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第6話 嫌われ令嬢の恋人

 私の体の元の持ち主には同い年の恋人がいた。

 宮中伯(プファルツ)ツヴァイブリュッケン=ビルケンフェルト家の公子。カール・アウグスト・クリスティアンである。


 彼は、父が現在行われている戦争で帝国軍の指揮官の1人であったこともあり、宮廷ではよく知られている存在だった。


 どうも女というものは、そういう目立つ存在に()かれる性質があるらしい。

 確かに日本にいた頃も、生徒会の役員だの、部活の部長などはモテていた。


 元の体の持ち主もそんな女の一人のようだった。


 だが、精神年齢24歳の私にとって、リアル14歳の少年というのは、恋人としてはいかにも幼く、頼りない存在に感じられた。


 仮に私がカウニッツ様と上手くいったとすると、別れ話を切り出さないといけないと思うと気が重かった。

 なにしろ彼自体は純朴な少年で、あちら側に非はないのだから…


 だが、これは仮の将来の話であるので、しばらくはペンディングにしておく。


 夏休みが終わり。学園生活がスタートした。

 学園に登校した私に、早速カールが話しかけてくる。


「アマーリア殿下。お久しぶりでございます。夏休みが終わるのを心待ちにしておりました」

「私もよ。カール。長い間会えなくて寂しかったわ」

 とりあえず、話を合わせておく。


 その後も学園内ではカールに合わせて会話をしていた。

 続けていれば、そのうちに情も移るかとも思ってのことだった。


 当然に、親しく接していれば親密感は増したものの、カールを愛せたかというと、そうはならなかった。


 精神的な年齢差ということを差し引いて考えると、カールは学業の成績も武術の腕もまあまあだし、容姿もハンサムな部類といっていい。だが、それだけなのだ。

 凡庸ではないが、アピールできる魅力に欠けた。


 元の体の持ち主にとっては、軍指揮官の息子というステイタスが魅力だったのかもしれないが、私にとっては、そんな親の七光りなどどうでも良かった。


 ──いったいどうしたものか…


    ◆


 私は学園中等部の授業のレベルの低さに辟易(へきえき)していた。


 意味があるのは、ダンスやマナーのレッスンくらいだろうか。

 だが、それも夏休み中に特訓したおかげで、ずいぶんと上達していた。ダンスやマナーの家庭教師の先生は結構な鬼教官だったので…


 そうして(くすぶ)っているところで、カウニッツ様から飛び級が可能なことを聞いた。


「殿下。学園にそんなに不満があるのであれば、大学(アカデミー)の入学資格検定を受けてみてはいかがですか? 殿下ならば何の問題もなく合格できると思いますが…」

「そのようなものがあるのですか! それはぜひ受けてみたいです」


 そして大学(アカデミー)の入学資格検定に合格した私は、大学(アカデミー)の入学試験にも難なく合格し、翌年から通うことになった。


 カールには事前に大学(アカデミー)の入学を目指すことを話していたが、彼の方はそのような学力もなく、引き続き学園中等部で進級することとなった。

 結果、私たちは大学(アカデミー)と中等部へそれぞれ通うことになり、普段接する機会はほとんどなくなった。


 それにカールは、私が大学(アカデミー)に進学することで、プライドを砕かれてしまったらしい。女の方が自分より優れていることを素直に喜べるほどの度量は持ち合わせていなかったのだ。


 結局、2人の関係は先細りになっていき、自然消滅するような形となった。


 後味はあまり良くないが、私にはっきり振られるよりはましよね…


 ──ごめんね。カール…

お読みいただきありがとうございます。


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