きみの小説(少し遠い短歌より)
きみを詠みたる懐かしき言葉の褪せてゆくことが淋しくあれば、新しき色を重ねて詩として、誰かに読んでほしいとも思える秋は、やはり寂しい。
推理小説
正解は、きみだけが知る服選び
「どっちがいい?」ではじまれば
「そうよね」までの心理戦
気づかぬ振りの誘導や
やらせのミスを鏤めて
「こっちにするね」の笑顔まで
迷探偵は、灰色の 脳細胞を使いきる
恋の小説
栞した僕だけが知るエピソード
手鏡を閉じ、「変わらない?」
「でしょう?」と、きみがメイクした
目を見開いて、この僕に
笑ってくれた秋の日の
素顔のほうの面影を
記念写真の代わりにと
記憶の中に閉じている
元歌
正解は、きみだけが知る服選び「どっちがいい?」で推理はじまる
「変わらないでしょう?」と、きみはメイクして僕にほほ笑む、それが愛しい
それにしても、テーマによっては七五調の表現は、すっきりとは収まってはくれませんね。はみ出そうとする詩を、なんとか、無理やり押し込んだ感じなのでしょうね。我ながら、違和感が半端なく生じてしまいました。でも、これはこれで、今から過去に投函するラブレターのようなものですから。
そう言えば、大切なことがひとつ。メイクをしたきみは、本当に変わりませんでした。おかしいくらいに。それくらい、端正な顔立ちなのですよね。
本歌とは言えぬ歌でも、この歌はきみをなくした僕の思い出