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異世界漂流  作者: 英雄騎士
旅をする
11/23

美しさは棘

「行くんだったらマーレの町が良いと思うわ、この服を奪ったのもそこの商人だったし」

「どうなんだエリーヌ?」

「良いと思います、魚人が多く住む町と言われていますのでアラーニャ殿も受け入れてもらえるでしょう」


 それは良いかもしれない、アラーニャはその外見が魔物に近すぎる事によってミームビエル国への入国を断られている、これがベヒモスの言っていた事なのだろう。

 まずはミームビエルへサバクトカゲの馬車を返すと馬の馬車を借りる、お金に関しては霧の村の調査の報告もちろん嘘だがそれによって特に困らない程手に入れていた。


「道は分かっていますよね?」

「教えてもらったし地図もある、これと端末を合わせれば迷うことは無い」

「ずっと気になってたんだけどこの腕ってどうなってるの?」


 ミルが私の右腕に表示されるモニターをのぞき込む、細かく説明してもこの世界に存在しない技術なので難しい、とりあえず簡単に説明するなら。


「勝手に地図を書いてくれて毒を見分けたり生きるのに必要なものがあるかどうかを判別する道具」

「なにそれ凄い!そんなに多機能な道具だったんだこれ」


 一応納得してくれたらしい、その後ろでエリーヌもアラーニャも驚いていた。


「どんな魔方陣が……いや、むしろその機能は神具のような……」

「神具の中には地図が出てくるものがあったらしいが、生きるために必要なものを判別するのは初めて聞きましたわ」


 そうか、出来ればその地図が出てくる道具が欲しい、この端末ではスキャンできる百メートル範囲しか記録されないから言う程便利ではない。

 


「見えてきた、マーレの町だ」

「おおー海だ、初めて見た!!」

「久しい場所だ、しかしあれは……」

「ほう、あれ程の物を作れるのか今の人は」


 丘を越え海が見えた、太陽の光を反射し真っ青に輝く海だ、青い海は初めて見た、海岸線に大きな町と、その上に巨大な飛行船が浮いていた。



「ようこそ、マーレの町へ。新型の空中船を見に来たのですか?」

「空中船?」


 おそらく上空に見える飛行船の事だろう、町の中にあったギルドに馬車を渡して私たちは町の中を散策することにした。


「私海見たい!」

「私も見に行きたい、エリーヌとアラーニェはどうする?」

「私は海を渡る方法を探そう、海の向こうとなれば出てくれる船も限られているだろうしな」

「私もこのエルフと同じだわ、私も海の向こうを目指してくれる船をさがすわね」


 そういうことで私とミルはエリーヌとアラーニェの二人と別れて海を目指すことにした、日が暮れるころにギルドの酒場で待ち合わせだ。


 太陽は真上、町を少し離れた場所にある砂浜に私たちは来ていた、私の世界でいうところの季節は夏、砂浜は焼けた鉄板のような熱さであるが素足が鱗である私たち二人には特に関係はなかった。


「おおー!凄ーい!!しょっぱい!?」


 海に飛び込みミルは翼を開いてはしゃいでいた、それによって起きる波も凄いがそれ以上に驚きなのはその力だ、開けば十メートルはある巨大な翼を水圧をものともせずに振っている事だった、あれで遊んでいるのだから本気を出せば私の防具のパワーを上回るだろう。


 私は波にさらわれないようにそこから離れると武器弾薬を外し海の中に足を踏み入れた、先ほどの熱さとは打って変わって水の中の冷たい感覚が気持ちいい、昔水泳でプールを泳いだことはあったが海は初めてだ、気付くと私は足もつかないほど深い場所まで来ていた。

 力を抜いて浮かんでみる、右腕と左足が沈んだままだったが水面から顔は出せた、とても気持ちがいい、余計な力が抜けてふかふかのベットの上に寝転がっているような気分になる。


(目を閉じれば眠ってしまいそうだ)


 とても心地が良い、するとどこからか歌声が聞こえてきた、浮かんだ状態でそんなものを聞けば本当に眠ってしまう。

 だったからだろうか、私は右手の端末に表示された警告に気付けなかった。


(っ!?)


 突然左足を何かに掴まれ海の中に引きずり込まれる、見ると何か触手が絡まり海の底に向かっていた。


(くそ、代わりが無いというのに!)


 私は右腕の端末を操作して左足の義足部分を外し触手から解放された。


(確かミルは水中でも戦えたはずだ、とにかく私の位置を伝えなければ)


 力を抜き海面に向いて浮かんで行く、だが右腕が重りとなってなかなか速度が上がらない、息ももう苦しくなってきた。

 その時触手が今度は首に絡みついた。


(こんなところで……!?)


 触手を掴もうとするが表面が滑ってうまく掴めない、一気に引っ張られ肺の中の空気が口から漏れた。


(あ……ミー……ちゃん……)


 最後の力で水面に右腕を伸ばす、もちろんそんなもので何かが変わるはずもなく私の意識は途切れた。



『大丈夫だよ』


 意識の途切れる直前、そんな声が聞こえた気がした。

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