勇者の条件
《前回までのあらすじ》
王都・テンエイに辿り着いた主人公・高橋勇翔は立ち寄った武器屋で偶然にも「異形」を見つけ、後を追う。そして手持ちの銃で攻勢に出るも……。
「あれっ、あれっあれっ……」
何度引き金を引いても弾は出ない。
(まさか……不発……?)
「お前……何してるんだ! すぐにここを立ち去れ!」
「異形」の内の一体がこもったような大声でオレに指図する。
「ひっ、引き下がるものかっ!」
オレは叫び声を上げながら、「異形」に襲い掛かる。弾が出ないなら銃身で殴りつけるまでだ。
「うおぉぉぉぉぉ!」
執念の突撃を敢行した。だがひらりと交わされると、その次の瞬間、首元に衝撃が走った。いつの間にかオレは床に叩きつけられた。
「いい加減にしろ! ちょっと来い!」
そう言われると、引きずり出されるように外へ連れ出される。
「おい、お前! ここがどこだか分かってんのか?」
さっきより声が通っている。気付くと「異形」は人間の顔をしていた。
「いっ、異形! お前たち、人間に何をしたっ!」
相も変わらず、声が震えていた。
「……異形?」
顔貌に立派な髭をたくわえている男は目を丸くして言う。
「異形って……お前の方がよっぽど変な格好だと思うぞ」
「そしてなんだその物騒なモノは。お前、まさか追剥ぎか?」
「ちっ、違う! オレはこの世界を救う勇者になる男だっ!」
一瞬の沈黙の後、高笑いに笑われた。
「お前、面白いヤツだな! 医者を殺してどうするんだ、ガッハッハッ!」
オレはきょとんしてしまった。
(……医者……?)
「この世は人間の天下だぞ! 抹殺して勇者になれるものなんて――」
男は少し真顔になって言う。
「『死神』、だけだろうな……」
「それってどういう……」
「おい、誰かこいつを保安所に連れて行けっ!」
「ち、ちょっと待て! 話はまだ……」
別の「異形」が近づいてきた。そして首根っこを掴まれる。
「ほら、行くぞ!」
「やめろっ、離せっ! 『死神』って、『死神』ってなんなんだよ~!」
非力なオレの抵抗も虚しく、ずるずると引きずられていく。そして遂に、オレは「保安所」なる場所に連れて行かれてしまった――。
*マスケット銃…この時代の一般的な銃。(イメージとしては火縄銃に近い)内部構造に特徴があり、銃身にライフリング構造(螺旋状の溝、弾軸の安定に不可欠な要素)がなされていないため、命中率は芳しくなかった。(だからもし主人公が発砲出来ていても、それが当たったかどうかは分からない。もし当たっていたら……大変なことになっていたに違いない。彼の無鉄砲さには呆れるばかりである。)




