17話 草むしりで汗だくに②
開始から一時間も経たないうちに、猿川家の庭から雑草が文字通り根絶された。
私たちは縁側に座ってスポーツドリンクを飲み、タオルで額の汗を拭う。
シャツは汗で水浸しになり、下着のラインが浮き出てしまっている。
隣を見ると、彩愛先輩も肌にシャツが張り付き、肌色が透けて――って、あれ?
「彩愛先輩、ブラは?」
「蒸れて気持ち悪くなるから、今日は着けてないわよ」
信じられないことを、さも当然のように言い放った。
「いやいやいやいや、なに考えてるんですか!? 思いっきり透けてますよ! その、えっと、先端部分が!」
「なに慌ててんのよ。あたしの胸ぐらい、いままで腐るほど見てるじゃない」
「だからって無防備すぎます! 他の人に見られたらどうするんですか!?」
「見られるわけないじゃない。この立地だから他人は通りがからないし、どっちの親も仕事で不在なんだから」
「そういう問題じゃないです! いますぐ着けてください!」
「えぇー……。うーん……胸の谷間とか蒸れそうじゃない?」
「考え込んでまで言い訳しないでください! そもそも彩愛先輩の胸に谷間なんてないじゃないですか!」
「くっ、この……っ! あんたはいま、あたしの逆鱗に触れたわよ! 覚悟しなさい!」
彩愛先輩は空になったペットボトルをグシャッと握り潰し、私を縁側に押し倒した。
脚を投げ出した状態で腰に跨られ、逃げようにも上手く身動きが取れない。
怪しげな笑みを浮かべた彩愛先輩が、両手の指をタコのようにくねらせる。
「失言を詫びるまで揉みまくってやるわ! うりゃうりゃうりゃ!」
彩愛先輩は両手を勢いよく突き出し、パン生地でもこねるかのように私の胸を弄び始めた。
「ちょっ、や、やめてください!」
いつものこととはいえ、同じような行為で恥ずかしい声を出してしまった先日の出来事がフラッシュバックする。
反撃するべく、こちらも彩愛先輩の胸に手を伸ばす。
むにゅっ。汗がたっぷり染み込んで肌に貼り付いたシャツの向こうに、確かな柔らかさを感じた。
「彩愛先輩、まな板なのに柔らかいんですね……」
「まな板は余計よ!」
彩愛先輩は憤りながらも私の胸を揉み続け、私も負けまいと手を動かす。
両者ともなにかを堪えるように歯を食いしばり、ふとした拍子にハッとなる。
「周りに誰もいないとはいえ、いまのあたしたち、傍目から見たらかなりヤバいわよね」
「そ、そうですね、なんというか……いろんな意味で誤解を招きそうです」
縁側で二人きり。汗だくになってお互いの胸を揉み合う。
草むしりをした後の些細なケンカだと素直に説明したところで、どれぐらいの人が信じてくれるだろうか。
私たちはアイコンタクトを交わし、何事もなかったかのように座り直した。
「さてと、一休みしたら次はあんたのところね」
「その前にブラだけは着けてくださいね」
「はいはい、分かったわよ」
ちょっとしたアクシデントはあったけど、当初の予定より早めに片付いた。
我が家の庭も雑草の生え具合はここと大差ないので、昼過ぎには終わるはず。
あとひと踏ん張り、彩愛先輩と共に頑張ろう。




