追放と安らぎ
「怯むなぁー!! すすめぇぇぇぇぇえ!!」
指揮官らしい男は兵を引き連れ敵軍を倒そうとしている
「臆するなぁ!! 迎え撃てぇぇぇ!!」
ここは今まで何人、いや何千人の命が散ったかわからない戦場。
「魔法隊!! 隊列を組み詠唱せよ!!」
ひとりの指揮官が言うともうひとりの指揮官が同じように。
「敵軍に遅れをとるな!! 魔法隊、魔力を一点に集め敵を焼き払え!!」
両軍の魔法を唱えるものたちの頭上には膨大な魔力が集中し巨大な炎の塊を形成している。
「はなてぇえ!!」
「敵を焼き払えぇ!!」
すると魔力の塊は敵の頭上にそれぞれ飛んで行き押しつぶそうとしていた。
だが……
「っ! どうした魔法隊! 敵を焼き払え!!」
「魔力がコントロールできません!!」
すると戦場を一筋の光が駆け巡る。
「なんだあれは!?」
頭上で神々しく、翼を広げているアステラがいる。
「まさか!?」
「いや、そんなはずはない! あれは敵の幻術だ! 惑わされるな!!」
魔法隊はまた魔法を唱え始める、しかし。
「なぜだ! 魔法が…」
するとアステラは。
「なぜです? なぜ争うのです!! なぜ人は皆、発展と破滅を繰り返すのです!!」
アステラの声は戦場を静かにする。
「我は創世の神アステラ、あなたたちを見守る神。そしてあなたたちの世界を愛するもの」
アステラは純白の羽をより一層広げる。
「私はあなたたちが苦しむのを望んではいません、あの破滅の神さえもそう思っていません」
アステラはより一層声を大きくし。
「さあ! 武器を捨てなさい! あなたたちの家族が! 親友が! あなたたちを待ってるはずです!
ここで死んだらあなたの愛する人もやがて破滅に追いやられてしまいます」
すると兵たちは脱力し武器を捨て始めた、もちろん指揮官の二人も。
「私からはあなたたち人間がいつまでも美しい世界で生き続けることを願います
「この者たちに大地の息吹を、創生のの加護を」
そう言うとアステラは天に向かって羽ばたいて行った。
「ゔぅ、何故私たちは哀れなことを……」
「我ながら愚かよ……」
こうして人間たちの争いは静かに終わった。
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アステラは天界に戻りグリアスの元に行く。
「グリアス!」
「アステラ! 無事に終わったようだな!」
そう言いながらグリアスはアステラを抱き寄せる。
「アステラ、本当にありがとう、俺を救ってくれて」
グリアスはそう言うとアステラを見つめ。
「俺がお前のことを好きって言ったらダメ……か?」
「それでは……私があなたのこと気になっていたと言ったらどうなります?」
そう言い合って二つの神は抱き合う。
「ずっと一緒にいよう」
「ええ、もちろん」
そこへ大きな翼を羽ばたかせ大天使、ルシファルが現れる。
「お前たちは何をしている、お前たちは人間に干渉しすぎた、それと創世と破滅は対をなす者、このルールを破ったお前ら、創世の神アステラ、破滅の神グリアスは天界の追放および封印を執行する」
「封印だと……」
グリアスはその言葉を聞きアステラを抱き抱え天界を飛び降りようとする……
「逃すか……お前らは永遠に交わってはいけない運命だ! ならばどちらかを消そう……お前自らの力で!!」
ルシファルは不気味な笑みを浮かべる。
「無への誘い、それは永久の暗黒」
「なっ!?」
グリアスはルシファルの魔法がグリアスの『暗黒の誘い』と同じことに気づく。
「魔術式が俺のと一緒だ、このままだと……」
ルシファルは詠唱し終わるとアステラに向かってそれを発動させようとする。
それを遮ろうとグリアスは魔法を展開する。
「永久の暗黒、それは永久の安息なり、封印を持って、安息をもたらしたまえ! 『暗黒の世界』」
グリアスは自らを持ってアステラと自分を封印することによっていつまでも一緒にいることを願った。
「ん? ……ああ、そうか……フフッ、フハハハハハハハ!! 惨めなもんだ!! 惨めなお前らは下界で誰にも解放されることなく永遠に封印されてるがいい!!」
グリアスは途切れかける意識の中でこう願った
(せめて……あの美しい……せ、かい…………で)
グリアスとアステラはもつれながら下界に落ちて行った。