31話 ケンカの回数を減らすには
包み隠さず本音でぶつかり合い、時には拳で語らう。
女子高生同士のスキンシップとしては過激だけど、いい意味で遠慮のいらない関係であることは、紛れもない事実だ。
とはいえ、付き合い始めたばかりのカップルが日々ケンカを繰り広げるというのは、好ましい状況とは言えない。
どうせなら、誰かに見られた際に恥ずかしくて逃げ出したくなるほどの甘いイチャイチャを体験してみたい。
彩愛先輩のイタズラが発端で起きた殴り合いのケンカを終えて満身創痍でベッドに横たわりながら、私はふとそんな考えを巡らせていた。
「彩愛先輩、生きてますか?」
私はゴロンと寝返りを打って、ベッドの横に座り込む彩愛先輩に声をかける。
すると彩愛先輩はお腹を押さえながらゆっくりと立ち上がり、ベッドに腰かけつつ視線を私に向けた。
「みぞおちへの右アッパー、過去最高に効いたわ」
「彩愛先輩こそ、脇腹への中段回し蹴り……あれは世界に通用しますよ」
私たちは決定打となった最後の一撃を賞賛し合い、ふっ、と不敵な笑みを浮かべた。
本当に求めているのは、断じてこんな――互いの実力を認めるライバル同士っぽいやり取りではない。
「せっかく付き合ってるんですから、ケンカじゃなくてイチャイチャしたいですね」
「あたしも心底そう思うわ」
二人の意見が一致し、私たちは互いに手を差し伸べ、固い握手を交わした。
向き合う姿勢で改めて座り直し、ケンカの頻度を少なくするためになにが必要かを話し合う。
「やっぱり、すぐに手を出さないことが重要ですよね」
「そうね。あと、売り言葉に買い言葉で挑発的な態度を取るのもよくないわ」
身に覚えのある問題点を挙げていくうちに、自分たちがどれほど短気だったのかを思い知らされる。
「ケンカが始まりそうになったら、一旦怒りを堪えて、とりあえず抱きしめるっていうのはどうですか?」
「なかなかの名案ね。抱きしめるのが難しい場合もあるだろうから、その時は手を握ったり、どうしても手が出そうになったら……き、キスする、とか、どうかしら」
「い、いいですね、それなら、ケンカにならずに済みそうです」
話し合いはいい方向に進み、当面の方針がまとまった。
上手くいくとは限らないけど、その時はまたこうして意見を出し合えばいい。
「たまに意見がぶつかることもあると思いますけど、仲よくしていきましょうね」
「ええ、もちろん。犬猿の仲はもう終わりにして、最高のカップルを目指すわよ」
本音で語り合える関係を保ちつつ、ケンカではなくイチャイチャする。
強い意志を示すように、私と彩愛先輩は熱い抱擁を交わした。




