暗黒生命体討伐戦線3
「忙しくなりますね、私は第3の私思とのリンク作業に行って参りますノワ様」
「あ、うん、行ってらっしゃい」
「アタシも艦の立ち会いに行こうかね、どうせ小型艦ドックは空いてるんだろう?」
「宜しく頼む、この依頼は正式に傭兵ギルドを通すので」
「アイアイ、そこら辺は信用しておくよ、それより武装と仕様をだな」
「い、今から仕様変更しろと!?」
「はははは! 吊しの艦で戦闘しろと? 面白い事言うなえワタリの旦那、・・・やるんだよ、いいね?」
「・・・了承した」
ああ・・・、比較的余裕のある小型艦ドックも地獄に様変わりだね、中型艦ドックの方に応援に行った人員呼び戻せ!とか、帰るな今やってる作業終わってからだ!とか怒鳴り合いの光景が目に浮かぶよ。
「あの私はどうしましょうか」
「うーん、自由時間継続?」
「良いのでしょうか、ドレイクさんとシェフィさんが忙しいのに」
「でも私達に手伝える事もほぼ無いから、ゆっくり過ごして寝よう、うん!」
「は、はい」
「お姉様、直前までアークに居てはダメですか?」
「こらミュウ!遊びじゃないんだ、ノワさんだって戦闘前で・・・」
「うん良いよ、一緒にホロムービー観よっか」
「ノワさん!? 良いんですか?」
「1人でピリピリしても仕方ないので良いですよ、あ、ニーナさんも一緒にホロムービー観ます?」
「あ、はい、御一緒します」
ワタリさんは常務とお父さんの口調が入れ替わる程に混乱していた、まだ仕事があるのでミュウちゃんの事で恐縮しながらも御礼を言って帰って行く、御迎えはサトゥーさんが迎えに来る事で解決した。
私とニーナさん、ミュウちゃんでホロムービー上映会の開催だ、ワームホールドライブの時に買い貯めたムービーが大量にあるので適当な時間まで観て過ごす、その後は食事を摂って眠る、時間が合わなかったら治療ポッドに入って体内時計を合わせれば良いからね、今から20時間以上も気を揉むより、ミュウちゃんと一緒にリラックスした方が余程良い時間の過ごした方になるよ。
***
「———で、ジェネレーターが」
「姐御ぉ、勘弁して下さいよ」
「全部ゼクセリオン製品で指定しているんだ、他所様なんて継ぎ接ぎ要求なんだからそれに比べたら楽なもんだろう?」
「いやしかしだなぁ」
「グダグダしてないで体動かした方が建設的じゃないのかい?」
「わあったよ!負けだ負けだ、その代わりダンナの方には一言頼むぜ姐御!」
「アイアイ!任せたよ兄弟!」
アタシが求める仕様を小型戦闘艦ドックのメカニックに伝えると弱音を吐いた、だけどハイソウデスカとはいかない、腕に自信はあるが5000兆を超える暗黒生命体を相手取るのはアタシでさえ初めての経験になるからね、艦の戦闘力を高める事に妥協はしない、誰だって死にたくないからねぇ、なにどうせケツ持ちは帝国軍なんだ商売人ならイロを乗せて請求するに決まってるからね、アタシの小型戦闘艦一隻なんて鼻紙にもなりゃしないよ。
使える伝手は使うのが心情だ、ワタリの旦那に一言「メカニックが頑張ってくれた」と言えば意図は察してくれるだろう。
さてアタシの方の用向きは終わった、艦の武装から基本設定、その他仕様はキッチリ主任メカニックに伝えた、情報端末で確認を行うとシェフィの方は未だ終わってないみたいでついでに覗いて行く事にした。
「どうですかシェフィ」
「「はい、いいえ、誤差0.02程残ります、修正を求めます」」
「いやこれ以上は無理だって、勘弁してよぉ」
「はい、いいえ、技術者としてそれで良いのですか? 嗚呼なんて非道な、この誤差が生死を分けるとは、ノワ様とキャプテン、ニーナ様と共に宇宙の藻屑と変わり果て・・・」
