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アンチ転生論  作者: 金王丸
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再会

《前回までのあらすじ》

運命のボタンの掛け違いから奴隷をして囚われの身になった主人公・ユウトは奴隷市を通り過ぎた王女・王女ディアドラ=マドレーに買われることとなった。今話はその続きです。


 「……よいしょ!」


 あれから一週間が過ぎた。オレはいま、森の中にいる。斧を振り下ろしては薪を割る。延々と続く単純作業、慣れない肉体労働を辛く思う気持ちもあるが、あのまま地下牢で鉄球につながれているよりはずっとましである。


 「よし! ユウト、休憩だっ!」


 そう言って水を差し出すのはゴスホーク親方、王宮におけるオレの上司だ。


 「ありがとうございます!」


 それを受け取ると、一気に飲み干す。


 「かぁ~! 旨いっ!」


 重労働の後に飲む水は格別に美味しい。生き返る思いがする。うん、うん、親方はオレを方を見ながら笑みを絶やさない。そして木陰に居座り、しばらくの休息を取った後、


 「さて、王宮へ帰るぞ! 薪を背負え!」


 親方からの声が掛かる。大量の薪を背負っての下り道、転ばないように転ばないようにと足運びに慎重を期しながら歩いて行った。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 小一時間歩いた後、王宮に戻って来た。その壮麗な様はいつ見ても圧倒される。これを眺める度に王女様のことをいつも思う。あの一件以来、オレは彼女と一度も会話していない。時たま遠くにその姿を見つけることはあるが、接触するまでには至らない。厳重に警備された門をくぐり、しばらく歩くと、オレの持ち場である馬屋の前に着いた。


 「よし、これから馬屋の掃除だ! オレはちょいと用事があるからここを抜けなきゃなんねえが、しっかりやるんだぞ!」

 「サボってたら……承知しないからなっ!」


 親方は殴らんとばかりに握り拳を見せた後、その場を去った。あの太い腕に殴られたら一溜りもない。


 (しっかりやらないと……)


 そう思い、馬屋の掃除に精を出す。生来掃除と言うモノはを苦手にしていたオレだが、ここだけは丁寧にやる。それほどまでに親方の鉄拳制裁を恐れていた。


――ガサゴソ、ガサゴソ――


 (藁の山が動いた……?)


 オレは見逃さなかった。いま確かに藁が動いた。それも不自然な動き方、風は吹いていない。


 (誰か……そこにいる……?)


 恐る恐る近づく。


 「お、おい! 誰だ! 出で来い!」


 恐怖に足がすくむ。得体の知れないモンスターだったらどうしよう、そのことばかり心配する。ジリジリと歩み寄る。手には箒を持っていた。


 (これでなんとか戦える……のか……?)


 覚悟を決めた。オレはこの箒で戦う。そして箒を振り上げたその時、藁が立ち上がる。


 「遅かったな、私だ」

 「うわぁぁぁぁ!」


 オレは驚きのあまり、腰を抜かす。目の前にはあの人、王女様の姿があった。しかしどういったことか、全身に藁を纏い、イヤにみすぼらしい格好をしていた。


 「その驚き様、私はお化けか何かか?」


 そう言って軽やかに笑っている。彼女の笑顔を初めて目の当たりにした。


 「どっ、どっ、どっ、どうされたのですか……?」


 依然として驚きが冷めやらず、妙な敬語になる。


 「未来人さんよ、この前の話、聞かせてくれないか?」


 彼女は地べたに胡坐をかく。オレは恐る恐る口を開く。


 「あ、あの……未来では……その……」


 彼女は目を閉じて聞き入っていた。オレは続ける。


 「階級の上下が……なくなります。そして法的には……人間誰しもが……平等であるということになりました」


 「ほう……それでそれはどのようにして達成されたのか?」


 一瞬口ごもる。顔が引きつる。


 (言っていいことなのか……)


 法の下の平等、そしてそれを様々にかき集めた人権は貴族階級と市民階級の闘争の中で認められるようになった市民の権利だ。その過程は非常に血生臭く、その結果は彼女、つまり貴族階級には受け入れがたいものであった。だから言っていいことなのかどうか――。


 だが彼女はその様子を察したのか、


 「構わない……続けろ」


 オレは嘘をつくことにした。嘘も方便、この場を切り抜けるためにはこうするしかない。


 「それは……話し合いの中で決まりました。貴族も民衆も奴隷も何もかも集めて……みんなで話し合ったのです」


 「民衆と話し合い……ねえ」


 「民衆が一枚岩となって我々と話し合いをするのか?」


 静かな口調で呆れたように言い放つ。


 「……はい」


 気のない返事を聞き終わらないところで、彼女は立ち上がる。


 「お前、名を何と言う?」


 オレは相変わらず座ったままで答える。


 「オレは……勇翔、高橋勇翔と言います」

 「ユウト、私の名はマドレ―、この国の王女だ」


 腰に手を当て、見下ろすような格好、その目つき、その堂々たる振る舞いを目の当たりにして、オレは思わず心を奪われてしまった。後光が差すかのごときその姿に生まれながらの支配者のDNAを感じざるを得ない。


 「さあ立て、そしてついて来い。面白いモノを見せてやる」


 そう言うと彼女は歩き出す。オレは戸惑いながらも、彼女の後を追った――。



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