空から流れ星が!(2)
他愛もないやりとりを繰り返し、車は目的地に到着した。
「夜だというのに暑いな…………」
エンジンを切った途端にモワッとした空気が車内に漂い始めた。
「仕方ないじゃん。今は7月だよ。夜だろうが昼だろうが否応なしに暑いよ」
冷房が効いた車内が天国のようだと再認識させられた。
「とうちゃーく。おおー! 稜希見て! 上! 上見て!」
「うん…………?」
ふと空を見上げると、そこには満天の星空が広がっていた。
「おお。これはすごいな。眠気がパッと覚めるようだ」
「きれいだね…………」
「今日は流星群が見られるって話じゃなかったっけ? 流れ星は見えてるか?」
「今のところは見てないなー。待っていればそのうち見られると思うけど」
「オレたちのほかに誰もいないな。案外誰かいるものだと思ったが」
さっきまでの寝ぼけ具合が嘘のように、パリッと目が覚めた。今までのことも問題なく思い出せる。
「結月、なんかすまなかったな。寝ぼけていたみたいだ」
「まあ同乗者が安心して眠れる運転って良い運転って聞くけどさあ。いざ変な話をされるとびっくりするよ」
「オレ、なにか寝言とか言っていたか?」
「いいや? 特になにも言ってなかったよ。ただ、せっかくのお出かけでよー寝られるなあとは思ったけど」
一定の周期で音を立てる波打ち際をふたりで歩きながら、空を見上げている。
「どうしてオレの誘いについてきたんだ? お前なら、その、もっとイイ男とかいるだろ?」
「たしかに。もっとイイ男の誘いに乗っておけばよかったかな」
「…………けっ。煽られると腹立つわ」
「あはははっ。冗談だよ。稜希なら変な気を起こさないでしょ? だからついていったんだよ」
「まあ、別に猿じゃねーしな」
「うかつに男と一緒に行くとさ。案外狙われたりするじゃん。稜希ならそういうことはしないって信用してるからね」
「ふーん。まあ信用されているのは悪い気はしないけどな」
「それにね。稜希と一緒にいるとなんだか安心するんだ」
「安心?」
「心が落ち着くっていうか、少なくとも警戒しながら接しなきゃいけないプレッシャーから解放されるというか。なんとなく、気持ちはわかるでしょ?」
「まあ、そうだな」
オレと同世代の人間は彼女や彼氏を作ろうと必死だ。それに結月が巻き込まれるのは……すこしかわいそうに思える。
「さっすが15年も一緒にいる相手だね。幼馴染の貫禄は伊達じゃないね」