015.禁酒です
「キャプテンを、禁酒です」
「なんでだよ!?」
「あのような賭け、上手くいったから良いものの拘束されていたらどうするおつもりで? まさか軍とやり合うとでも?」
「上手くいったから良いじゃないか、結果オーライ、な!?」
「ノワ様、キャプテン・ドレイクはノワ様の身をチップに賭け事を致しました、同乗するクルーとしてこれは見逃せません」
「あ、えーっと、うん、禁酒1週間でよろしく?」
「げっ!」
アークに戻った途端シェフィがズモモモと謎の迫力を醸しながらキャプテンに詰め寄った、確かに言われてみると結果が良かっただけで上手くいかなかったら危なかったね。
シェフィはキャプテンがパチってきたワインを取り上げて保存庫へと持っていった。
「いや一応な? 勝機は十分にあったんだよ、なーノワー禁酒は止めてくれよー」
「シェフィを説得出来たら良いよ、キャプテンだって分かってるでしょ? シェフィが怒っているのは他の2人、ううん、私本人にさえ相談をしなかった事に対して怒ってるって」
「う、それはすまないと思ってる」
「私は別に怒ってないから、シェフィに言ってね、怖くて思わず頷いちゃったから」
「アイ、マム・・・」
その後、キャプテンの禁酒は3日に短縮された、「ウバー」と謎の叫び声を挙げてキャプテンはダレていたけど3日くらい我慢した方がいいと思う、キャプテンは飲み過ぎだよ。
***
会食から数日、最終的なリザルトは2億8700万マニとなった、暗黒生命体の戦闘貢献度は1億5000万、撃破報酬と売却報酬が1億3700万マニで大儲けになった、凄いよね1日で3億近くって、情報端末を何回も確認しちゃったよ。
慰労会で本物の料理店の食事代、艦のメンテナンスと弾薬補充で数百万、キャプテンの報酬が10%の2870万で差し引き合計が3億7330万マニがアークの資金となる。
ワグナス少佐からは情報の受け渡しの了承の返事が来たけど、くれぐれも、くれぐれも爆散する様な真似はしない様に御身の安全を第一にお願い致します、とのお願いが長々とメッセージとして届いた。
うん、私もキャプテンもシェフィもそうだけど死ぬ気は無いからね、本来なら傭兵を辞めてコロニーで大人しくしててくれと言いたいんだろうなぁとも思うけど、ワグナス少佐とニーナ中尉は飲み込んでくれたようだ、無茶を言って困らせてしまってごめんね?
さて、少佐から届いた情報は会食の時に話した通り、そこまで込み入った情報ではなかった、キャプテンが言う通りこちらから薮をつついて指先に食いつかれたら目も当てられないからね。
マリアスティーネ・アニマトロン男爵令嬢、ママは健在で主星から幾つか離れた星系の惑星で暮らしているらしい、ママのお父さん、私から見て祖父母に当たるアニマトロン男爵夫妻も事件当時、主星から同惑星に移住している。
「多分、主星では落ち着かないから皇家と交渉して住まいを用意させたんだろうね、未婚の母なんて社交界では醜聞もいいとこ、他の2人の令嬢も同じだろう」
「悪いのはクソ・・・」
「ノワ様」
「・・・糞便が如き御方第三皇子なのに」
「高貴な猿と叩き易い目下の人間、分かりやすいもんさね」
キャプテンも元機動騎士、貴族の世界に関係していたからこそ思う所もあるのだろう、苦い顔で吐き捨てた。
産みのママ達が居住しているのはD星系で主星のあるA星系まで行かなくても会える事が分かったのは朗報だった、A星系は貴族か軍属、それなりに伝手がないとセキュリティが厳しいので申請を出した瞬間に皇家に捕捉される可能性がある、伝手があれば簡単に通れるんだけどね。
現在地はM星系なので、ワームホールドライブの為にゲートを使用しての移動を考えている、予算は3億7330万マニ有るけど全部使えない、2億使って約10の星系を飛ばせるかな?
