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ノワの方舟  作者: EVO
旅立ち
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005.皇族は銀髪蒼眼

 初の戦闘から光速ドライブを再開して目的のコロニーまで数時間、道中の安全は間違いない。

 星系軍のパトロールや資源採掘艦の護衛艦等、救援を発した場合、数分以内に駆け付ける戦力が点在する星域に入ったからだ。


「ノワ、仮眠でもしてきな」

「別に疲れてないけど?」

「いいから休め、命のやり取りってのはな意外と心を摩耗するもんなんだよ、覚えておきな!」

「う、うん、じゃあキャプテンお願い」


 キャプテンは金獅子級の傭兵だ、ベテランの銀獅子級、更にその上のキャプテンが言うのなら多分間違いないんだろう、大して疲労は感じていないけど私は素直に指示に従う事にしてサブシートにコントロールを預けて部屋に下がることにした。

 どうせ光速ドライブ中はオートだし、この先襲撃はないからね。


 アークの居住区画は2人部屋が2つ、1人部屋が1つと小型戦闘艦としてはかなり充実している。

 どの部屋で休もうかと居住区画まで来ると既に部屋にネームプレートが割り振られていて、私の名前は1番大きな2人部屋となっていた、多分先に搭乗していたシェフィが色々メークしてくれたんだろう。

 疲れていないつもりだったけど、シートから降りてコクピットから出ると身体がズシリ重い、キャプテンの言う通り精神的なものなのか疲れていたみたいだった。

 部屋には大きめのベッドが設置されていた、多分3人は川の字で眠れるサイズのベッドだ、あとはバスルームとクローゼット、ドリンクサーバー、・・・ああ、後で艦内設備も確認しないと、小型戦闘艦なら平均的に半年から1年は無補給で活動出来るように設計されている筈だ、ジムスペースと食堂、娯楽スペースももしかしたらあるかも知れない。

 艦のスペックも把握していないし、これからどうするかも考えないといけない、シェフィは私がオーナーに登録されているので一緒に居てくれるのだろう、キャプテンはどうだろうか、「依頼」の内容次第では今向かっている交易コロニーで終わりかもしれない、その辺りは後で相談してみようかな。

 取り敢えず休もうかとベッドにそのまま横になって私は目を閉じた・・・



 ***



 ・・・眠れない。


 疲労は感じているのに眠れる気が全くしない

 時計を見ても横になってから15分程、体感だと30分以上経っている程に時間が進まない。


『ノワ様、少し宜しいでしょうか』


 ノックと共に部屋に来たのはシェフィだった、どうせ眠れないのだから丁度いいと招き入れるとシェフィは所々焦げた給仕服を着替えていた。


「どうしたのシェフィ」

「眠れないかと思いまして、お手伝いに参りました」

「うん、なんか目が冴えてね、って、ん? お手伝い?」

「はい、ノワ様の現在の状態は実戦におけるある種の興奮状態と推察されます」

「なの、かな?」

「はい、そこで家政(ホーム)メイドロイドの私の出番です、薬を処方するのは簡単ですが健康的とは言えません、ですのでシましょう」

「ん? シましょうって、何を?」

「はい、ナニです」


 おかしい、疲れてるな私、シェフィが何を言っているのか全然分かんないや。


「ノワ様は所謂『昂っている』状態なので、こういった時の対処法は大きく分けて3つです。 ひとつは前述させて頂いた通り薬を処方する事、ふたつめはトレーニング等で身体を追込み疲労によって弛緩させる事、しかし既にお疲れのご様子、となれば昂りを鎮める一般的な方法セッ」

「言わせないよ!? 言わないで!」


 傭兵とか軍人が戦闘後に興奮状態になるのは知っている、航宙艦ライセンスの試問にも人の精神状態に関する項目があるからね。

 性的な発散が最も効率が良いとされているし、そういうお店の存在も分かる、なんなら帝国軍の戦艦級だと専用のアンドロイドが男女共に同道しているらしい。


「お任せ下さい、私の前身は元々セクサロイドです」

「あ、ちょっ」


 シェフィの行動は的確かつ迅速だった。ストンと給仕服を脱ぎ捨てベッドの縁に腰掛けていた私を押し倒した。

 下着は薄い生地で透けている、それ下着の役目は果たしているのかな、という代物だった。

 金の髪がサラリと落ちて私の頬を掠めてくすぐったい、赤い瞳が真っ直ぐ私を見下ろしていた。


「なるほど、興味45%、羞恥30%、困惑10%、その他・・・」

「いや、やめてね? は、恥ずかしいから」


 アンドロイドは空気も読める上に感情もかなりの精度で読んでしまう、そうでなければ感情のある人間種とは付き合えないからだ。

 正直シェフィの分析は当たってる、実際目が冴えているので昂っているのは間違いないし、3大欲求もあるし、興味だってある。

 だからって、はいヤリますか!なんてねえ?


 ・・・


 ・・・


 ・・・


「しゅごい、メイドロイド、しゅごい・・・」


 快眠でした、それはもうグッスリと気持ちよく眠れた、え? ナニをしたかって? それはナニですよ!言わせないでよね!

 チガウヨ? その、柔らかなものに包まれて人肌 (アンドロイドだけど)の温もりとかさ、抱擁感とか安心感とか総合的にね?

 いや、そこそこの心地良い疲労感も手伝ったけどさ。

 艦におけるキャプテンの役割って大きいからね、適切な休養をとって心身の健康を維持するのも大切だよね!

