魔王は勇者を殺す作戦を考えている
『よくやったぞ小娘、初めてにしては上出来だ』
「はぁ、はぁ……ありがとうございます」
ここは、樹海か。どうやら私たちは樹海のベヒモスの背に転移したようだ。
「大丈夫、ヒカリちゃん?」
「なんとか……ミルは?」
「今治療したから大丈夫……だと思う」
『安心しろ、ジズの娘だからな、治療は容易い』
「ところで」
『なんだ?』
「お前は誰だ?」
ミーちゃんの肩に乗っていた黒蛇が肩から下りてきた。
『私は初代魔王だ。そこのアラクネさん、エルフのお嬢さんは大丈夫かい?』
「無事よ」
「何とか大丈夫だ、寝転がったままですまないがお前が魔王というのは本当か?」
『疑うなよ巨乳のお嬢さん』
「変な名で呼ぶな」
『しかし凄いな、ドラゴンの少女に巨乳エルフに妖艶なアラクネに欠損少女とかなんだこのフェチの楽園。ぐえっ!?』
「魔王さん、そういういらない話はあとでしましょうね、それとも今すぐ死にます?」
ミーちゃんが黒蛇、もとい魔王の首を掴んで締め上げる。
魔王は苦しそうな表情を見せるがどこか高揚したような声を上げた。
『待って!待って!あ……でもちょっといいかも……』
「うわ気持ち悪」
ミーちゃんは魔王を放り投げる。
『ぐえっ!?』
◇
『さて、少しまじめな話をしようか』
「出来ればずっとしてくれませんか魔王」
『さんづけではなく呼び捨てになってしまった、まあいい』
いいのかそれで……
『知っての通り世界のバランスは今、危険な状態にある、このバランスを守るためには今の勇者を倒し魔物の世界を再び繁栄させる必要がある。そのためにもお前たちには勇者一行を倒してもらいたい、魔王一人では勇者には決して勝てないからな』
「無理だ、われわれの攻撃は奴には届かない」
「私の武器は当たるがダメージにならない、というかなんなんだアイツは?」
『そうか、そこから説明しないといけないのか。一つ聞くがヒカリよ、RPGゲームというのを知っているか?』
「RPGゲーム?ゲームは分かるがRPGとはなんだ、ロケットランチャーか?」
『そんな物騒なものではない、ロールプレイングゲーム、細かい説明は省くが要は戦いで経験値を手に入れてレベルアップすることを数値化したものだ、奴のスペックはこんな感じだ』
ユウキ 17歳
種族:人間
レベル:99
スキル:絶対回避、必中、自然回復<最>、覚醒
生命力:9999
魔力:∞
攻撃力:999
防御力:999
速力:300
「……意味が分からん」
『めっちゃ強い、攻撃当たらない、攻撃絶対当たる、走る速度もだいぶ速い。ただ反射神経は人間だからヒカリの体術にはかなわない。大体そんな感じだ、だが厄介なのはこの覚醒というスキルだ』
「あの黄金色の姿か」
『そうだ、全ての能力が五倍に跳ね上がる、これ考えたやつ頭悪いな』
「?」
『もしもこれを発動されたら対抗できるのは魔王だけだ、だが見て分かる通り体力が足りない、だからヒカリとミズキ、お前たち二人でアイツを倒してほしい、もちろん方法も用意してやる』
そう言って魔王はミーちゃんの肩に戻った。
『ミズキ、万能ポーチを使うぞ、俺の言う物を取り出せ。そっちのアラクネちゃんもエルフのお嬢さんを起こしてやってくれ』
「大丈夫?」
「ああ痛みは引いてきた、大丈夫だ」
ミーちゃんが腰に吊るしていたポーチを外す、万能ポーチ……ポータルの事か。
『まずはエルフのお嬢さんに鎧と剣だ、お前には勇者の仲間の戦士を倒してもらいたい』
「鎧と剣……」
ミーちゃんがポーチに手を突っ込む、明らかに大きさ以上に腕が入っているが考えてはいけないのだろう。
「これを、魔王の剣と魔界の鎧です」
「これ着けたら死にますよね」
『ダークエルフ的な要素を……』
「そんな要素いりません」
『じゃあダーインスレイブ』
魔王の剣と鎧をポーチに戻し次に引き抜いたのは不気味な赤黒い剣であった。
『対象を殺すまで決して鞘に戻らない呪いの剣だ、エクスカリバーに対抗するならちょうどいい呪いだろう、それとヒュドラの毒矢と弓を渡しておこう、鎧は聖剣の光を打ち払う魔法をかけておく』
「聖剣の光?」
『そうだ、戦士の使う巨大な剣、聖剣エクスカリバーは光を刃にし圧倒的な殲滅力を誇る、どれだけお前が速くても振られれば終わりだ、だからその光が効かないようにしてやろう。戦士との戦い方もあとで教えてやる』
「私、アイツを殺したい」
「ミル?」
『ジズの仇討ちか、面白い。お前には魔法使いを倒してもらおうか、奴は最上級の魔法を繰り出すヴァジュラを杖に装備している、その攻撃力は知っての通りだ、だがそれ故に奴には弱点がある、奴はその魔法に頼りすぎるが故本人は大して強くは無い、接近さえできれば簡単に引き裂き殺せるだろう。殺し方は任せる……それとお前には翼が必要だな』
「勇者の仲間はそれだけなの?まだいるなら私が倒してあげてもいいわよ」
『アラクネの姉さんには勇者を助けに来るであろう兵士や冒険者の相手をしてもらいたい、虫の軍勢はまだかなりの数が生き残っているはずだ、その司令を頼む』
「了解しました魔王様」
『さて、後はヒカリだが』
「どうするんですか魔王?」
『私はメカ少女好きだぞ、改造プランならもう既に考えている。ミズキ、彼女のフル装備を』
そう言われミーちゃんはポーチから電磁投射装置を取り出し、更にサングラスを取り出す
「このサングラスはヘルメットと同じセンサーが組み込まれているの、このセンサーなら勇者の動きが捉えられる、勇者は確かに強い、だけど不死身ではない、電磁投射装置はこの世界では防御力無視っていうとんでもないスキルを持っているの、この世界のものでなければアイツに攻撃は命中するし必中も効かない、だから今勇者を倒せるのは私たちだけ」
『正確には今のお前たちだけだ、お前たちの血は少しづつではあるがこの世界の物と入れ替わり始めている、だがお前たちの体内に流れるナノマシンが何とか異世界の者という状態を保っているに過ぎない。私の考えが正しければ数日中にナノマシンが魔物の血に負けてお前たちはこの世界の住民となるだろう、だからできるだけ早くに勇者を倒さなければいけない。簡単だろ?』
「絶対簡単じゃない」
『大丈夫だ、勇者は戦いは素人、魔王も素人、だがお前は何年も戦ってきた戦闘のプロだ、万が一にも負けることは無い。まあもしもの時は奥の手を使わせてもらうがな』
「……で、どうすればいい?」
『そうだな……』