MからだとC星系まで、D星系も十分射程に入るね。
「ノワ、緊急時の予算として途中で数億稼がないとダメだよ」
「え、なんで?」
「捕捉されて逃げ出す場合、ゲート封鎖前ならゲートを使用するだろう? 飛ぶなら遠く迄になる、外宇宙までとは言わないが追手を撒くなら多数のゲートと惑星コロニーを経由するからね、途中で傭兵狩りをする余裕が有れば良いが万が一を考えて移動した先の時点で10億はあった方が良いよ」
「な、なるほど、そうだね、じゃあFかG星系辺りに寄ってからかな?」
D星系が目的になるなら、ひとつ手前のE星系で派手に稼ぐと目立っちゃうから、ふたつみっつ手前の星系をチョイス、キャプテンもシェフィも頷いたので遠めのG星系に決めた。
大規模作戦でM星系、特にL2コロニー近辺は賊が殆ど居なくなったし、暗黒生命体も1度現れた宙域周辺には数ヶ月現れないという統計があるので、稼ぐなら先へ移動した方が良い。
「シェフィ、物資の再確認とゲートの使用申請を」
「はい、かしこまりました」
私は傭兵ギルドとワグナス少佐にコロニーを発つ連絡をしておこう、傭兵ギルドは放任主義みたいなもので呼び出しがない限りは必要ないと思うんだけど一応、ワグナス少佐には流石に行き先を教えないで立ち去ると大変な事になりそうだからね、情報のパイプも維持しておきたいし、ここはアークのキャプテンである私からしっかり連絡しておいた方が良い。
「アーク、セルフチェックプログラム問題無し、何時でも旅立てるよ」
「お待ちを、ゲートの使用許可が降りましたが、買い忘れていた物が幾つか有りました、1日貰っても?」
「買い忘れ? 良いよ、先を急ぐ旅じゃないしね」
「なんだいシェフィにしては珍しいねえ、じゃあ1日のオフって事にして明日出発にしようか」
「了解!」
「はい、お願い致します」
ピッピッピッと大雑把な発艦予定時刻をメインモニタに表示させてスタイバイモードにすると、キャプテンがいの一番にコクピットを出て行った。
「部屋で娯楽ホロとかカタログ保存しておくわ、ノワもゲームでもホロでも情報端末に入れておきな」
「あ、そうだね、じゃあ私も部屋に戻ろうかな、シェフィはどうする?」
「私は買い付けに行って参ります」
「そう? じゃあ解散!」
「アイアイ」
「はい」
ワームホールドライブ中はほぼ完全に通信が遮断されるんだよね、同期ドライブをしている近くの僚機とか位しか役に立たなくなる。
数日から数ヶ月の移動時間を強いられる事になるから時間を潰す為の娯楽は欠かせないね、ジムスペースで運動、食事、睡眠しかやることが無くなるし、ワームホールドライブ中はフルオートなのでコクピットに詰めている必要も無い。
私はシェフィを見送るとキャプテンの勧め通りに自室のソファーに座って娯楽を物色し始めた。
映像ホロ系は先に落としておけば何時でも鑑賞出来るからガンガン落として行こう、お金は有るんだし100や200落としても構わないだろう、消化しきれなくてもその内観る機会があるしね。
アクションやアドベンチャー系の娯楽活劇、シリーズ1だけでも数百時間、全シリーズだと数千時間にもなる惑星系独占の自然ドキュメンタリーのジオウグラフィックやネイチャーギャラクシーも外せない、ゲームは既に積みゲーが大量にあるから良いとして、航宙艦やパーツカタログも手に入る分は全部入れておこうかな、ホロで艦を表示してカスタマイズするのもいいし、パーツを眺めるだけでも楽しいからね。
「ただいま戻りました」
私はシェフィが艦に戻るまで熱中していたようで、いつの間にか2時間程経っていた、落とした娯楽は全部で10万マニ以上、昔の私なら絶対にやらない決済を気軽にポチリとした。
金銭感覚麻痺して来てるかな、10万マニって航宙艦の運用費に比べると大したことないから気を付けないといけないかも・・・
「ノワ様」
「ん、何?」
「こちらの決済確認をお願い致します」
「はいはい、100万マニ?」
部屋に来たシェフィから端末を渡されて確認すると、シェフィにしては大きな額の決済がワンタッチする画面で止まっていた。
リストは・・・、ちょっと品名からは用途が分からない、『極楽棒』『ペロペローション』『クイーンサイズ有機生分解ベッド』
「この極楽棒ってなに、・・・ベッド、ベッドッ!?」
「はい、こちらの有機生分解ベッドはとても優れものです、ありとあらゆる汚れがボタン1つであら不思議、フカフカのピカピカな最高状態を維持してくれるのです!」
「へえー、それは便利かも、でもお高いんでしょう?」
「それが今なら専用シーツ3枚付きで49万8000マニ!49万8000マニで御座います!」
「安っー・・・いのかな? ベッドとしては高額だけど機能を考えると」
24時間中8時間の睡眠と仮定して、1日の3分の1はベッドの上と考えるとお金を掛けてもまあ構わないか、どうせならキャプテンが使っている部屋も空いている残りの2人部屋にも入れちゃおう、私は総額180万マニ位になった決済をポチっとしてシェフィに端末を返した。
元の決済の内、50万マニの内容を知って驚く事になるのはワームホールドライブに入ってからの事である・・・




