終末の世界
海岸での戦い、それは激化の一途をたどっていた。
レヴィアタンはその体が大きく割けて動かなくなってしまいミルは水中から出られないほどの攻撃が海面で起きていた。
「水中に落とせれば、何とかなるかな」
『近づくのが難しいだろ』
「まあ、そうなんだけど……ん?」
その時ミルの耳に歌声が聞こえてきた、どこか激しく、どこか優しい歌、魔法使いにもその声が聞こえたのか攻撃が止んだ。
その時、歌が止んだと同時に魔法使いが海に落ちてきた、障壁に守られているがその表面に誰か居る。
『チャンスだ!』
「よし!」
魔法使いに接近するとそこに攻撃していたのはミームだった、その目には怒りが籠り体のヒレが怒りを表現するように広がっていた。
そういえば彼女の親はレヴィアタンだった、海の上で殺されたということは彼女の目の前で殺したということなのだろう、その気持ちはよくわかる、だから
「どいて!最大パワーでそいつを殺す!」
「っ!」
私は最大出力の炎を魔法使いに叩きつける、海水が一瞬にして沸騰し蒸発してゆき炎が魔法使いを包み込んだ。
だが駄目だ、魔法使いは海の底に向けて落ちたものの障壁に邪魔されてやはりダメージが無い。
それどころか杖が輝きこちらに向けられていた、最大出力で撃ったことにより体が動かない。
「くっ、あいつはお父様の仇なのに……」
私の背後から真空刃が魔法使いに向かって飛んで行った、ミームが海水を刃にして放ったのだろう、だがあの程度では障壁は破れない。
だがその時変化が起きた、魔法使いの障壁が突然消え真空刃が魔法使いの腰を大きくえぐったのだ、魔法使いは何が起きたのか分からないような顔になりその口から空気が大量に漏れ出す、呼吸できない苦しさと傷口に海水が流れ込んだ痛みが同時に襲い掛かってきたのだ、口を大きく開き両目は大きく見開かれ杖を放して両手を海面に向けて動かす。
その血の匂いに引かれたのか、はたまたレヴィアタンの敵討ちか、小型の魚型の魔物が魔法使いに群がりその肉を食い千切っていった。
「さようなら」
私の体を抱きかかえ海面に向かうミームは一言そう呟いた。
『うわ、えげつない死に方』
◇
「はあぁぁぁっ!!」
「っ!」
「どうした!逃げ回ってるだけか!」
炎に包まれた樹海、その中でエリーヌはエクスカリバーの攻撃を回避し続けていた。
あの剣は受けるにはあまりにも重すぎる、それ故に戦士自身の動きも遅いのだが攻撃を吸収する鎧が厄介すぎる、これでは攻撃が効かない、結果的に避けながら攻撃手段を考えるがどうしようもないな。
「戦士なら逃げ回らずに戦ったらどうだ!」
よく言う、そんな便利な鎧をつけて何を言うか……と思いたいが言動を見ている限り戦士はあの鎧の効力には気付いていないのだろう、運よく攻撃が全部鎧に当たってくれる、そんな事を考えているに違いない、間違いなくバカだ。
『うん……勇者の気配が消えた?』
「本当か?」
『間違いない』
どうやら逃げ回ったのは無駄ではなかったらしい、弓を構え戦士の足、鎧の隙間に矢を放つ、矢は狙い通り膝の関節に命中し戦士は膝をついた。
「ぐあぁぁぁっ!?!?」
「その命、もらい受ける」
「……か……ぺ……」
戦士の体にヒュドラの毒が回り体が麻痺したのだろう、何かを喋ろうとしているが何を言っているのかは分からない、勝負はもう着いてはいるが
私は駆け出しその首を刎ねた。
「すまないな、お前を殺さねばこの剣は鞘に戻らない」
そう言って私は血のついた剣をその場に置いた。
◇
『勇者が死んだな』
「そうなの?だったらこっちに増援を呼んでくれないかしら、人間が意外としぶといのよ」
『ミルとエリーヌが来る、この戦いはすぐに終わるだろう』
アラーニャの居る場所、眼下には燃えた虫の魔物が大量に転がりアラーネアがその牙と巨大な脚を使って暴れまわっていた、アラーニャも飛んでくる矢を避けながら糸を吐いてその援護をする。
まだ魔物は残っているがもう指揮系統はバラバラになっていた。
『来たぞ』
