かりそめの友人(12)
「えーっ。うう、逆らえないのがつらい…………」
「じゃ、オレは鼈宮谷さんの様子を見てくるから。くれぐれも丸パクリはするなよ?」
「もちろんだよっ」
図書館に来てから鼈宮谷さんの音沙汰がないが、どうしているんだろうか。まさかひとりでいなくなってしまったとかではないよな。
ウチの図書館はものすごく広い。蔵書数もさることながら、それを館内で読むためのスペースも広々と用意されているものだから実にすごい。
ただ…………実際そこまでの人間が使うか? というと微妙なところだが。ソーシャルディスタンスも兼ねてのものなのだろうか。
「…………いた」
広々としているが、ごちゃごちゃしているわけではないため比較的見つけやすい。特に今日はそれほど人がいないのも相まって。
「…………べっ…………」
声をかけようとしたが、なぜか声が止まってしまった。オレから見えているのは鼈宮谷さんの後ろ姿。オレが近づいていることには気が付いていないようだ。
一心不乱に、なにかの本を読みふけっている。
「なにを読んでいるんだ…………?」
心のなかに、ちょっとした好奇心が沸き起こってしまった。鼈宮谷さんが一心に読んでいるものはなにか、その本が知りたい。
鼈宮谷さんに気付かれないように、足音を立てずに後ろに近づく。そろりそろりと、抜き足差し足忍び足。やっていることが完全にストーカーのソレだ。
「…………?」
その本の中には《フェルミのパラドックス》と記載されていた。初めて聞く言葉のため、オレにはそれがなんの話なのか理解できなかった。
手持ちのスマホで検索をしてみると、意外な結果が表示された。
《フェルミのパラドックスとは、物理学者エンリコ・フェルミが最初に指摘した、地球外文明の存在の可能性の高さと、そのような文明との接触の証拠が皆無である事実の間にある矛盾のことである》
なんだなんだ。ずいぶんとたいそうなものを読んでいるじゃないか。
要約すると宇宙人は存在するか、しないか。地球に来ているか、来ていないか。その存在を証明できるか否かの狭間におけるパラドックスのようだ。
《説1:宇宙人は存在し、すでに地球に到達しているが検出されない》
《説2:宇宙人は存在し、過去に地球に到達していたが、最近は到達していない》
《説3:宇宙人は存在するが、なんらかの制限又はある意図のためにまだ地球にやってきていない》
《説4:宇宙人は存在するが、恒星間空間に進出し地球にたどり着くための進化・技術発展における難関を突破できない》
《説5:この宇宙には地球以外に生命体が存在しない。すなわち「存在しないものは来ない」》




