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ノワの方舟  作者: EVO
傭兵業開始
7/71

007.腕利きのスタッフは如何?

 物資の手配を終えてシェフィと合流した、内訳も問題ない、まあキャプテンの艦に15年同乗していたんだからオペレーター業務とこういった補充品は私より遥かに知っているようで、ああ確かにそれも必要だよねと思う細々した物も含まれていたので本当に助かる。


「ありがとうシェフィ」

「はい、いいえ、お役に立てて光栄です」

「後は、パイロットスーツとか私服、下着かな?」

「はい、私はアークに給仕服数着の予備が御座いますので、ノワ様の身の回り品ですね」


 シェフィはアンドロイドなので他に必要なものは無い、専用のメンテナンスポッドは備え付けられているし、どちらかと言えば着の身着のままで旅立った私の方が必要なものが多い。


「あ、あとゼクセリオン・コーポレーションの仮電子入館証も返さないと、確か支店あったよね」

「はい、ゼクセリオンも衣服も下調べは済ませてあります」


 ヤバイ、シェフィがなんでも先回りしてくれるのでダメ人間になりそう、ママもアンドロイドだった筈なのにお世話欲みたいなのは無かったんだけどなあ、産みのママの記憶をフルコピーした影響だったのかな?


「ああっ!? 埋まった!?」

「はい、申し訳御座いません」

「いやすまない、そっちのせいじゃない」


 大きな声がギルドに響き渡った、キャプテンが端の方のカウンターで女性職員と話をしていた。

 女性職員は会釈をすると奥の方へと下がっていく、キャプテンはワシワシと乱暴に茜色の髪を掻きむしって近くのソファーにどっかりと座り込んだ、その顔色はあまり良くない。

 ていうか脂汗が凄い、え、大丈夫キャプテン?


「ノワ様、キャプテンは借金が御座います」

「それって、まさか新造艦の?」

「はい、相当額ギルドから貸し付けを受けたのですが」

「が?」

「3億程で、その額自体は問題では無かったのです、キャプテンの収入からすると1年以内に完済出来る額でした」

「あ、なんか読めた、それ艦があればの話?」

「ご明察通り、しかしブラックダイヤモンド号は爆散しました」

「うん、でも保険入っているよね、あのクラスの航宙艦なら保険金でも数億マニになるんじゃないの?」

「はい、いいえ、保険金だけでは補填額が足りなかったようです、その為以前とある企業からテストパイロット契約のお誘いがありまして、ああ見えても金獅子級傭兵なので相応の金額が、」

「おお、じゃあ・・・」

「しかしテストパイロットの枠が埋まったようで」

「えぇ、キャプテン運悪すぎない? それで?」


 なんともお大尽な話だ、数億マニなんて桁が違うよね、キャプテンの新造艦だって15から20億マニくらいだろうし、航宙艦乗りだと稼ぐ額も凄いけど出て行く額も凄いんだよね。

 私も今さっき億マニ武装に使ったけど、殆ど賞金首の収入分で大金を使ったという現実感があまりない。

 シェフィは続ける


「因みにキャプテン・ドレイクの運転資金は現在数百マニです」

「え゛、それマズくない?」

「マズイです、支払い期限まで余裕はあるものの、片腕と艦を失った傭兵には荷が重いでしょう」

「うん・・・」


 片腕なら機械腕で50万から100万マニくらい、自分の細胞で1から創り出す生体腕なら300万マニくらいだった筈。

 私を守る依頼のせいで無くしたから再生分くらいはと思ったけど、施しは受けないよ!と断られそうな気がする、付き合いはたった1日そこそこだけどキャプテンなら言いそうだ。


「所でノワ様、私は兎も角、これから傭兵として活動していくにあたり不安は有りませんか?」

「へ?」

「シムのデータと先日の傭兵崩れの戦闘を分析した限りは、ノワ様の操艦技術はとても高いものと認識しております」

「あ、うん、まあそこそこ自信はあるかな」

「戦闘に関しては疑う余地の無いものだと思います、しかし港湾でのやり取りや物資の手配は私が担当しますが、賊の拠点の探し方や傭兵としてノウハウは不足していると言えましょう」

「あ」


 ピンと来た。シェフィは感情レベルの低いアンドロイドなのであまり表情は変わらないけど、それでも「ニヤリ」と言わんばかりの微笑を浮かべて言った。


「そこで提案が御座います、口は悪いものの経験と技術は申し分無い優秀なサブパイロットが丁度路頭に迷いかけていまして」

「へー、優秀で信頼出来るなら雇っちゃう?」

「はい、雇っちゃいましょう」

「全部聴こえてんだよアホ」

「いたっ」


 いつの間にか近くに居たキャプテンは、私が被る帽子をガボっと押さえつけ、シェフィの頭をペシっと軽く叩いた。

 聞こえちゃってたかー、まあ話は早い方がいいよね!


