かりそめの友人(10)
どこの国から来たかわからないが…………鼈宮谷さんはそれが食べ物であるかどうかもわからないような様子だった。それが示す意味は…………。
いや。発想を逆転させてみよう。記憶喪失などで食文化を忘れてしまったのではなく…………そもそもソレが食べ物であるとわからなかった場合は…………?
鼈宮谷さんはいったい、何者なのだろう…………。
「あー食べた食べた。お腹いっぱい。次の授業時間は休みだし、その間なにをしてよっか」
「じゃあ、図書館でも行ってみるか? 鼈宮谷さんが興味を持てる内容の本があるかもしれない」
「え、でも、入れるの? 図書館ってICカードでの認証が必須でしょ? 澪ちゃんICカード持ってないじゃん」
「まあ、明日受験するのでその下見ですとかなんとか言えば通してくれるんじゃねえかな」
「ガバガバな理屈だね…………」
「まさか本当に入れてしまうとは…………」
最初は交渉に手間取るかと思ったが、結月の持ち前のコミュ力おばけ交渉によって通してもらえることになった。ただし、一度きりだけど。
「まあ今日さえ通してもらえればあとは試験に合格して正式に入れるようになるもんね!」
「声のボリュームを少し落としてくれ。図書館なんだから」
「あ、はいはい…………」
「鼈宮谷さん。なにか見たいものはあるか? それとも自分で見たいものを探すか?」
「…………自分で探します」
「わかった。じゃあオレたちは別なことをやっておくから、適当に過ごしててくれ。パソコンが使えるコーナーにいるから、飽きたら声をかけてくれ」
「…………わかりました」
「え? パソコンコーナーって? なにかするの?」
「オレのリュックを開けてみろ」
「う、ん? あ、パソコン入ってる。で?」
「さてここで問題だ。パソコンを持っている、パソコンでやらなければいけないこと、期限があるもの、なんだ?」
「…………」
みるみるうちに顔が青くなっていく。見ていて面白いぐらいだ。
「れ、レポート…………?」
「そうだ。で、お前はパソコンを持ってきたのか?」
「そんなことすっかり忘れてたから持ってきてないよ! 締め切りいつまでだっけ?!」
「明後日なんだよなあ」
「稜希のいじわる…………はやめに言ってくれればあたしだってちゃんとやったのに…………パソコンないからレポートも書けないしどうしよう、助けて」
「…………」
まあ、見捨てるのもかわいそうだしなあ。一応なんとかなるプランは考えてきたけど。




