頓挫
薄暗い通路を抜け、城外に出た。さっきより高く上った朝日と二度目の「おはよう」を交わす。ひどく眩しいと感じるその明るさに一瞬顔を背けた。そしておぼつかない視界に辛うじて映ったのは、突然の敵襲に慌てふためく兵士の様子だった。彼らは皆、東門を出て、北門の方に向かっている。砲撃の開始と同時に北門を急襲し、放火したパットンたちを迎撃するためだ。それと同じことが南門でも行われており、モライザたちは西門に向かっているはずである。
こうすることで北東と南西に二つの戦線を形成することが出来、その結果、東門から南門、そして西門にかけてのエリアは防備の空白地帯となる。オレはその間隙を突いて王女を連れ出すことを計画した。そして今、それが叶おうとしている。
「よしよし、上手く行っているようだな……」
そう独り言ちると、城壁にもたれて眠っている兵士から武器を奪い取る。そして騎兵のために備えてある軍馬を見つけるや、そちらに向かい先に王女を乗せる。その後、オレも飛び乗り、括りつけてあった縄を断ち切ると、馬は自由になり駆け出した。しかしその姿を目撃した兵士の一人が騒ぎ出す。
「新兵が馬を奪ったぞ! 脱走を許すな!」
今となってはどうでもいいことだが、脱走は軍法会議モノだった。そして脱走兵を捕まえた者には褒美が与えられる。オレの首欲しさに追われるのは厄介だ。とにかく多くの敵に気付かれないよう、この場を立ち去る必要がある。オレは急ぎ東門を出て、林の小道を目指した。しかし馬で逃亡を図ったため、悪目立ちが過ぎ、結果として敵を十数人引き連れてしまった。彼らはこちらに向け、射かけながら追って来る。
「ユウト、追手が迫っているぞ!」
「大丈夫です、ちゃんと手綱を握っていて下さい」
王女の背後に座っていたオレは半身の姿勢で飛来する弓矢を弾いていく。しかし敵のしつこい追撃にその姿勢での防御も限界を迎えた。遂に一矢を弾き損ねると、馬の右トモに突き刺さってしまった。
(……マズい!)
流れ矢を受けた馬は堪らず暴れ出し、二人を地面に振り落とした。オレは咄嗟に王女を庇う。
「王女様、大丈夫……ですか?」
「ああ、私は大丈夫だ……ユウト、お前は……」
「はい、なんとか……っ!」
突如として左腕に電撃が走った。王女を庇い着地した時に強打したらしく、その激痛に思わず顔が歪む。そして目の前に敵兵の姿を捉える。手負いのまま王女を守りつつ、敵兵と戦わなければならないという最悪の状況、この窮地をどう切り抜けるか、オレは柄を握る右手に力を込めた。




