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彼女の思い出(7)

「……………………」

 そんなわけがない。父も母も、困っているわたしを見て迷惑そうにしていた。わたしには救いがないのだと、何度も思った。

「自分の病気のことで迷惑だなんて思わないでください。病気であろうとなかろうと、陽莉ちゃんは陽莉ちゃんです。そこにひとりの人間と人格があって、

 ほかの誰にも代わることができない人生を持っています。陽莉ちゃんはもっと自信を持って、生きようと強く願ってください」

「……………………」

 信じられない言葉だった。父も母も、そんな言葉を投げかけられたことなどないのに。心配はしても、期待はしていない。そんな空気がにじみ出ている人間だったのに。

 どうして、こんな、わたしに…………。

「…………ごめん、なさい…………」

「わっ。泣かないでください。陽莉ちゃんを責めたてたいわけじゃないんです。陽莉ちゃんはひとりの個性ある人間だって、伝えたかっただけなんです」

 辛くて泣いているわけではない。わたしのことを迷惑じゃないと言ってもらえたことが…………嬉しかっただけだ。

「ごめんなさい…………嫌な言葉だったわけじゃないです…………」

「よ、よかった…………てっきり傷つけてしまったのかとびっくりしました」

 思えば、『わたし』を『わたし』として認識したのは、このときが初めてだったのかもしれない。


「ミトちゃんさんが…………病弱?」

 笑顔も素敵で言葉尻も明るい彼女が、そんな過去を抱えているとは思わなかった。

「信じられないって顔をしてるね。意図的に変えたんだよ。後ろ向きになるよりも前向きに。そうすればきっとついてきてくれる人が現れる」

「で、でも。だからといって病弱であることが治ったわけじゃないんだろ?」

「そうね。治ってないよ。今でも風邪を引けば悪化するし、怪我をすれば治りが悪い。昔と違うのは、すこし対抗策ができたということだね」

「対抗策?」

「免疫促進剤。キノコとか菌類から抽出した成分を使って、免疫を刺激して防御力を高めるの。そうすれば少しだけ健康体でいられるようになった」

「そうか、完璧とまでは言えずとも昔よりは状況を改善させる方法を見つけ出したのか」

「免疫不全って、いろいろな原因があるけど。要するに自分自身を防御してくれる機能が低下している状態なのね。だから病気になると悪化するし、

 怪我をすると傷口からバイキンが入る。そういうのを防ぐためのお薬だね。普通の健康的な状態であれば薬なんて飲まなくてもどうにかしてくれるんだけど」


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