調整役
オレたちは兄貴から最終作戦を受け取ると、皆の待つ根拠地へ飛ぶように駆け戻った。夜の深い闇に紛れた強行軍、到着する頃には東の空が曙色に染まっていた。村に入ると出迎えてくれたモライザ、パットンに馬を引き渡して、オレは一路、集会所に向かった。この三日間で蓄積した疲労はすでに暴発寸前で、今にも倒れそうだった。何かに取り憑かれたようにふらふらと集会所に入るや、そのまま寝入ってしまった。
『その作戦には全員の団結が不可欠、だから……』
『お前が皆を上手くまとめるんだ、頼むぞ!』
夢の中で聞こえたその声にハッと目が覚めた。窓から差し込む橙に夕暮れを悟る。
「少し寝過ぎたか……?」
頭を掻きながら重い身体を起こす。まだ気怠さが抜けない。何かやらなければならないことがある、頭の片隅でそう思いつつ、しばらくぼんやりしていると、
「デッドリーの兄貴! 起きてたんですか!」
唐突に入口の方からモライザの声がした。パットンも一緒らしい。
「ああ、いま起きた……」
相変わらずテンションは低い。欲を言えばこのまま夜まで寝ていたい。しかし次の言葉によって、心身ともに叩き起こされる。
「作戦の続きを皆知りたがっています!」
「今から集会所に集めて発表しますか?」
作戦の続き――オレは咄嗟に青ざめる。これからそれを皆の前で発表する必要がある。それだけなら何のことはない、問題は内容である。ご存知の通り、前の作戦では各人の意見が対立してしまい、心を一つに協力し合うことが出来なかった。しかし今回は兄貴に「全員の団結」を要求された。加えて「皆を上手くまとめる」こともしなければならない。目下の難題に対処するにはしばしの時間が必要だと判断し、
「ちょっと待ってろ、その時まで一人にしてくれ」
そう言い放ち、二人を追い払う。
(さて、どうするかな……)
受け取った書簡を目の当たりにし、まだ中身を確認していないことに気付く。オレは慎重にそれを開くと、
「おお……」
流石はオレたちの兄貴だ、理にかなった素晴らしい作戦に思わず感嘆の声を上げる。そしてそれを読んで納得した。兄貴の言った通り、戦術面において高度な連携と実行力を要求する作戦であることは間違いない。しかしその根底になくてはならないのが「全員の団結」だ。皆の賛同を得た上で、目的に向かってどれだけ心を一つに出来るか、オレはその調整役を任せられてしまった。だからこれから皆の前で話す言葉は作戦の趨勢を左右するものになる。この役回りはかなり難しい。そしてその書面を読み進めると、最後に作戦とは関係のない文言が記されていた。
(これは……)
思わず目頭が熱くなる。作戦には直接関係のないことであったが、兄貴は重要なことを書き伝えてくれた。この内容を以ってすれば皆をまとめられるだろう、オレは心の中で何度も繰り返しながら、さっきの二人を呼び寄せた。
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