吸血鬼退治7
洞窟内の空気は冷えていて、息をするだけで肺の中の空気が澄んでくる。
「どうやら、きちんといるようですね。結界も機能しているようですよ」
グリースが僕にそう告げる。僕にもそれくらいは理解できる。仮にもこの結界を張った張本人なわけだしね。
「吸血鬼はどのあたりにいるかわかる?」
「…恐らくはこの洞窟の奥に。ここから進んで行った方向から小さくうめき声が聞こえます」
グリースの言葉から僕も耳を澄ませてみるが、残念ながらうめき声なんてものは聞こえず。せいぜい水の滴る音と空気が流れる音が聞こえる程度だ。
「了解、用心は怠らないように進んでいこう」
僕とグリース、慎重に慎重を重ねてゆっくりと洞窟を進んでいく。
「どうやらこのすぐ先ですね」
グリースが額に汗をにじませて囁いた。
この先からは僕でも聞こえてくるほどにはっきりとうめき声が聞こえてくる。声からしてそう年を重ねていない少女がうめくような声が聞こえるが、相手は吸血鬼だ。見た目で齢や力量を判断するのは危険だろう。
「いくよ」
うめく吸血鬼のもとに足を踏み出そうとしたその瞬間、足元に何かが触れる感覚を感じ取った。
以前にも、いや、つい最近感じたこの感覚。無数の毛が足首を撫でる。
まさかと思い恐る恐る目を向けてみる。そこには案の定――――
「なんで、ここにいるのさ・・・」
僕の足元には毛玉がまとわりついていた。
確かに兵士に任せてきたのに、しかもあの場にはアルズもいたはずだよね。
そういえばこの毛玉、預けたはずの研究施設からも脱走してきたんだったっけ。もしかしたらこの毛玉、脱走の名人なのかもしれない。
「・・・仕方ありません、このまま連れていきましょう」
即座にグリースが決断する。
「大丈夫かな、無駄に危険にさらしたくはないんだけど…」
「それには僕も同意しますが、この毛玉のために吸血鬼討伐の最大のチャンスを逃すわけにもいきません。それに、下手に一匹だけで置いておくよりは僕たちと行動したほうがまだ安全でしょうしね」
「尤もだね。じゃあ毛玉は僕が運ぶとするよ」
僕のわがままで毛玉を連れていくことになったわけだし、僕が責任をもって守ってあげないとね。
「いいえ、毛玉は僕が持っていきます。前衛のリアンの両手がふさがるのは何があっても避けたいですし」
・・・その通りで。
さすがに今の僕の発言は浅はかさが過ぎていた。
「ごめん、迷惑をかけるね」
「かまいません。目の前で死なれても嫌ですしね」
グリースは表情もなく毛玉を抱きかかえ歩き始めた。