「あーあー!わぁかったよ!やればいいんでしょ、やれば!」
「なんか見た様な光景が繰り広げられてるねぇ」
「「おやキャプテン、其方は終わりましたか」」
「だあー、ウザったいからリンクを切って話せ」
「「失礼」」
案内された部屋に行くとシェフィが誤差がどうたら違和感がどうたらと、担当者に細々と要求を突き付けていた。
同期したもう1人のシェフィ、第3の私思の端末が同時に喋ったので声がダブって聴こえた。
***
『ノワ様、ニーナ様、ミュウ様、ただいま戻りました』
「あ、シェフィおかえり、もう終わったの?」
『はい』
「「「!?」」」
私の部屋で軽食を摂りつつニーナさん、ミュウちゃんと3人でホロムービーを観ていると部屋の入り口の方からシェフィの声が聴こえた。
返事をしながら見るとそこには球体状の端末機械が浮かんでいた、私を含めて3人とも驚いたようで同じソファーで寄り添ってムービーを観ていたミュウちゃんもビクッとした動きが伝わってきた。
『どうされました?』
「・・・あ、第3の私思か、そういう型にしたんだね、てっきりオーソドックスな人型にするかと思っていたからビックリしたよ」
『性能を追求すると、人として機能を持たせたものよりコチラの方が都合が良かったので、気になるのであれば今から換えて貰いますが、未だ本体はゼクセリオン・コーポレーションに居りますので』
「ああ、ううん、良いよ、私の思い込みってだけだから、それにシェフィは1人だもん」
『はい、ノワ様のご心情を勘案した所、私は1人が宜しいと判断致しました、なので第3の私思も球体状の方がよりオプションらしく抵抗が無いかと』
ふよふよと浮いている球体のソレからは確かにシェフィの存在を感じるものの、どこか機械的な音声になっていて差別化を行っている様だった。
私は育てのママもシェフィもオンリーワンと認識しているから、その辺りをシェフィは考慮してくれたのだろう。
『重力制御も問題無し、支援機能起動』
ふわふわしていたシェフィ(球)は突然ピタリと空間に固定されると、端末からコネクタ1本と支援腕が2本展開された。
『悪くありませんね』
「うーん、でもなんか味気無いと言うか、生身のシェフィの方が私は好きだな」
「あ、分かります、私もシェフィ姉様はあちらの方が」
「そうですね、情緒と言いますか、当たりの柔らかさみたいな受ける印象が全然違います、私もいつものシェフィさんを推しますね」
『・・・・・・・・・なるほど、ふふ、試運転はこれくらいにして早々に帰ることにします、では後程』
キュイッ、キュイイとカメラレンズが動く音を残し、ピコピコと通信している証の緑ランプが点滅、シェフィ(球)はどこか嬉しそうな声色でフワフワと・・・
シュンッ!!!
「「「!?」」」
火の玉ストレートの様にアークを飛び出して行った、一瞬だけ見えたけどあの大きさでシールドも展開出来るんだ、性能を追求した結果アレになったと言うのは本当らしい。
下手をするとレーザー銃あたりの何かしらの武装も内蔵されていそうだ、直径20cmも無さそうな躯体なのに下手をすると私より強いかもしれない、シェフィが帰って来たらスペックを確認しておこう。
目測で初速100km/h以上の加速をした様に見えたから、本当にしっかり確認しておいた方が良い。
推進剤とかも確認出来なかったので単純に重力慣性制御だけの挙動っぽいんだけど、まさか軍用スペックとかじゃないよね、費用は帝国軍が全額持つらしいから心配してはいないけど、軍用スペックになると艦も装備も何もかも価格が跳ね上がるからなぁ。




