絶体絶命
「オラ、オラ、オラッ!」
威勢よく振り下ろされる大剣を受け止めては次の攻撃に備える。形勢は明らかに悪く、防戦一方だ。さすが親方と対等に渡り合ってきた男だけあって、今までの敵と比べ物にならないくらい強い。オレはその猛攻を受け流しながら勝機を探るも、依然として心の中のわだかまりが溶けないままで、どうも戦いに集中出来ないでいた。
「ユウト、負けるなっ!」
マドレー王女の声援も虚しく、ジリジリと後退を余儀なくされる。そしてさっきの突き当たりまで下がってしまった。
「歯応えのないヤツだな……受けてばかりじゃ勝てないぞ!」
そんなことは分かっていた。しかしどうにもならない現状に、もどかしさが募るばかりだ。このままでは負けてしまう、そのことを頭の中では理解できていても、どこか他人事に思える自分がいた。
「……ジュー、バ……なのか……!?」
遠くから声が聞こえる。この切迫した場面になんだって言うんだ、オレは意に介さないふりをした。タッタッタッタッ――足音が近づいて来る。一瞬ではあったが、その音に気を取られてしまった。
「オラァ!」
カーンと金属のかち合う高い音が鳴り響くと、オレは手持ちの剣共々、通路に弾き飛ばされていた。
(しまった……!)
目の前には勝利を確信したかのように薄ら笑いを浮かべるグルーキー、その姿に事態の深刻さを悟る。オレはここで死んでしまうのか、まるで実感のない最期に現実を受け入れられない。だがその間にも一歩、また一歩と処刑人は歩み寄って来る。
(本当に殺されてしまうのか……?)
この期に及んでオレはまだ半信半疑だった。死ぬ間際に過ぎるという走馬灯だって見えてはいない。ただ聞こえてくるのは得体の知れない足音だけだ。次第に大きくなるその音は走馬灯の蹄音か、不思議とオレの意識を捉えて離さなかった。
「もう終わりだ」
グルーキーはそう言い放つと大剣を振りかぶる。
「ユウトー!」
王女の悲鳴が轟く。オレは思わず目を閉じた。絶体絶命の状況にあって、何の抵抗も出来ずに情けない限りだ。しかし無情にもその時は迫る。
――グシャ――
「……うぅっ!」
腹部に衝撃が走る。それと時を同じくしてジワリと滲む血だまり、大剣から滴る鮮血を目撃した。そして生温かな血肉に触れてもなお、オレはその意味を理解できなかった――。




