30話 キスの余韻に浸りながら
彩愛先輩と数年ぶりの――恋仲となってからは初となるキスを終え、私たちはゆっくりと唇を離す。
まぶたを開くと引き合うかのように目が合ってしまい、恥ずかしくなって上体の向きを正面に戻した。
ベッドに並んで腰かけたまま、一言も発さずに視線を泳がせ、時折ふと隣をチラ見する。
唇にはまだ確かに、温かく柔らかな感触がハッキリと残っている。
お互いに照れ臭くて相手を直視できないものの、私たちはどちらからともなく手を重ね、気持ちを込めてギュッと握った。
***
夕陽がすっかり沈んで両親が帰宅する頃には、会話できる程度の余裕を取り戻せた。
ずっと座ったままだったので、立ち上がって軽くストレッチをする。
「……キスって、気持ちいいんですね」
先ほどの感覚を思い出しながら、素直な感想を漏らす。
「そ、そうね。あんたがしたいなら、またキスしてもいいわよ」
偉そうな物言いだけど、疑いの余地なく照れ隠しだ。
それとなく彩愛先輩の顔を覗き見ると、まだ頬がほんのりと赤い。
「彩愛先輩が嫌なら、無理しなくてもいいんですよ?」
我ながらイジワルなことを言ってしまった。
悪いとは思うけど、ケンカばかりの毎日を送るうちに、彩愛先輩に対して挑発的な態度を取るのが癖になっている。
「嫌じゃないわよ。また、したいわ」
「私もです」
恥ずかしくてひねくれたことを言ってしまいそうになるのを堪え、私たちは本心を伝え合った。
まだ照れ臭くて彩愛先輩を直視できないような状態だけど、すでに次のキスが待ち遠しい。




