探れる沼(7)
「…………はい」
暦の上ではもう秋の季節だが、残暑のせいかいろいろなセミがけたたましく鳴いている。このセミたちは必死にメスを探して鳴いていると思うと、ちょっと同情するものがある。
「暑いな」
「…………暑いです」
「…………」
「…………」
相変わらずふたりきりになると話題が続かない。鼈宮谷さんの趣味や共通の話題を知らないから、なおさら会話を噛み合わせることができない。
「…………稜希さん」
「なんだ?」
「…………寄りたいお店があるんですけど、行ってもいいですか?」
「大丈夫だぞ、どこに行きたいんだ」
「…………………………………………パソコンショップ、です」
「…………は?」
いやまあ、最初に話題を振ったのはオレだけども。まさか、本当に来てしまうとは思わなかった。
「…………こんなところがあるんですね」
オレの家の近くにパソコンショップはなかったため、夕方から電車で移動してお買い物に出かけることになった。
結月に連絡してないけど、大丈夫かな…………まあ、アイツなら実家が隣だから問題ないだろうけど。
「…………わあ、いろいろな種類があるんですね…………!」
来たのはパソコンショップと言うよりも家電量販店だが、いま必要なのはノートパソコンだろうから問題はないだろう。
「…………詳しいことはわかりませんけど、どれがいいんですか…………?」
「オレもそこまで詳しいってわけじゃないからなあ。まあ一番新しいやつを買っておけばいいんじゃないか? って、そんなお金あるのか? オレはさすがにパソコンまではおごってあげられないぞ」
「…………ボクが空から降ってきたとき、ボクの近くにあったバッグに日本のお金が入っていました。それを使えば…………買えなくはなさそうです」
状況的に考えて鼈宮谷さんのものであることは間違いないんだろうけど、バッグの持ち主がわからないから正直コメントに困る。考えるのはよそう、真実を知るの、怖いから。
「稜希さんが使っているパソコンはどんなものなんですか?」
「オレはSurwave Laptopというのを使っているよ。でもこれはもう何年か前の型落ちだから、今はもう同じものは売ってないと思うぞ」
「…………そうなんですか」
「うーん、どれがいいんだろうなあ」
「じーっ」
「…………稜希さんは、どんな基準でパソコンを買っているんですか?」
「性能は上から二番目くらいの性能のものを選んで、重要視するのはキーボードが打ちやすいかどうかだな。ほら、レポートとかで長文を書く機会が多いからな」




