防御無視は勇者に届く
魔王のスペックは攻撃力以外は勇者よりもちょっと低い
爪が大きく伸び目の前の魔法使いに向けている、だが強力な障壁に守られ爪が届かない、そのまま私たちは海岸の岩場に墜落した。
こいつがお父様を殺した、絶対に許さない、引き裂いてやる!
炎に包まれた拳を何度も叩きつけるが届かない、この壁さえなければ鎧も着ていないこの人間を容易く殺せるはずなのに。
「この、魔物が!!」
「!!」
魔法使いの杖の先端が発光する、嫌な予感がして私はその場から急いで飛びのいた。
それと同時に雷が先程まで居た場所を穿った。
『あの障壁は少し予定外だが分かっているな、あのヴァジュラを装備した杖、ヴァジュラの杖は雷を任意の場所に降らせる、まずはあの障壁を破壊して奴に接近するんだ、リヴァイアサンも援護にくる』
「分かってるよ!」
魔法使いが杖を掲げた、私は翼の出力を上げて高速で飛行しながら雷を回避する、当たりそうになれば鱗の間から火を噴射して方向を無理やり変えて一気に接近して鋭い爪を振り下ろす、一撃ではやはり傷一つつかない、ならば何度でも当てるだけだ。
「速い!だけど、何時まで逃げ切れるかしら!」
雷が広範囲に一気に降り注いだ、まるで雨のように降り注ぐ雨に阻まれ私は魔法使いから距離を離すことになった。
『焦るな、落ち着いて避け続けろ』
その時、白い極太光線が魔法使いの居た場所に命中し岩場ごと凍った、見ると海もまっすぐに凍っている、その方向を見るとそこには口から冷気を放ち口を開いているレヴィアタンの姿があった。
『魔王様、お久しぶりです、リヴァイアサン参上しました』
『よし、ジズの娘と協力して奴を倒せ』
『御意。よろしく頼むぞジズの娘……いや、ミル』
「うん、私の炎は強いから気を付けてね」
『そちらこそこちらの射線に入らないように』
その時、氷が炎に包まれ溶け去った。
その中心には障壁に守られた魔法使いが無傷で立っている。
「魔物が、調子にのるな!!」
『人間ごときが!』
レヴィアタンの口から再び冷凍光線が放出される、海が凍りそれはまっすぐ魔法使いに向かってゆく、だがそれは魔法使いの放った巨大な炎とぶつかり合い爆発した。
「っ!」
『ギャアアぁぁ!?』
爆発により発生した霧の中レヴィアタンの絶叫が聞こえた。
それと同時に霧の中で発光が起きた。
『そうか、急いで逃げろ!魔法使いが滅茶苦茶に雷を落としているんだ!』
「そうなの!?」
私は翼を広げ加速する、それを追うように雷が降ってきた。
「ちょ!なんで追いかけてくんのよ!」
『こんなに視界の悪い中、何故……そうか炎だ!!』
「はぁ?」
『炎の光が霧の中で輝いてるんだよ!海に飛び込め!』
そう言われ私は翼を消して海に飛び込む、背後で爆発にも近い落雷の音が鳴り響いた。
『くそ、あの障壁に魔物の司令クラスの魔法にヴァジュラ、障壁さえなければ何とかなるのだが……』
◇
「ほう、お前も戦士か。一対一で戦いを挑むとは命知らずだな」
「死ぬ気は無い、お前に恨みは無いが我が一族の為に死んでもらおう」
『気をつけろ、エクスカリバーの使い手は戦いの天才と言われている』
目の前の女性アーヴィングは巨大な剣を構える、私も呪いの剣ダーインスレイブを引き抜く、相手を殺すまで鞘に戻らぬ剣、引き抜いたと同時に不気味な呪詛が腕に現れた、これが呪いということだろう、鞘を投げ捨て片手で構える。
「我が名はエリーヌ」
「ほう、あいさつか。私は戦士アーヴィング、光の戦士だ」
巨大な剣に描かれた紋章が発光し鎧が黄金色に変わる、私は踏み込み一気にその懐に飛び込み剣を振るった。
キィイン!
