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彼女の思い出(8)

「お待たせしましたァ。カルボナーラとイカスミパスタ。ふたりぶん。伝票はここに入れておくよ」

 カルボナーラが800円、イカスミパスタが1,200円だ。安くはないが、交際費だと思えば許せる値段だ。

「ありがとうございますー。マスター、パスタふたり分で2,000円って高くない? もっと安くしてよ〜」

「カルボナーラもイカスミパスタも、作る原価が高いんだわ。なんにも入ってないペペロンチーノなら500円で出せるぞ」

「まあ、仕方ないかあ。お代はケチらずしっかり出すから安心してね」

「そりゃありがたいことだね」

「それで、どこまで話したっけ」

「免疫促進剤を飲んでいるということまで話したな」

「ガンの患者とかは自分の防御力を高めるのに免疫促進剤を飲むそうなんだけど、わたしはガンというよりそもそもの免疫力が弱いみたいでね」

「とりあえず、ミトちゃんさんが病弱だったのはわかった。それがどうして鼈宮谷さんとの接点を持つことになったのか教えてくれ」

「うん、もちろんこれから話すよ。これも話が長くなるからごめんね」


 わたしの入退院はいつも同じ病院に行っていたわけではなく、病気や怪我に応じていろいろな病院を転々とすることがあった。

 もちろん自宅から最寄りの大病院に入院することが多かったものの…………そこで手に負えないものは家からはるか遠く離れた病院にお世話になることも少なからずあった。

「陽莉。今日は世界的な名医…………世界一のお医者さんに診てもらえる機会ができたから。そこへ行くわよ」

 新幹線ではるばる西へ向かう。歩けなくはないものの、長距離の外出で疲れるだろうとの判断で車椅子での移動になった。

「ここ…………どこ?」

 2時間半ぐらいだろうか、いくつかの駅に停車しながら目的の地にたどり着いたようだ。

「ここからはタクシーを呼んでいるから。そのままタクシーに乗って向かうわよ」

 今思えば、両親はわたしをお荷物だと思っていたのだろう。だが、それでも大金を使って自分の子どもをなんとかしようとしていたのは、やはり責任を感じていたのだろう。

 どこかの病院に着いた。いつも通っている病院よりもさらに大きく、建物だけでも最先端の施設であることが見て取れた。

「さ、いらっしゃい」

 世界一のお医者さんとやらに病状の説明と今後の治療方針について聞いているようだ。わたしにはなにを言っているのかさっぱりわからなかったため、話の内容は覚えていない。


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