 その後シェフィと一緒にバスルームへ行き「お世話」されて、汗を流してから私達はコックピットへ戻った。

 誤解しないで欲しいけど私は断ったんだよ、1人で入るって、でもアンドロイドにとってご主人様のお世話は生き甲斐、約15年振りで私のお世話がしたくて堪らないシェフィに押されて、仕方なくお世話された。

 感情レベルが低いタイプのアンドロイドなのに、シュンと悲しそうにするの卑怯だよね、断れないよ・・・

 因みにコロニーに一緒に残らなかったのは、ママと私、そしてシェフィが3人揃っている事で捜索の足掛かりになりえる可能性を排除する為で、泣く泣くキャプテンと艦乗(ふなの)りをする事にしたらしい。


 ***


「ノワ、アンタが狙われる理由話してなかったな、そもそもだ、当時にしても今現在にしても男爵家程度の娘の子が生命を脅かされるなんておかしかないか?」


 コクピットに戻った私を見てキャプテンは開口一番そう言った、確かにママが主星の貴族だとは聞いた、爵位は男爵で貴族の中でも数多く地位の低い家の子供をこんな大事件を起こしてまで狙うなんて何故だろう。


「エル・アトランディア帝国はアトランディア皇帝が治めているよな」

「うん」


 話が突然飛んで困惑する、主星、A星系の中心エル・アトランディア星、アトランディアはそのまま皇家の家名だ。

 外宇宙には思想の違う敵対国セルメイ連合国や小国家はあるものの、大国家と言われるアトランディア帝国はそれなりに上手く統治されていると思う。


「アトランディア皇帝、皇家の特徴は知ってるかい?」

「特徴? 白銀の髪と深い色味の蒼き瞳、あと美形が多い?」


 ギャラクシーTVでもそれなりに取り上げられているので、皇帝陛下や皇妃陛下、皇子殿下など、皇家の姿は一般的に知られている。

 容姿を変えるナノマシン技術や光の屈折を利用して別の容姿に見せ掛けるレイミラージュ、玩具でもあるけれど一時的に銀髪と蒼眼にしての皇帝ごっこはコロニー民の定番の遊びだ。

 レーザーサーベルを持ってバッタバッタと悪人を斬り捨てる『ギャラクシーエンペラー』とか最高だよね。


「アンタ、落胤だから」

「は?」

「皇家の血引いてるから」

「は?」


 キャプテンが訳分からない事を言ってる、ちょっと意味わかんないですね。


「ノワールは皇家の落胤って奴だ、平たく言えば皇女様って事だな」

「ハハハ、ナイスジョーク、つまんないよキャプテン」

「嘘じゃねえよ」

「いやいやいや、キャプテンよく見てよ、私の髪の毛は黒! 瞳の色もどこにでも居るようなブラウンだよ?」


 The 一般人! それが私ノワール。

 そりゃあウチにフルスペックの航宙艦シムがあったり? 戦闘用航宙艦持ってたりするのは少しだけ一般的にとは言えないけどね? 大金持ちとかなら有り得ない話じゃないもん。

 なんなら昔、ギャラクシー宝くじが当たったから航宙艦買いました!なんて話も全然ある。


「シェフィ、見せてやりな」

「はい、ノワ様、こちらを」


 シェフィがオペレーターシートでパネルを操作すると、正面のメインモニターに銀髪の少女が映し出された。

 輝く白銀の髪、深い蒼眼、正に皇族と言わんばかりの特徴を持った容姿の少女だ、歳の頃は15位で私にそっくりな顔立ちをしている。

 銀髪少女はとても見覚えのあるキャプテンシートに座っていた、私が徐ろに脚を組むとモニターの中の銀髪少女も脚を組んだ。


「・・・」


 知ってる、これ映像トリックって奴だよね、巨大なコロニーをワンツースリーで消しちゃうやつだ、テレビで見た事ある。


「コンニチワー」


 ヒラヒラと左手を振るとモニターの銀髪少女も同様に手を振る、手を降ろす、銀髪少女も手を降ろす。


「・・・」


固まる私、いやいや? いやいやいや?

ン? んー、うん! 疲れてるね、寝よう。

 そう考えた立ち上がりかけた私の肩に大きな手が置かれた、キャプテンの手だ。

 なんならモニターの銀髪少女の肩でもあるし、銀髪少女の隣りにキャプテンも映っている。

 反対側にはシェフィがヌルリと音もなく位置取って私の銀髪を撫でた、モニターの銀髪ゥゥゥッ!?


「ウソぉぉぉーーーっ!!?」


 私は自分の髪の毛を手に取った、サラサラと指の上を滑る見慣れた黒髪は見事な銀髪へと変貌していた。

 内部カメラによってメインモニタに映し出された映像を手元にも表示させる、ブラウンの瞳も正に皇族といった蒼眼になっている。


「な、なんで? あれ?今日、家からゼクセリオン・コーポレーションの時は何も無かった筈」


 流石にアルバイト先でこんなのになってたら誰かがツッコミを入れていただろう。


「ノワ様、容姿に関しては元々ナノマシンで変えておりました、解除条件はアークのパイロットシートに着座する事です」

「マリーが15の誕生日にアクセスキーをノワに渡したって事は、その時に全部説明するつもりだったんだろうな」

「長期間に渡って容姿を変更していた場合、元に戻るのに多少時間を必要としますので、数時間掛けて戻ったという事でしょうね」


 両脇から聴こえる2人の会話に加わる余裕は全くない、貴族の血筋ならまだ理解出来たのに、皇族? は? あまりのスケールの大きさに私は頭を抱え込んだ。

一般人じゃなくて逸般人じゃん・・・






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