「まあ、なんだ、その、宜しく頼む」


 イヤそうな顔をしながらも背に腹はかえられないのか、キャプテンはハアと息を吐き出して切り替えると照れながら右手を差し出した、あれ、なんか可愛いぞこの人。


「宜しくキャプテン」

「宜しくお願い致しますキャプテン・ドレイク」


 キャプテンが一緒に居てくれるのは頼もしい、流石に借金のことがなくても即解散とはならなかったとは思うけど、少なくとも当分一緒に活動する事になったのでママの事や主星の事、これからの指針について相談出来るのは精神的にホッとする。

 私だってまさか成人した15歳の誕生日に即日ひとり立ちするなんて考えてもいなかったからね。


 ***


『はい、ゼクセリオン・コーポレーション、L2支社インフォメーションです、本日はどの様なご要件でしょうか』

「あの、私、サジタリウスコロニーの御社でアルバイトしていたのですが入館証の返却を、」

「ああ、返却ならそちらの外部端末の方へどうぞ」

「それで、開発部のエイメ・・・」


 ガガッ、ブツリ。


 ゼクセリオン支社でパスの返却と本社開発部でお世話になっていた主任研究スタッフにメッセージをお願いしようとしたけど、アルバイトと名乗った瞬間に声のトーン低くなってインターフォンが切られてしまった。


「アルバイトだと扱いはこんなもんだろ」

「はい、いいえ、ノワ様はゼクセリオン本社の開発機テストパイロットでした、成人前でしたのでアルバイト契約でしたが、それでもこの様な扱いは不適切かと」

「今の感じだと正式なインフォメーションじゃなくて、どっかの下っ端が出たんじゃないかい? アルバイト相手にしても、まあ態度は悪かったけどねえ」


 うーん、何も言えずに出てきちゃったから挨拶したかったけど、自分の情報端末からメッセージ送っておこう、これだと遠過ぎて1日遅れくらいのやり取りになっちゃうんだよね。

 コロニー数基隣りと言っても光速ドライブを使った距離だからリアルタイム通信は難しい、企業間やギルド間、軍関係の設備なら可能だから事情を話して貸して貰えたらなと思ったんだけど、本社の人は知っていてもこっちの支社では知り合いいないから無理だったか。


「二度と会えない訳じゃないんだ、時間は掛かるが個人端末で送っておけば良いだろ」

「はい、流石に戻るのはリスクが高い為、推奨致しません」

「うん」

「ほれ、チャカチャカ行くよ、まずグラビティウェイブ製のインナーとパイロットスーツだ」

「キャプテンのもね」

「良いのかい?」

「良いも何も同じ艦に乗るんだから、キャプテンだって着の身着のままでしょ? 流石にスーツ無しはダメでしょ」


 シェフィはアンドロイドだから問題無い、着ている給仕(メイド)服にしてもスペーススーツ素材の物で生身 (生身?)で宇宙空間活動には十分な性能を有している。

 艦の爆散に巻き込まれて焦げてはいたけど着替えているし、焦げた方もアークの再利用装置で修復されているからね。

 次に私だけど、半機械生命体(ハーフメカロイド)だから少し位なら宇宙空間に生身で放り出されても大丈夫なんだよね、そういう意味では全身生身の人間なキャプテンが1番パイロットスーツを必要としていると思う。


「まあ、貰えるものは貰っとくよ、一応あっちの残骸から使えそうな奴は送ってくれと手配したんだけど、スーツや衣服は全滅だったからねえ」

「使える奴?」

「ああ、と言ってもほぼ御破算、無事だったのは強化外骨格(パワードスーツ)と爆縮弾が2基だけだね」

「えっ、強化外骨格は分かるけど、爆縮弾積んでたの?」

「偶に使うんだよ、遭遇戦で暗黒生命体にとかね」

「ああ・・・」


 爆縮弾は所謂ブラックホール弾頭と呼ばれる破壊兵器、使い切りの弾頭でその威力は戦艦級のシールドも一撃で貫通、破壊する代物だ。

 暗黒生命体は通称暗黒(アンコ)と呼ばれる宇宙生命体で、単体でワームホールジャンプをして突然現れ、破壊の限りを尽くす生物だ。

 出現する際は兎に角大量の暗黒(アンコ)が現れる、宇宙を埋め尽くさんばかりの数でレーダーが真っ赤に染まる程だ、確かにアレとの遭遇戦となると爆縮弾や超重力砲(グラビティブラスト)のような広域破壊兵器があると心強い。


「あれ? 爆縮弾売れば結構高く売れたんじゃないの?」

「アレは買い手が中々付かないからねえ、酔狂な傭兵くらいしか」


 それ自分も酔狂って分かってるのかなキャプテン、確かに爆縮弾なんて高額だからね、他に必要とする所と言えば星系軍とかだけど、あっちは自前で持ってるから傭兵からなんて買い付けしない、うん確かに売れないね。

 そんな感じにキャプテンと雑談しながらマーケットで必需品を揃えた、2人分の装備と衣服になるけど航宙艦や武装から見れば大した事ない、私のアルバイト代だけで賄えた、しかし・・・


「だから、ノワくらいの娘にはこっちのクォークスペース社製のインナーが良いに決まってるんだよ」

「はい、いいえ、可愛くありませんので承認しかねます」

「インナーに可愛いもクソもあるか!」

「あります、私はこちらのホライゾンアトム製を推します」


 私が身に付けるインナー、下着、そして私服でシェフィとキャプテンが大揉めし始めた、キャプテンは実用性重視を謳った製品、シェフィは信頼性を保証しつつもデザインにも気を配った製品とどちらも引かない。

 因みにキャプテンは3分で選び終わった、安心と信頼の格安メーカーUNIKROW(ウニクロ)一択、シェフィも慣れているのかハイハイと適当な相槌で発注を掛けて終わらせた。

 流石にパイロットスーツは別のメーカー製でしっかりしたものを3着購入したけど、私も同じので構わな、ダメ? ア、ハイ・・・

ていうか、せめて声落としてくれないかな?

 さっきから目立ち過ぎて、2人が手に持ったインナーやら下着を見て、次に私を見て行く人が沢山居るんですけど!?








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