魔王が空を見上げてそう呟く、アラーニャも空を見上げるとそこには流星のごとき炎の球体が兵士たちの中心に落ちた、球体は広範囲に炎をまき散らし人間を焼き殺してゆく。
「すまん、遅くなった」
その声と共にエリーヌがアラーネアの周りに集まっていた兵士の剣を奪い首を刎ねた、そのまま高速で走り回りながら次々と首を刎ねてゆく。
「状況は?」
「後はミルに任せればいいわ、貴方には私の護衛を頼むわね」
「承知した」
『勝ったな』
ジズの力を持ったミルは魔物の中でもトップクラスの力だ、勇者クラスの者でなければ勝てるわけなどないのだ。
◇
「終わった?」
「うん、勇者は死んだ」
ミーちゃんが私の手を取り私を抱き上げて城の屋根に上る、いつぞやとは逆だ、遠くに燃えている煙が見えた、あれが戦いの後なのか戦いの炎なのかは分からないがそんな事どうでもいいのだ。
『ありがとう、これでこの世界は守られた……さて、折角だしお前たちに真実を伝えておこうと思う、それが終わったら私の頭を撃ち抜いてくれ、これ以上生きていても仕方が無い』
「……分かった」
「真実?」
私が電磁投射装置の銃口を魔王の頭部に向けると魔王は語りだした、何故私たちがこの世界に来たのかということを
『動物の姿で生きながらえていた私は魔物の数が減っている事に気付いた、このままでは世界は再び戦争の時代に戻ってしまう、そう考えた私はこの国、この瓦礫の国を巨大な幻で包み転移魔法を作り出した、魔王の素質がある者、つまり元の世界に興味が無く、人を殺すことにためらいが無く、私の言葉を信じる、人が死んでゆく絶望の世界に慣れている、それらの条件に合う人間が出てくるのを待った、数年に一度のタイミングで異世界の人間を転移させジズのもとに行かせて反応を確認したのだ、殆どはジズに敵対して殺された敵対しなかった奴は魔物の血を分けて力を与えどうするかを確認したが私の作り出した魔物に殺されるような弱い者たちばかりだった。そんな時お前たちが現れた、二人同時という誤算はあったが私の条件に全て合致したのだ、特にヒカリの武器は凄まじかった、あの時話しただろう?』
「あの時の勇者、あれはお前だったのか」
『そうだ、エリーヌには悪いことをしたな、あの時殺すかと思ったがそれをしなかった、だからしばらく様子見をさせてもらった、あの時殺していたら魔王になったのはミズキではなくお前だっただろう、バハムートやリヴァイアサン、敵だったがキサラギにも頼んでお前を誘導した時間が無かったのでミズキに魔王になってもらったが結果的には正解だったな……これで終わりだ、この世界をこれからどうするかは任せる、だが、滅ぶ人間はもう見たくないだろ?』
バチッ!と電磁投射装置の弾丸が魔王の頭を吹き飛ばした。
最初から最後まで魔王の手のひらの上で踊らされていたのだろう、私たちが人類を滅ぼさないということを含めて。
憤りを感じるがそれはつまりこれから先は私たちの好きに生きれるということだ。
「ヒカリちゃん、これからどうする?」
「旅に行くんだろう?」
「ふふ、そうだったわね、でもその前に……」
ミズキが魔王の死体を手で持ちそれを捏ねた、魔王の体はまるで粘土のように丸くなり形を変えてゆく。
「足が無いと不便でしょ」
それは私の左足の形になった。
「そうだな」
「じゃあ早速海に行こう!この世界の海はきれいだって魔王に聞いたから」
ミズキが私の手をとって駆け出した。
平和な世界ではないがミーちゃんと一緒に居られるなら幸せだ、ここがあの世だと考えればこの世界も悪くは無い。
その日、人類は魔王の軍勢による侵略を受けた、裏切ったエルフと圧倒的な数を誇る魔王軍によって人類は窮地に立たされることになる。
人類が救われるまで後50年。
<完>
書きたいことは全部詰め込んでついに完結!書き終わってみるとなんかすごい楽しいけど内容がなかなか意味不明だね、書きたいこと詰め込むとこうなるのか。
まあそんなわけで完結です、感想など待ってます。




