表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アンチ転生論  作者: 金王丸
60/85

難題


 あれから中々解放されず、気付けば夕方になっていた。オレは急いで宿舎に戻る。やがてその扉の前に至り、ふと思う。オレは昨日からまる一日牢屋に囚われていた。見方を変えれば姿を消していたということになる。同僚に対しその事情をどう説明するべきか、全く考えていなかった。上手く言い包める術を探して、しばらくその場に立ち止まっていると、


 「バルジュー? バルジューなのかい?」

 

 唐突に声を掛けられる。


 「ロイ……」


 振り返るとそこにはロイがいた。心配そうな面持ちでこちらを見つめている。


 「一体どこで何をしていたんだい? 分隊長に聞いても教えてくれなかったし……」


 やはり気になってしまうようだ。しかし正直に答えてもいいことなのか、判断に迷う。


 「聞かない方がいいのか……?」


 少し考えた後、オレは誤魔化すことにした。


 「色々あってな……詳しいことは言えないんだ……」

 「そうか……ごめん……」


 互いに沈黙し、微妙な空気が流れる。このままではまずい、話を逸らさないと、そう思い、話を変える。


 「そう言えば警備の仕事は……?」

 「ああ、気にしなくていいよ! 今朝は立て込んでいたけど、大丈夫だった」

 「今晩は休んでいてくれ、オレが一人で行く」

 「ええっ、気を遣わないでくれよ」

 「いや、このままじゃ悪いから……」


 そうやってしばらく押し問答が続いた後、


 「そこまで言うのなら……」


 こうしてオレは一人で警備をすることになった。



 日が暮れ、夕食を終えると、オレは北門へと向かう。一日ぶりの警備はそれ以上のブランクを感じさせた。どうしてもついて来ようとするロイを言いなだめて、一人松明を持ち暗闇に入って行く。何もないだろうと心の中では思いながらも、その不気味な雰囲気に歩みが自然と早くなる。


 (何も起こらないでくれよ……)


半ば祈るような気持ちで東門の方に向かっていると、突然背中に何か当たるのを感じた。


 (気のせいだろう……)


 一瞬立ち止まったが、そう思うに留めて再び歩き出すと、バシッ、次ははっきりと分かるレベルで何かを当てられた。


 (誰か……いる……!)


 何者かの存在を確信に近い形で認める。一人で回っている時に限って……間の悪さに辟易とした。しかしこうなった以上、その正体を突き止めなければならない。オレは意を決して振り返る。


 「だっ、誰だっ!」


 上擦ったような声で威嚇し、そちらに松明の明かりを向ける。すると見覚えのある赤髪が照らし出された。


 「兄貴! オレですよ、オレ!」

 「デッドリーか? どうしてここに……?」


 ある種の驚きはあったが、ひとまず何事もなく、ホッと胸を撫で下ろした。


 「それより親方は……親方はどうなりましたか!?」


 その問いかけに虚を突かれる思いになる。親方はこの世にもういない、その事実を改めて突き付けられた。オレは軽く俯き加減になると、首を横に振った。


 「そんな……」


 途端に言葉を失う。


 「……最期まで立派だったぞ」


 在りし日の姿を思い浮かべ、意図せず涙腺が緩みそうになる。そして自問する。オレはあのように自分を貫き通すことが出来るだろうか、いや出来ない。しかしあの出来事によってオレの死生観は大きく変わった。死に際にこそ、その人間の度量がはっきりと表れる。親方は立派だった、オレは果たして――。


 「デッドリー、落ち着いてくれ」


 目の前で涙を拭う赤髪をなだめる。その一方で冷静な自分もいた。立場上、あまり長居は出来ない――そう考えると心苦しくはあったが、早く用件を聞き出さなければならない。


 「どうしてここに?」

 「親方が……次の作戦を……兄貴に……」


 (……どういうことだ……?)


 オレは軽く混乱した。次の作戦など知る由もなかったからだ。


 「……ということは次の作戦を聞きに来たと?」


 赤髪は深く頷く。


 (そんなこと、一言も聞いていないぞ……)


 ここに来て親方の真意を図りかねた。重要な作戦を丸投げするなんて無茶ぶりが過ぎる、オレは少し眉をしかめた。ただ無用な動揺を与えないように、知ったような体で話を合わせた。


 「作戦か……確かに預かっている」

 「しかし今は持ち合わせていないんだ」

 「だから明日の晩にまた来てくれ。そこで渡すから」


 その言葉を最後にオレたちは解散した。最終作戦の立案、タイムリミットは明日の晩、突然降ってかかった無理難題に立ち向かわなければならない。オレは警備の仕事を忘れて、周りには目もくれずに帰路を急いだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