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異世界漂流  作者: 英雄騎士
魔王復活
16/23

魔王という悪

「無茶苦茶だ」

「イタタ、みんな生きているか?」

「何とか生きてまーす」

「着地に成功したわ」


 私とエリーヌとミルは木にぶら下がりアラーニャは糸で作ったクッションに着地していた。


「ふう、どこへ向かおうか」

「とりあえずリヴァイアサン殿が言っていたキサラギ殿に会うのがいいのでは、この国の建国者ということですしポータルの事も知っているかもしれません」


 とりあえず木から下りた私たちは先ほどの港町に向かってみた。


「そっちはどうだ!」

「人は大丈夫だが家がだめだ!」


 港町はなかなか大惨事になっていた、レヴィアタンが激突した沿岸から砕けた岩が降り注ぎ木造の建物にことごとく穴を開け破壊していた。


「聞いていられる状況ではなさそうですね」

「だったら整備された道を進めばいい、何時か大きな町につくだろう」

「まあそうでしょうけど」


 とりあえず私たちは破壊された町を後にしてよく手入れされた道を歩き始めた。


「しかし見た事のない植物が多いね、あの変な形の木とか」

「あれは松ですね、この大陸にだけ自生しているものです」

「エリーヌこの島の事知ってるの?」

「図鑑で見た程度ですがある程度は知っていますよ」


 だったら地図ぐらい分からないのか、と聞きたくなったが言わないということは知らないのだろう。

 その後、結局町すらも見つからずに一晩経ってしまった。


「なんで何にもないの……」

「おそらく本来は馬で移動する場所だからではないでしょうか、足下の足跡全部馬の物ですし」



 そして何とか町が見えてきた、大きな城を中心とした大きな城下町が広がっている。


「何あれ、低い建物がいっぱい建ってる」

「キサラギの国の特徴ですね、基本的に木造で泥で壁を作るそうです」


 日本だ。

 間違いない、私の故郷の歴史書に載っていた建物が沢山見える。


「城を目指そう、居るとすればあそこだ」


 私たちは城下町に入る、道行く人々は亜人や人間だがその格好はどれも着物か袴で私たちの姿は良く目立った、特にエリーヌの鎧は完全に浮いている、逆にアラーニャの姿は良く馴染んでいた。


「ようこそ如月城へ、お待ちしておりました」

「は?」


 城の城門、そこまで来たとき門番に言われた言葉はこちらの予想を裏切るものだった、まるで私たちが来るのを分かっていたかのように門が開かれた。


「我らが大王(おおきみ)は全ての出来事を見ています、それは未来もです」


 一人の男に案内され私たちは薄暗い部屋に通される、案内してくれた男が襖を閉めると部屋の中が明るくなり部屋の奥、そこに一人の女性、いや幼女だろうか、ふわふわな狐の耳に尻尾が生えた可愛い幼女がちょこんと座っていた。

 

「よくきたのう、まあ座れ」


 私たちの前に置かれた座布団に私たちは座る、私は正座、ミルは胡坐をかいて、エリーヌは三角座り、アラーニャは足を畳んで、という文化の違いがはっきり見える座り方になった。


「さて、儂の名はキサラギじゃ、お主たちが聞きたいことわ分かっておる、それから答えてやろう。ポータルはここには無いぞ」

「そうか」

「こら、帰ろうとするでない」


 立ち上がろうとしたらばれた、完全に読まれているな。


「まあ話を聞いていけ、これはとても大事な事なんじゃ」

「大事な事?」

「この世界の未来の事じゃ。もうすぐこの世界は混沌に包まれるじゃろう、その時おぬしらはその中心に嫌でも関わることになる」

「未来?混沌?」


 何を言っているのかさっぱり分からない。


「簡単に説明するならこの混沌の原因はミズキと勇者じゃ」

「!!」

「!!」


 私とエリーヌがその名に反応し立ち上がりそうになる。


「落ち着け、まだ話は終わっていない」


 キサラギが人差し指を立てる、その瞬間私の体が突然動かなくなる。


「ついでに喋れなくしたので質問は私の話が終わった後じゃ」

「……」

「これから起こる混沌、それは魔王の復活と勇者の出現じゃ、儂には千里眼という能力があってな、千通りの未来と世界の全てが見えておる」


 そう言ってキサラギは自らの目を指す。


「それと引き換えに視力は無いがな。少し見てみろ」


 キサラギは私の目の前に歩いてくると瞳を私の目に近づけてくる、その目はまるで水晶のように美しくガラスのように透き通り夜の闇のように深い黒に吸い込まれそうになる。


「我が目よこの者に最悪の未来を映したまえ」


 闇が広がり私の視界が黒く染まる、これは……



「はっ!?」

「起きたかヒカリ!」

「すまない眠っていた……」

「まあ仕方ないでしょうね、もう何日も寝てないし。ミル、大丈夫?」

「なん……とか……意識は……っ!」


 これは一体?私が居る、場所はベヒモスのいた樹海だろうか、だが地形が違う。

 私の体はそれに浮かんでおり、体も半透明だ、幻覚……いや、先ほどの言葉を信じるなら未来か。


 彼方此方から火が上がり煙が充満しているそしてまるで私たちを守るように崖がそびえていた……いや違う、これは……


『ベヒモス?』


 それはベヒモスの死体だった、体を折り曲げて私たち五人を守っている……五人?