「な!?」
「にひ」
甲高い金属音が鳴り響き私の剣が鎧に弾かれた、それと同時に戦士が剣を振る、振るわれた剣の刃に手をつき乗り越えて回避した。
「ありゃ、避けられた。ならもう一撃!」
巨大な剣が振るわれ私は後ろの飛ぶ、剣は巨大な樹木をいともたやすく切り裂く、切れ味もそうだがそれを振っている戦士も凄いパワーだ。
『バハムート、やれ!』
『御意』
ある程度下がった時、巨大な壁が戦士を押しつぶした、いや壁ではない、ベヒモスの手だ、あまりにも巨大すぎて壁にしか見えない。
「やったか?」
『無理だな』
ベヒモスがそう言った瞬間、その腕が大きく割れて血が噴き出し根元から砕けた。
「あーあー、汚れちまった、後で水浴びだなこれは」
「なんだあのバカ力は」
穴からベヒモスの腕を持ち上げて戦士が這い上がってきた、その体には目立った傷は無い。
「まずはそこのノロマから斬ってやる」
『簡単に斬られるわけにはいかんな』
ベヒモスの頭部が戦士に向きその口から炎が吐かれる。
『転移する』
巨大な頭部から放射された炎は樹海全てを燃やしてしまうのではないかという程の範囲を一気に燃え上がらせた、魔王の転移魔法で離れた山から見えた光景はまるで炎の津波が押し寄せるかのように見えた。
「流石にこれは倒せたか?」
『この程度で倒せるならお前の手助けなど要らない』
魔王がそう言った瞬間、炎の海から巨大な光の柱が発生した、そしてそれは振り下ろされベヒモスの胴体に直撃した、そして信じられないことが起きた。
直撃した部分にヒビが入りそこから血が噴き出したのだ、そのまま光の柱は進んでゆき最後にはベヒモスの胴体が大きく穿たれた。
『流石はエクスカリバー、やはりバハムートには荷が重いか。奴の前に転移するぞ』
炎に包まれた木々の間に戦士は無傷で立っていた、私は弓を撃つ、頭を狙って放たれた矢は明らかにおかしな軌道を描き戦士の鎧に当たって弾かれた。
『成程、あの鎧が攻撃を吸収しているわけだ、しかもあの鎧オリハルコンで作られているうえに勇者の加護に守られているな』
「つまり、倒せないのか」
『足止めならできる』
難しいことを言ってくれる、オリハルコンはこの世界で最も頑丈な物質だそれに勇者の力が込められているということは勝ち目が無いということだ、足止めと言われてもあの戦闘力を相手にどれ程戦えるか。
「勇者を早く倒してくれよ」
◇
「行くよミーちゃん」
「うん!」
ヒカリがレールガンを発射する、流石の勇者もこの弾丸を見切れる程の速度は無いのかオーラに直撃した。
そこへミズキが突っ込む、その手には剣、魔王の剣が握られていた、素人ではあるが力任せにそれを振ることはできる、衝撃波だけでも人間を軽く吹き飛ばせる程の力で剣を振り下ろした。
勇者はそれを剣で受け止め火花があがった、そこへヒカリが飛び降りながら電磁ブレードを振り下ろす、
勇者は剣を手放しそれを回避しながら魔方陣を描いた。
「光よ!」
『闇に帰れ』
勇者の手から光の光線が発射され魔王が黒い壁を作ってそれを吸収した。
「光の使い方が下手だな」
勇者の姿が消える、いや、消えたように見えるほどの速度で移動する、ヒカリのセンサーはそれをしっかりと捉えていた。
「ミーちゃん後ろ!」
「そこっ!」
「なにっ!?」
ミズキが剣を大きく振る、勇者はその剣を両手で受け止めた。
そこへヒカリが電磁ブレードで斬りかかるが当たる直前に再びその姿を消した。
「やはり普通に戦ってもダメか」
「武器を使うのに慣れてなくてごめんなさい……」
「大丈夫だ、一瞬でも動きが止まればミーちゃんでも当てれる。私の指示する通りに剣を振って」
「分かった」
勇者が二人から少し距離を離して走り回っているのをヒカリのセンサーが捉えていた、動きを止めれば魔王の剣に当たるのが分かっているからだ、ヒカリの武器では勇者は倒せない、隙を見つけて魔王を倒せば勇者の勝ちだ、それが慢心だとその時の勇者に分かるはずもないのだが。
「ミーちゃん、目を瞑って後ろを薙ぎ払って!」
「やあっ!」
ミズキが剣を振る、それと同時にヒカリは左足の電磁ブレードをバッテリーごと空に向かってパージしてそこにレールガンを撃った。
直撃したバッテリーは爆発し残っていた電力がブレード部分に流れ込んで放電される、強烈な閃光が一瞬その場を支配した、光を調整する機能もあるヒカリのサングラス、目を瞑っていたミズキにはその光は関係なかった、だが一人、目を開けていた肉眼の勇者は目を焼かれる強烈な光をまともに浴びることになった。
「ああ!?目がぁ!??」
勇者の動きが止まり魔王の剣がまともに直撃する、魔王の剣は勇者の纏っていたオーラを吸収して無効化する、だが刃が勇者に通らない、そこへヒカリがレールガンを発射し勇者の頭部に直撃する、ミズキは剣を手放し勇者の顔を闇を纏った拳で思いきり殴りその体が宙を舞う。
「よし!」
「やった!」
だがそれを見た魔王は声を荒げた。
『まだだ!まだ体力が1残ってる!』
殴り飛ばしたのがまずかった、吹き飛んだ勇者はもう既にミズキの攻撃範囲から離れている。
それに気付いた瞬間、ミズキが腰に付けていたナイフを投げた、ヒカリに貰ったそのナイフは落ちてゆく勇者の背中にまっすぐ吸い込まれ突き刺さった。
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