魔王の復活(後編)
「くそ、何なんだお前は」
勇者は剣を抜いた、そしてそれを振る、そんな事で当たるわけが無いはずなのに。だが
「っ!?」
突然エリーヌが吹き飛ばされる、鎧には深い切り傷ができておりその隙間から血が流れだした。
「これが俺の能力、命中率百パーセントだ、誰も俺の攻撃を回避することなどヴぁ!?」
そこまで言ったところで私は電磁投射装置の引き金を引いた。
「黙ってろ、アラーニャ、止血はできるか?」
「できるわよ、私の毒には自然回復力を高める種類もあるから」
「だったら下がって治療をしておいてくれ、こいつの相手は私がする」
「分かったわ」
「ミルはエーちゃんを守ってくれ」
「分かった」
アラーニャがエリーヌを担いで祭壇の下に下りる、それを確認した私は勇者に距離を詰める、攻撃が効かないなら同じ場所に何度も当てればいいだけだ、何時かはそれで限界を迎えるはずだ。
「速い!?」
「遅い」
左手でその頭部を掴みながら至近距離で電磁投射装置の引き金を引く、一発、二発、三発……そこまで撃ったところで勇者が剣を振る、その動作に気付き手を離すと私はそれを伏せて回避した。
「っ!痛ぇ!!」
「素人が、何故戦う」
足払いで勇者を転倒させその頭部に弾丸を撃ち込みながら気になっていたことを聞いてみた。
「魔王を倒し魔物からこの世界を守るためだ!」
「愚かな、魔物が居なくなればどうなるか想像もできないのか」
「そっちこそ、魔物が居れば人々はその恐怖に怯え悲しみが広がるだけだとなぜわからなヴぉえ!?」
引き金を引く、どうやらこいつには分からないらしい、人類同士で戦争が起きないと本当に信じているようだ。
「今を生きる者たちだけが幸せならそれでいいのか、後の者たちがどれ程苦しもうがお前には関係ないということか」
「何を……」
「人間は戦いを止められるほど賢くは無いということだ、強さを持ったお前には分からないだろう。たとえ死ぬ直前でも人間は戦い続ける」
それは私の世界の最後と同じだ、戦って戦って、殺されて、奪って、逃げて。人間の負は終わらない、それと共に生きていくしかないのだ、その負をこの世界は魔物に肩代わりさせる、魔物が人間を襲えば人間はそれと戦うしかない、人類同士で潰しあっている余裕などなくなる。
平和にはできないが、生き続けることはできる。
「馬鹿が」
「それでも俺は人間の可能性を」
「それが愚かだと言っている」
立ち上がった勇者の頭部を蹴りその体を蹴り飛ばす。
「人間にある可能性は戦いと共に生きることだ、人間の平和など数百年が限界だと分かれ」
「だとしても、にっ!?」
「うるさい、黙れ」
更に立ち上がろうとした勇者に弾丸を撃ち込む、死なない人間とは面倒だ。
「こうなれば最後のちヴぁ!!」
「黙れと言った」
勇者が手を空に掲げた瞬間その腕に弾丸を撃ち込む、それと同時に勇者の体に変化が起きた。
その体が黄金色に発光し浮かび上がった。
弾丸を撃ち込むがそれが当たる前に黄金色のオーラに当たって砕けた。
「これが俺の切り札、まさかこの世界でこの力を使うことになるとは思わなかったがな」
「っ!?」
勇者の姿が消える、それと同時に右腕に大きな衝撃を感じ視界が大きく動き地面が目の前にきた。
「今のは……」
立ち上がろうと手をつく、だがバランスを崩した、見ると右腕が肘から先が無くなっている、特殊合金繊維だぞ、こいつは今ヒトガタのロベリア並の力なのか。
離れた場所に右手が、クリスタルの足下に電磁投射装置が落ちていた。
「機械の腕?義手だったのか、ということはこの世界の住民ではないということか、成程、だから俺の力が効かなかったわけか」
「ヒカリ!!」
「まずはお前から!」
「え?……あ、あああぁぁぁぁっっ!!!」
勇者が剣を振る、勇者に襲い掛かったミルの両翼が切断され絶叫しながら倒れた。
私は左手にプラズマライフルを持ち勇者に向けて引き金を引く、だがプラズマ弾は全て勇者に当たる前に霧散して無効化されてしまった。
「ダメか!」
「これで終わりだ!」
再び勇者の姿が消える、不味い、この状態で攻撃を受ければ防ぐ手段が無い。
目を閉じてその時に備える。
「……?」
だがその時は来ない、目を開けて体を起こす、そこには、
「ミーちゃん?」
勇者の剣を片手で掴み攻撃を止めているミーちゃんの姿があった。
「魔王、復活したのか」
「私の友達はもう傷つけさせない」
『良いぞミズキ、そいつを引き離して逃げるんだ』
「簡単に言わないで」
ミーちゃんの肩に黒い蛇が乗って何かを言っている、私が立ち上がるとミーちゃんと勇者の姿が消え火花が起きる、速すぎて見えないのだろう、私はミルに駆け寄ってその体を担ぎ上げる、翼が無くなったからかとても軽い、半分ほどの体重が無くなっている気がする。
ミーちゃんと勇者が再び祭壇の上に現れる。
「流石は魔王、こちらのチート能力と同格だとは」
「はぁ、はぁ……」
『ふむ、限界だな。おや、ちょうどいい、転移魔法を準備しておけ、お前の友と共に逃げるぞ』
「え、どうやって?」
『上を見ろ』
蛇のその言葉に私と勇者とミーちゃんが同時に上を見る、そこには巨大なドラゴンが降ってきた。
「ジズ!?」
「逃げます!」
「待て!」
ミーちゃんが私の体を掴み瞬間移動し今度はエリーヌとアラーニャを掴む、勇者がこちらを追おうとしたが私たちとの間にジズの巨体が落ちた。
「勇者さま!ジズの討伐に成功しました!」
転移魔法が発動する瞬間、ジズの上に乗る人影が見えた、大きなつばの帽子にローブ、絵本で読んだような魔法使いの格好をした少女が見えた。




