彼女の思い出(5)
「やっぱそうなるよねー。知ってたよ。あとでなにを話したのか問い詰められるところまでセットだよ」
「あんまり聞かれたくない話なんだろうと思ったから、ミトちゃんさんと会ってくるという点以外は適当にはぐらかしたんだが」
「そのほうがいいかな。まだふたりに話すのは早い気がするから」
「…………ふたり?」
「結月と、澪さん。ふたりのことだよ」
「結月ならともかく、澪さんとミトちゃんさんの接点はないと思うんだが」
「それを今日話に来たわけよ。とりあえず注文しよっか。ヘイ、マスター!」
「変な呼び方をするんじゃない」
「わたしはカルボナーラ。稜希くんはどうする?」
「じゃあオレは…………このイカスミパスタってのを頼んでみようかな」
「はいよ。ドリンクはどうする?」
「お金がちょっと厳しいので、水でお願いします」
「はいよ。じゃあ、適当に話し込んでいてくれ」
オーナーが厨房に入り、店内に静寂が訪れた。
「なにから話そっか」
「なにから聞いていいのか、さっぱり…………」
「じゃあ、とりあえず結論から言おっか。わたしは、鼈宮谷澪さんと会ったことがある」
「…………は?」
そんなバカな。鼈宮谷さんの境遇はミトちゃんさんに話していない。空から降ってくる前のことを、知っているというのか…………?
「…………どういうことか、教えてくれないか」
「これを話すためには、わたしの半生から語らないといけないんだよね。話が長くなるけど、いい?」
「ああ。時間はたっぷりあるからな」
「じゃあ、一方的に話すね。聞くことに徹してくれればそれでいいから」
「なんでうちの子が…………」
「お、俺のせいじゃないぞ! 病弱なのは本人の問題だ!」
「そんなかわいそうなこと言わないでよ! この子はあなたの子どもじゃないの!? あなたとの子どもなら、あなたも最後まで面倒を見てよ!」
わたしは、小さいころから病弱だった。今でこそ普通の生活を送れる程度には適応したものの、なにをするにも病院送りというかなり厄介な存在だった。
「なんでこの子は、普通の子と違うの…………? いったいなにがいけなかったの…………?」
風邪を引けば高熱を出し、転んで膝をすりむけば化膿する。ありとあらゆる病気や怪我が重篤化するという、たぐいまれな人間だった。
「ママ…………」
「明日からまた入院よ。次はいつ退院できるかわからない。ちょっとだけ、ちょっとだけだから、我慢して…………」
母は、わたしにこそ優しかったが、父との間では『なぜこのような子が生まれたのか』とよく喧嘩をしていた。どちらに責任があるとか、ないとか。