 右腕の無い私、鎧が大きく破損し頭から血を流しているエリーヌ、両方の翼と両足の無くなったミル、それを背負ったアラーニャ、そして私の左腕に抱かれているのは……


『ミーちゃん!?』


 羊のような不気味な角が頭から生えその髪は夜のような黒い色に染まっているが確かのあの顔はミズキだ、黒いマントに包まれてその体は分からない、だがその体が呼吸をしていないのは分かった。

 思わず口を手で覆う、吐き気がした、目が涙で滲んだ……そんな筈が無い、そんな事があっていい筈が無い。

 そんな私の儚い願いはアラーニャの一言で崩れ去った。


「そんな()()何時まで背負って逃げるつもり、いい加減にしないと貴方を置いていくわよ」

「……」


 下の私はそれに答えなかった、ただ虚ろな目をしてその死体を抱き寄せる。


「ヒカリ殿……敵がもうすぐ来ます、ベヒモスの巨体でも勇者の攻撃ではもうもちません」

「……」


 エリーヌの言葉にその私は頷きミーちゃんの死体を担いで立ち上がった。


『これが……未来……』

『そうじゃ』


 いつの間にか私の隣にキサラギが立っていた、そしてその身長に驚いた、栄養失調で背のあまり伸びなかった私の腰ほどまでしかないのだ。

 しかしそんな事を今は気にしている場合ではない。


『この後お主たちは勇者に追いつかれ全滅するのじゃ。その顔、あのミズキというお前の親友が何故ああなったのか気になるようじゃな、まあ当然かのう』

『聞かせて』

『まあ焦るな、あの少女は精霊に魅入られたのじゃよ』

『精霊に?』

『そうじゃ、お主は嫌われて魔物の血を入れてもらったおかげで命拾いしたようじゃがあの少女は精霊に好かれたのじゃ、精霊とはこの世界に存在する生きとし生けるもの全ての源であり自然そのものじゃ魔王を含めてな』

『?』

『話が見えてこんようじゃの、ではお主に分かりやすい言葉にしようか。もしも自然界で食物連鎖の生物の一部が極端に増えれば、もしくは減ればどうなる?』

『バランスを失い食物連鎖が成り立たなくなる……それとこれに何の関係が?』


『ではもう一つ問おう、バランスを失いそうになった自然はどうする?』

『新たなバランスを生み出し元に戻ろうとする……』

『では最後の問いだ、食物連鎖で最下位を精霊、次に人だとすればその上は?』

『……魔物?』

『正解じゃ』

『そして今魔物の数は減り続けていている、魔物を最も多く生み出せるのは魔王だけじゃ』

『そして魔王を生み出したのは精霊でありミーちゃんはその精霊に魅入られた……まさか!?』


 先ほどのミーちゃんの姿が頭をよぎる、私と同じように人ではない何かに変化していた、あれが魔王の姿だとしたら?


『ミーちゃんが魔王なのか?』

『その通りじゃ、お主が利口で助かった。お主の友人はこの世界のバランスを元に戻しこの世界を守るつもりじゃ、それを現在の勇者が邪魔をし命を落とす、そうなればこの世界からいずれ魔物が居なくなるじゃろう、そうなればこの世界は人の世界になる、お主になら分かるのではないかこの言葉の意味が?』


『人の世界、魔物という脅威が居なくなり亜人と人間が共存し繁栄する、だがそのうちにそこに格差が生まれる、寿命が長く絶対数が少なく外見が人間とは少し違う亜人が最初、次にそれに反発した亜人が、それによって亜人の数が減ったとしても反乱を恐れた人間によりその種は断たれる……そして人間の社会は私の世界のように愚かな行為を繰り返す』


『そうじゃ、儂にはその未来が見えた、儂は不老不死じゃからの。勇者は善意で魔王を倒す、それが世界を救うと信じて、皆が笑顔に暮らせると信じてじゃ、じゃがそれが間違いじゃ、儂は勇者にそれを教えたが『それはお前の見た未来だろう、そんな未来俺は信じない、人間はそこまで愚かでは無いからだ』だそうじゃ、愚か者じゃの』

『何時だって戦いが起きるのはそんな愚か者のせいです、人間は争いを止めれるほど高度な思考を持っていませんから』


『そうじゃろうな、精霊はその事を知っていたのじゃ、じゃから魔王をこの世に生み出した。絶対的な敵が存在すれば人間は手を取り合いその脅威に立ち向かえるからじゃ』

『ミーちゃんはそのための人柱だと?』

『そうじゃ、としか儂には言えん。じゃが今ではない、今死なれては困る。お主の選択にこの先の未来を儂は託す、千の未来の中でお主が生きている未来は二つじゃ、見て見ぬふりをして仮初の平和の中で生きるか、それとも魔王を助けこの世界の人間と戦うか……』


 私が生き残る未来がその二つだと……ならばそんな選択肢もう決まっている、どうせ失った命、守るべきものを失った悲しき兵士、それが私だ。


『私は……』

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