まぶしい世界(3)
「…………とりあえずキーボードの刻印を見て、それとなく使い方は把握しています。困ったときには呼びますね」
「そうか。思っていたよりぜんぜん手間がかからなくて拍子抜けしたよ」
「りょーきー」
「んあー?」
台所から呼び声が聞こえた。
「パソコン買ったのはいいけど、普段の連絡手段はどうするの? 四六時中パソコンを持ち歩いて開いて…………ってわけにもいかないでしょ」
「ああ、そうか。普段の連絡手段が必要だよなあ。かと言って鼈宮谷さんに社会的信用があるわけじゃないし…………どうするかな」
「…………はい?」
「携帯電話ってのがあるんだけど。今どきならスマートフォンだな。それを契約するのには身分を証明できるものと、銀行口座かクレジットカードが必要なんだ。
身分は証明できるようになったから良しとしても、銀行口座やクレジットカードは社会的な信用が必要になる。なんの経歴もない鼈宮谷さんには少し難しいのではないかと思ってな」
「…………なるほど」
「ああ、そうか。オレのお古のスマホで良ければあげられるぞ。ただし通信の機能はついてないが」
「…………どうにかして、連絡を取れる手段はないのですか?」
「ある。学校内にはWi-Fiという無線でのインターネットが張り巡らされてるから、それに繋げば連絡は取れる。あとはコンビニとか、駅とか、要所要所に無料のWi-Fiがあるな。オレに直接連絡するのが嫌なら結月宛に連絡してくれてもいいぞ」
「…………そんなことは、ないです」
「じゃあ、ちょっと待っててくれ。今お古のスマホを引っ張り出してくる」
しばらく電源を入れていないから使えるかどうかわからない。だが、壊れてもいなかったので特に問題なく使えるはずなのだが。
「ああ、ついたついた」
ふぉんという効果音とともに、お古のスマホが動き出した。SIMカードが入っていないので電話は使えないが。
「ま、しばらくはこれを使ってもらえればいいだろ。鼈宮谷さんの生活が安定したらまた考えるということで」
いつの間にか、どこの馬の骨かもわからない女の子に情けをかけるようになっていたことに気が付いた。
いや、鼈宮谷さんを敵視したいわけじゃない。当然のことながら穏便に過ごしたいと思っている。
だが、本当にこの選択で正しいのか、オレのやっていることは、間違っていないのか、そういった疑念に駆られる。
「彼女は…………いや、きっと…………」
彼女は敵ではない。ずっとそう思い込んできたし、今でもそう信じている。




