決意の朝
朝霧に包まれた草原に幾十人の男たちが集まった。そこにいるのは皆、親方や三人組の呼びかけに応じた者どもで、一様にやる気をみなぎらせていた。オレは集まった人の数にも目を見張ったが、昨日の今日でこれだけの頭数を揃えることの出来る四名の人望に驚愕した。それに比べてオレはどうだ。自分の準備は出来たが、全体のそれには全く寄与出来ていなかった。その差を見せつけられたような気分になり、自嘲的にもなる。
「よし、全員揃ったな。おい、ちょっと聞いてくれ」
親方は皆を見渡すと、一同に向かって話し始めた。
「まずこうして集まってくれたことに感謝する!」
「オレはいま真の愛国者を目の前にして感動している!」
すると全体から歓声が起きる。集団のボルテージが上がっていくのを実感する。
「我々はこれから王女様奪還のため、南部の都市・バーンスタインを目指す」
「国境近くまで平野部を進み、それから山間部に入る」
「目的地までおよそ五日間、辛い旅程にはなるが、どうかついて来て欲しい」
「本作戦完遂の後、諸君らにはそれ相応の報酬を約束する」
「合言葉は『貴女のために』、野郎ども! やってやるぞ~!」
「「「お~!!!」」」
その場のテンションは最高潮、士気は見る見るうちに高まっていく。そしてオレは思う。先頭に立つ勇気と人を惹きつける魅力、それらを併せ持って初めて、人の上に立てるのだと。親方にはそれがある。だからオレもついて行く。
「ゴスホークさん」
見送りに来たベルガが声を掛ける。
「バーンスタインまでご一緒できずに申し訳ありません」
その表情は居た堪れなさに満ちている。
「仕方のないことさ、王子の命令とあらば従う他、あるまい」
そう言ってベルガに理解を示す。
「その代わりと言ってはなんですが……援軍を派遣できるよう王子を説得してみせます」
親方は深く頷く。すると次の瞬間、ベルガは握手を求めて右手を差し出す。
「柄にもないことしやがって……そういうのは調子が狂うからなしだ」
照れ笑いを浮かべながら、やんわりとそれを拒む。
「この作戦が成功に終わる時まで、その右手はしまっといてくれ」
恥ずかしそうにそう言うと、ベルガに背を向け、剣を突き上げる。そして叫ぶように言い放つ。
「野郎ども! 出発だ! オレに続け~!」
「「「お~!!!」」」
男たちの集団は親方を先頭に動き出した。
「ユウト!」
突然背後から呼び掛けられる。
「ゴスホークさんのこと、くれぐれも頼んだぞ」
「……分かった」
ベルガは先ほどと同様に手を差し伸べてきた。オレはその右手を固く握り返す。そして南に向け、歩き出した。王女を救う旅がいま、始まった――。




