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36話 とんでもない光景を目撃してしまった

 帰宅して手を洗った後、ふと体操服を学校に忘れてしまったことに気付く。


 大した距離ではないものの、面倒臭くないと言えば嘘になる。


 ただし、一緒に行く相手がいれば話は別だ。


 若干の罪悪感を覚えつつも、私はスマホを取り出して彩愛先輩に電話をかけた。


***


 数分後。私と彩愛先輩は制服姿のまま、先ほど通ったばかりの道を学校に向かって歩いている。



「あーあ、せっかくゴロゴロしようと思ってたのに」



「うっ……すみません」



「冗談に決まってるじゃない。忘れ物を取りに行くぐらい、喜んでついて行ってあげるわ」



「あ、ありがとうございます。珍しく優しいことを言ってくれるんですね」



「珍しくは余計よ」



 彩愛先輩と談笑しながら通学路を進み、しばらくして学校に到着する。


 靴を履き替えて教室に移動し、目的の物を確保して廊下に出た。



「せっかくだから、屋上に行ってみたいわね」



「いいですよ、行きましょう」



 春休み中にフェンスの取り付けや破損個所の補修、ベンチの設置などを行い、今年度からは屋上が解放されている。


 それまでは立ち入り禁止だったので、一年先に入学していた彩愛先輩が興味を持つのも無理はない。


 放課後になって一時間ほど経過しているため、廊下で誰かとすれ違うこともなく屋上に着いた。


 扉も新調されているらしく、開閉の際に物音一つ立たない。


 そよ風に吹かれながらベンチでお弁当を食べるのも気持ちよさそうだと思いながら足を進めた、その瞬間――



「んっ、あっ、あんっ、気持ちいいっ、そこっ、いいよぉっ、んんっ」



「んぁっ、あんまり大きな声出すと、んっ、誰かに気付かれちゃう、よっ」



「こんな、あっ、時間に、誰も来ないって。んっ、そろそろ」



「あたしも、もう、んはっ、ヤバいかもっ」



 物陰で全裸のカップルが致している現場を目撃し、驚愕のあまり心臓がドクンッと跳ねる。


 幸いにも本人たちは行為に夢中で、いまなら気付かれずに引き返すことが可能だ。


 私と彩愛先輩は無言で視線を交わし、足音を殺して屋上を去る。


 さっきはそれほど重要視していなかったけど、扉が新調されていたことに深く深く感謝する。おかげで物音を立てずに済んだのだから。


***


 あの後、私たちは早々に学校を後にした。



「あの二人、確か二年生ね。クラスは違うけど、選択授業で一緒だった気がするわ」



「私たちも、いつか誰かに見られちゃうかもしれませんね」



「いや、それはないんじゃないかしら」



「どういうことですか? もしかして、学校の中にとっておきの場所が?」



「違うわよ。あたしたちの場合は家が隣同士で周囲に民家がないんだから、親が留守な方の家に集まればいいだけじゃない」



「なるほど」



 納得し、うんうんとうなずく。


 付き合ってもらったお礼にコンビニで少し値の張るアイスを奢り、家に着いてから私の部屋で一緒に食べる。



「たまにはアイスもいいわよね。ん~、おいしいっ」



「喜んでもらえてよかったです」



 体操服をきちんと持って帰っていたら、こうして仲睦まじくアイスを食べることにはならなかった。


 そう考えると、忘れ物をしてよかったのかもしれない。


 なんて、口に出したらさすがに怒られるだろうか。


***


 俗に言う貝合わせと呼ばれる行為を目の当たりにした私は、その夜、件のカップルを自分と彩愛先輩に置き換えた夢を見た。

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