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墓荒し達の宴  作者: 二鈴
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バカのあつまり踊らにゃ損

 「ウェルフ、急げぇ!! このままじゃ、やばい!!」

 「うるせぇ馬鹿! 急かすな! てめぇの仕事はそこの大量のお友達の握手会をさっさと拒否ることだ! いいな!?」


 怒号を響かせながら、男二人組の片割れ、ウェルフは焦っていた。

 こんなことであれば、もう少し金を払って、いい女でも、美味い飯でも喰うべきだったと心底後悔しているところだった。

 B級の遺跡へと潜り、お目当てのモノを見つけたまでは良かったが、その後が最悪だった。

 遺跡には防衛システムというものが、当然のごとく用意されている。

 基本的には、人数に対して作動するものが多く――どうしてそうしたのかはさっぱり理解出来ないが――6人より多い人数でいくと徐々に防衛システムによる攻撃が熾烈になる。

 以上の理由から、遺跡へと潜る人数は6人と決められており、大人数で潜ることはない。

 もう一つ、加えるとするならば、遺跡は当然無法地帯であり、入る以上は中でどうなっても構わないということもある。

 だからこそ、ウェルフは今現在、必死に握手を断る相棒のベッテンと二人だけでコンビを組み、遺跡の最深部まで到達できたのだが――。


 「――クソ、クソ、クソ!! そりゃこっちが泥棒だから悪いがよぉ! そんなに押し寄せなくてもいいだろうがクソ!」

 「あーもう今すぐこちら糞まみれの手できたねーから握手やめようって伝えたい。伝わって欲しいぞコンチクショウ!!」


 アリの列のように、途切れずに進んでくる機兵の群れに対して、愚痴をこぼす。

 今まで、最深部の宝物を取ったとしても、このようなパーティ(機兵の大量発生)が起こる事は無かった。

 ベッテンが銃撃を繰り返す音を聞きながら、ウェルフは閉じられた扉を開けようと、自らの腕――機兵によってもぎ取られた腕の代わりに付けられた義手を使用して、遺跡内のシステムへとハックを仕掛けている。

 どういう仕組みになっているかは自分の頭では到底理解できないが、パスワードのようなものが、全てパズルになっている。

 それを組み合わせていけば、勝手にハックが成功し、ドアや宝物庫のロックを解除できるのだが、今回のものは特に複雑で、時間がかかっていた。

 普段ならば、鼻歌交じりに、頭の運動よろしく、ソーダとともにそれを楽しむところだが、今はそれどころではない。

 ベッテンといえど、どうしても何体かの攻撃は防げずチュイン、という甲高い音が耳元を通り抜けた。


 「おい、馬鹿ベッテン!! こっちに撃たせるんじゃねーぞ!!」

 「うるせえ! だったらさっさと急げってんだろうが! こちとら1人で熱烈な歓迎捌いてんだぞ!?」


 機兵――文字通りの機械の兵隊共が、絶えることなく湧き出てくる。ベッテンでなければ、今頃捌ききれず、とうに二人揃って穴あきチーズにされているところだ。

 群れを為して異物を排除しようとする機兵を相手に、宝物――アーティファクトである銃を使用して、こちらへと近づけまいとしているが、いかんせん数が違いすぎる。

 

 「おい! いくら俺の弾が無限とはいえ、これじゃあさすがにやべえぞ!?」

 

 ベッテンが騒ぐ声にうんざりとしつつ、ようやく最後のピースをつなげ合わせる。

 同時に、今まで閉じていたはずの扉が、勢いよく開かれる。


 「オラァ!! どうだぁベッテン!! 俺の実力を――」

 「――ああ、最高だな、新しいお客様も含めてな」


 大地が揺れる音を轟かせながら、機械音が響き渡る。


 「……ああーそういうパターン? ガーディアン、きちゃった?」

 「こんなに暴れて、来ないわけがねえよな」


 二人揃って顔を見合わせる。扉は開かれた。お友達たちも、ガーディアンが来たためか、巻き込まれないように離れている。

 ガーディアン――守護者の名に恥じぬ力を持つ、遺跡の上位者がやってくる。

 今の状態ではどうあがいても勝てる相手ではない。まかり間違っても、正面から相対するなど、愚の骨頂もいいところだ。

 ならばどうするか。

 ウェルフはベッテンと顔を見合わせる。ベッテンの顔が何を言いたいかは、すぐに理解できた。

 こんな状況であれば、二人で共に力を合わせて戦うほかない。そう、二人で力を合わせて――


 「撤退だよぉおおおおお!!」

 「やってられるか、畜生!!」


 ウェルフが叫ぶのと同時に共に走り出す。勝てるわけがない戦いに挑むつもりなど毛頭ない。

 鉄巨人の名にふさわしい守護者が、そのままこちらへと歩きだしてきた。

 鈍重な見た目だが、その図体の大きさにより着実に距離を詰めてくる。しかし、こちらの方が扉を出る速度は速い。

 これならば、余裕をもって撤退できるはずだ。

 時折聞こえる銃撃音を無視して走る。全力で駆け抜ける。


 「どうだ、馬鹿野郎!!」

 「おら、俺達の勝ちだバーカ!!」


 にやけながら、二人で侵入した場所まで走りだす。

 ここまでなら、もう追ってこれない。馬鹿めと内心で思いつつ、振り返る。

 鉄巨人が、いつの間にか、腕を前に構えていた。同時に、手のひらに穴が空いて、青白い光が輝きだす。

 よくみたことのある光だ。そう、あれはウェルフが初めて遺跡へと踏み入れトラウマになりかけた、アーティファクトによる破壊を引き起こすエネルギーキャノンだ。

 そこまで察して、ウェルフは隣にいるベッテンに叫んだ。ベッテンの叫び声も聞こえた。

 絶叫する内容は、ただ1つ。

 

 「池に飛び込めぇ!!」


 遺跡のガラスをぶち破り、池へと一直線へ落下する。ほぼ同時に、閃光が二人の頭の上を駆け抜けた。

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