空から流れ星が!(3)
コイツはオレが保育園のときに近くへ引っ越してきた。どうやら家族が子どものためにマイホームを買ったらしく、それに伴ってのものらしい。
最初は同い年の女の子が引っ越してきて驚いた。だが公私ともに接していくうちに……だんだんとコイツの扱いに慣れてきたような気がする。
「ところで、彼氏とかはいないのか? こういうところは、彼氏と来たほうが味があるってもんじゃないのか?」
「…………けっ。彼氏なんていたらもうとっくに彼氏と来てるよ」
さきほどのオレのイントネーションを丸パクリして返された。
「ああ、そうだな、お前はウソを吐くのが下手なんだっけな」
「こんなにきれいなものが見られるのなら、とっくの昔に嗅ぎつけて来てるよ。いないから稜希の誘いに応じたんじゃないの。運転したのはあたしだけど」
「ああ、言い忘れてたな。運転してくれてありがとう」
「いまさらすぎるお礼だねっ! 着いた時点で言っておくべきだったよ」
「それにしても、きれいだな。都会の喧騒から離れて、ふたりで星を見ながら歩く……なかなかいいじゃないか」
「うん。来て良かったと思う。…………あっ! 流れ星!」
「はやく願いごとを言え!」
「金持ち! 美人! 彼氏! 幸せ! 名声! …………あっ、消えちゃった」
「…………」
「な、なによ」
「お前、欲が多すぎないか? しかも願いごとって同じことを三回じゃなかったっけ?」
「え。そうなの。じゃあ金持ち! 金持ち! 金持ち!」
「もう遅いって。次に流れるのを待とうぜ。って、お前の脳内、煩悩だらけじゃねえか」
「いいの。欲はないよりあったほうがイイんだから! 下世話な願いでも叶ったら正義なんだから」
「まあ、願いごとの内容までケチはつけたくねえけどさ……」
それからしばらくしても、流れ星が見えることはなかった。流星群が来てるというのに、案外流れないものなんだな。
「本当にあれっきりー? なんだかつまらない」
「まあ、メインは流れ星よりもこの満天の星空だろ。それが見られただけでも儲けもんってもんだ」
「それは、そうだけどさ…………」
「流れ星に願いか、叶うといいな」
「稜希は、そういうの信じてないの?」
「信じないというか、そううまくはいかないんだろうなって。なにかトラブルがあってなんぼのもんだと思っているから」
「なんのトラブルもなく、ストレートに願いが叶ったら嬉しいよね。宝くじに当たったような感覚」
「本音を言えば俺だって社会人になる日が来るし、働かずして金を得たい。そういう願いを流れ星に込めたら叶うのかねえ」