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4話 ちょっと寄り道

 放課後、友達と話しながら教室を出る。


 部活へ赴く友達を見送ってから、昇降口で彩愛先輩と合流して学校を後にする。



「歌恋、帰りにコンビニ寄るわよ」



「いいですよ。なにを買うんですか?」



「具体的には決めてないけど、お菓子でも買おうかなって」



「春ですから、桜の花びらを使った新商品が出てそうですね。昨年食べた桜のムースケーキ、すっごくおいしかったです」



 校門を出て歩道を進みながら、記憶に残る極上の一品に思いを馳せる。


 もし過去に戻れるなら、あのムースケーキをもう一度食べたい。



「あー、あの激甘スイーツね……。あれも普通なら太る要因になるのに、あんたは全部胸に行ったわよね」



「できれば胸にも来てほしくなかったです。摂取したカロリー分は運動してるんですけど、なぜか胸だけ痩せないんですよ」



「ははっ、ぶち●すわよ?」



「なんでですか!?」



 乾いた笑いと共に物騒極まりない言葉を吐かれ、思わず身構えてしまう。


 もちろん冗談だとは思うけど、気のせいだと片付けるには強すぎる敵意を感じた。



「うっさい。あーあ、無神経なおっぱいオバケのせいであたしの心がズタズタに引き裂かれちゃったわ。脳に回すはずの栄養すら胸に吸われちゃってるんじゃないかしら」



 無神経なのはどっちだと、声を大にして言ってやりたい。


 とはいえ、コンビニはもう目と鼻の先。間違っても店内で騒ぐわけにはいかないから、不毛な言い争いは避けなければ。


***



「ありがとうございましたー」



 店員さんのあいさつを背に受けながら、コンビニを後にする。


 私は桜のマカロンとイチゴミルク、彩愛先輩はハバネロのスナック菓子と辛口のジンジャーエールを購入した。



「今日はどっちにする?」



「それじゃあ、私の部屋で」



「おっけー」



 家の近くでそんなやり取りを交わし、二人並んで犬山家に足を踏み入れる。



「なんで同時に入ってくるんですか! 一歩遅れて入ってくださいよ!」



「別にいいじゃない! あんたって胸は無駄にデカいくせに器はとことん小さいわね!」



「胸は関係ないです! だいたい、彩愛先輩こそ――」



 玄関先で勃発した口論は、ジュースがぬるくなったことに気付くまで続いた。


 その後、私の部屋で夕食前のおやつタイム。



「彩愛先輩、一口食べますか?」



「ありがと。あたしのも食べていいわよ」



「ありがとうございます」



 大の甘党である私と大の辛党である彩愛先輩は、味の好みが真逆と言ってもいい。


 ただし、それしか食べられないというわけではない。


 例えば私はカレーが好きだし、彩愛先輩も夏場になると毎日のようにアイスを食べる。


 せっかくだから、おいしい物は分け合いたい。私たちは迷うことなく、お互いに勧められた物を口に運んだ。



(あんま)っ!」



(かっっら)っ!」



 甘さを紛らわせるために辛口のジンジャーエールをあおる彩愛先輩と、辛さを和らげるためにイチゴミルクを一気飲みする私。


 やっぱり私たちは、どこまでも相容れないようだ。

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