不思議な女の子(9)
だがオレたちが今優先すべきことは鼈宮谷さんの身元と所在を明らかにすることだ。それがなによりも先だ」
「…………空から…………?」
意外なところに反応を示した。
「…………空から、って、どういうことですか…………?」
「どういうこともなにも、そのままの意味だが。鼈宮谷さんは流れ星のように空から降ってきて、落下地点で横になって眠っていたんだ。それを覚えていないのか?」
「…………覚えて、いないです…………」
「まあ、これまでのイキサツを覚えていないようじゃそれを覚えてなくても仕方ないけどさ。アンタは空から降ってきたんだ。凄まじい光を放ちながら…………な」
「それはもうすごい光だったよ! 一瞬であたしたちが消し飛んだかと思ったぐらいのすごい光! だけど光ったという以外に特にダメージはなくて、衝撃波もなかったかな」
「…………そ、そうだったんですか…………」
「鼈宮谷さんに思い出せることが増えたら、なぜこの場にいるのかの説明ができるようになるのかもな。なんの理由もなく空から降ってくることはないだろうし」
「…………ボクも、理由があってここに来たんだと思うんですけど…………思い出せません」
「まあ、いいよ。今すぐに思い出せって言われてもできないものはできないだろうし。それよりもここで生活をするにあたっての準備をしようぜ」
「け…………警察に行くんですか…………?」
「身元と所在もわからない以上、警察に行ったほうが確実に鼈宮谷さんを保護してくれると思うんだが。そんなに嫌なのか?」
「…………警察に行くと、自由がなくなるので…………」
「自由…………?」
意味深な発言だった。
「自由がなくなると、なにかまずいことがあるのか? 自由がなくなる代わりに、身の安全は保障されるぞ?」
「…………ボク、もっとここのことを知りたいんです。ここがどんな世界で、どんな通貨で、どんな暮らしをしているのか、そのなにもかもに興味があるんです…………」
「知りたい…………とな」
「…………警察に行ってしまうと、外の世界のことがわからなくなります。ボクがここに来たのは、なんらかの『ゆかり』があってのものだと思うんです…………。
その『ゆかり』がなにかわかるまで、どうかここに居させてもらえませんか…………」
深々と、頭を下げられた。見ず知らずの女性にそんなことを言われても、オレとしては知らない人を自宅にいさせるわけにはいかないのだが…………。