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バーキング公爵一家の夏休み  作者: 耳折れ猫
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公爵家の魔導具

 トーマスは次の日、ベンとサードに公園の金の薔薇を貴族が狙っている話をした。


「あの公園は、昔のご領主様が、平民の憩いになる場所を作ろうとしてできたって聞いたぞ!

 あの紫色の薔薇だって、どっかの国から友好の為に贈られたんだろう?

 それが何で平民が薔薇を盗むみたいに言われないといけないんだ!」


 ベンは平民を差別していると怒り出した。

「友好の為?」僕は、紫色の薔薇の花壇に行って立て札を読んだ。




 アドレイ領主

 アドレイ領民 の皆さんへ


  両国の友好と親善の為に、この紫の薔薇の苗木

  

  を贈ります!


        リンドル国 第六王子

        アランフリード.クォン.リンドル




 あ、これはあれだ…。婚約期間中に母上に会いたがった父上が、会う口実を作る為に薔薇の苗木をアドレイ領に贈って、贈呈式をしたってダウマンが言ってたやつだ。

 まさかの父親の関与にちょっとウンザリしたトーマスだったが、友好の為に他国から贈呈された物を私物化しようとしている従兄弟達の言い分は絶対におかしい。

 これは阻止しなければいけないと強く思った。


 その日の夕方、3人の人足の者を連れてダリーとデリーがやってきた。


 それを僕達子供10人は、薔薇の花壇の前で待ち受けていた。


 「公園の薔薇を私物化するな!お前たち帰れよ!」


 僕やベン達が口々に言うと、ダリーは顔を真っ赤にして怒った。


 「うるさい!金色の薔薇は僕達の物だ!平民は引っ込んでろ!」


 睨み合いが続いていると、弟のデリーが子供用の剣を持って出て来た。


「あんまりガタガタ言うと、僕の〈火花の剣〉でやっつけてやるぞ!いいのか?」


「貴族が平民にスキルで攻撃するのは禁止されてるはずだぞ!」


 「うるさい!平民が貴族に逆らうのが悪いんだ!」


デリーは、「火花の剣!」と言うと、大きく剣を振り回した。


 剣から、線香花火のような小さな火花が飛んで来て、ちょうどラグナスの腕の所で弾けた。


 「お兄ちゃま、痛いよー」腕に蚊に刺されたような赤みができてラグナスは泣き出した。



 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴォォォォォォォォォっ!


「ラグナスを泣かせたな!!許せん!」


怒りを露わにしたのはアンダルシアだった。


 「召喚!!」


 アンダルシアの手に光輝く剣が現れた!


 「!!!!!!」


 何?その召喚って…。お兄ちゃん初めて聞いたよっ!


 「豪炎の剣!!」


 だから何?その豪炎の剣って…アンダルシアが持ってるのって〈炎の剣〉じゃなかったっけ?


 アンダルシアの剣から放たれた炎は、悲しいかな7才児の魔力ではすぐに形を失い、デリーの腕にかすり傷をつ付けただけのようだった。


 それでも平民に傷を付けられたというのはデリーとダリーにとってはショックなようだった。


 ガタガタ震えだした二人に、後ろから声が掛かる。


 「何をやっているのです?二人とも。早くしないと暗くなるではありませんか!」


 「母上っ!!」


 彼らの母親、マスケード子爵夫人が現れた。


 「汚いぞ!子供のケンカに親が出るのか!!」


ベンやサードや他の子供達が一斉に声を上げた。


 「平民のくせに何を言うのです。生意気な!

早く金の薔薇を抜いてしまいなさい!」


 「いーけないんだ!いけないんだ!

  子供の喧嘩に親が出る!

  子供の喧嘩に親を出す!

  おまえの母ちゃん出ーべーソ!」


 子供達の囃し歌に腹を立てたマスケード子爵夫人は、護衛の騎士達に命令した。


「このうるさい子供達を、そこの用具小屋に閉じ込めておしまい!

 ごめんなさいと言うまで出しませんからね!」


 大人の護衛騎士に追いかけられ、子供達は次々に小屋に入れられて行った。


 「これでゆっくり薔薇を移せるわ」とマスケード子爵夫人が金色の薔薇の花壇に行こうとした時に。




   「ドガーーーーーン!!」



   「ピカッ!!」



 と小屋から大きな音と強い光が溢れた。


 「何ごとです?」


  慌てて護衛騎士が小屋を開けると、閉じ込めてた子供は一人もおらす、もぬけのカラである。


 そこへ後ろからトーマスが現れた。


「子供達は全員、魔導具で公爵邸の玄関に転移させました。

 今頃、父上や祖父のアドレイ公爵が、こちらに向かっているでしょう。

 子供の喧嘩に親が出るのは反則なんですよ。

マスケード子爵夫人」


「おまえは?」


 トーマスの顔をよく見た夫人は、ようやく昨日挨拶したバーキング公爵家の息子だと気がついたようだ。

 焦ったのか、いきなり掴みかかってきた。


 「おっと、お待ち下さい。

 さっきの魔導具が1個しかないなんて言っていません。3人兄妹それぞれ持っているのですよ。

 それでは、あとはアドレイ公爵と父のバーキング公爵に申し開きして下さいね!ルーンアウト!」


 僕は腕からブレスレットを外すと地面に叩きつけた。

 その瞬間、僕は転送され後には轟音と凄まじい光が襲った。


 目と耳が音と光で使えなくなったマスケード子爵夫人と護衛騎士達は、その後アドレイ公爵の騎士達に捕らえられ、公爵邸に連れて来られた。

 駆けつけた夫のマスケード子爵を公爵はきつく叱責し、子爵と夫人はアドレイ公爵領に出入り禁止の命令が下されたのだった。



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