空から流れ星が!(1)
お読みいただきありがとうございます。
大長編ファンタジー小説、ここに開幕。
――――。
誰かの声が聞こえる。
――――。――――。――――。
誰かが名前を呼んでいる。ただ……それは普通の声ではなくて。
泣いているような……悲しみが含まれた声だった。
「お、おい……っ!」
その声を呼び止めようと声をかけるも、その声の主に届くことはなく。
――――。――――。もうすこし――――。
「もうすこし、なんだ?」
オレの声は声の主に届くことはなく、ただ一方的に言葉を発しているだけである。
――――。――――。手遅れ――――。
「な、なにが手遅れなんだ!?」
何度語りかけても、オレの声が届くことはなかった。
「――――。起きてよ。もう着くよ」
「――――。ねえ。ねえってば!」
ハンドルから手を放した左腕でゆっさゆさと揺らされる。自動車の振動とも相まって、非常に心地良い。
「ん…………」
「人に運転させておいていつまで寝てるのよ。これだから稜希は…………」
「んあ…………ここは、どこだ…………?」
「自分から行きたいって言ったんじゃん! オレは寝てるからーって、人に運転させて!」
「んあー…………えっと、そうだったっけな…………」
なんだかすごく長い間寝ていたような気がする。隣にいるのは…………麻空結月か。
「そもそも、稜希のほうが先に免許を取ったじゃん! あたしは初心者マークなんだから、自分で運転してよ!」
「オレだって初心者マークだ。別にそこに違いはないだろ」
「うう…………それはそうだけどさあ」
「で。オレたちなにをしに来たんだっけ」
「ひっぱたくよアンタ…………星を見に来たんじゃないの」
「星?」
「そう。星空がきれいな砂浜があるって聞いて、こんな夜中に車を飛ばしてドライブってわけ」
「そうか…………星か。きれいなものは見たいもんな」
「なんでそんなに他人事のように言ってるの。自分が見たいって言ったから融通をきかせて車を出したんじゃない」
「な、なあ。オレって誰だったっけ?」
「まだ寝ぼけてるの? 稜希、高嶺稜希。それがアンタの名前よ」
「あ、ああ…………そうだったよな」
「本当にどうしたの? 運転中に居眠りしてから様子がおかしいよ?」
「すまん。なんだかとても長い夢を見ていたような気がするんだが…………なんだか思い出せねえんだ」
「ただの夢だよ。それとも、自分の……記憶があいまいになるほど荒い運転だったって言いたいの?」
「いや、そういうわけではないが…………」