「もしかして、なんにも覚えてないの?」
「…………わからない、です…………」
「じゃあ、覚えていることだけでもいいから教えて。そうすればあなたの身元がわかるかもしれないから」
「……………ミオ」
「ミオ? ミオちゃんって言うの?」
「…………鼈宮谷澪。それがボクの名前です…………」
「澪ちゃん。他に覚えていることはない? 覚えていることがあれば、できる限り教えて」