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幼なじみとセクシーサンタ

 11月の終わり頃、毎年近くの幼稚園で演じられる『ソリに酔ったサンディークロース』の配役をクラスで決めることになった。

 主演のサンティークロース役の立候補を募った際、ミウが真っ先に手を上げた。

それに動揺したのは、ミウの隣に座っていた、毎年その役を演じているベテランだった。意表を突かれて椅子から滑り落ちて大きな音がクラスに響いた。もしかしたら、下の階の教室にまで騒音が漏れたかもしれない。

「ぼ、ぼくがサンディークロース役をやるのが、決まりだろ!」

 大きな腹を震わせ、その男の子は動揺を見せる。

 暗黙のルールなど決まっていなかったが、体格だけ見れば、その男の子はサンタに適任だといわざるをえないだろう。しかし、ッミウは、腰を抜かして立ちあがれもしない巨漢を見下ろし「決まりはないよ」と微笑みを浮かべた。

「だいたい女のサンタなんてありえない!」

「昭和的な発想ね。サンタの世界だって女性の社会進出が浸透してるわよ。きめ細かな配達、何より美女がプレゼントを持ってきてくれる方が喜ばれるでしょ?」

「たしかにそれはそうだけど……」

 美女サンタを想像して、怯んだところにすかさずミウが追撃を食らわす。

「それに君、去年に比べて何キロ太った? ソリを引く人もちょっと大変なんじゃないのかなぁ。そのおなか」

「失礼な。ソリを引くトナカイ役は、代々野球部が担当しているんだ。僕くらいの体重屁でもない」

 この言葉に野球部が一斉にブーイングしだした。彼らも普段からブーイングされ慣れているせいか、一言一言が男の子の腹に突き刺さるほど辛辣だ。クラスの雰囲気が一気に変わり、ミウが優勢になる。

 男の子は呻きながらも「じゃあ、どっちがサンディークロースらしいか。勝負しようじゃないか。日本は民主主義な国家だろ。ちゃんと投票で決めようぜ」

「いいわ! その勝負受けて立つ!」



 僕はアマゾンでミウに似合うコスチュームを注文した。




「オイオイ、もうひとりのサンタは試合放棄か。やきゅーぶが泣いて喜ぶぜ。冬場のトレーニングにはちょうどいいからなぁ」

 ミウのライバルは、去年のお古を来て教壇に立った。

使い込まれた衣装。その赤はどこか落ち着いていて、安心感と暖かさを見る人に植えつけるようだった。そして、長い白ひげで顔の下を隠した姿は、まさにサンタクロースそのものである。ただ、その発言は皮肉が過ぎていて、今日ばかりは悪のサンタとして、クラス中に不快感をプレゼントしまくっている。ミウの登場を楽しみに待つ野球部員など、あまりの怒りで刃が折れるほど奥歯をかんで、歯ぎしりをしていた。

 僕は教室のドアの前に立って、ミウを手招きした。

「雰囲気ヤバイから、早く入ってよ」

 しかし、ミウは廊下の柱の陰に身を潜めたまま、出てこようとしない。

 仕方なく覗きこんで見ると、ミウは生足をさすりながら、顔を真赤にしていた。

「こ、こここれで、みんなの前に出ろっていうの?」

「似合ってる、と思うよ」

 照れくさかったが、ぼくは正直に応えた。

「そう言う問題じゃないって、どこで買ったらこんな恥ずかしいサンタ服を――」

 ミウは短パンを下に引っ張って、太ももを隠そうと必至だったが、残念ながら伸縮性のある生地ではない。その努力は無駄でしかなかった。

 もじもじと恥ずかしそうに時間を消費していると、クラスメイトが何人も教室から顔を出して大きな声を出した。

「おい! ミウはやくしろよ!」

「どっちがサンタにふさわしいか決めるんだろ!? 格の違い見せつけてやれ!」

 沸点を越えた野球部の怒りは、ミウにまで向けられ乱闘寸前の険悪なムードが漂い始める。

 僕はミウを諭すように、

「大丈夫、男子票は確実に入る!」

 と言った瞬間、僕はほっぺたを張り飛ばされ、ミウは絶叫した。

「そんなことはわかってるわよ! も~!」

 そして葛藤に耐え切れず地団駄踏んだ後、ミウは闘牛のように全速力で走りだし教室に飛び込んだ。

 その後には、割れんばかりの歓声が轟き、廊下の窓ガラスまでびんびんと音を立てて震えた。黄色い声や、口笛、ミウコール。僕は廊下に突っ伏しながら、ミウが主演を演じるだろうと確信をした。

「へへ、ミウの『ソリに酔ったサンディークロース』楽しみだな」

 ビンタされたほっぺたが熱かったが、それ以上にミウが主演を演じることのほうが熱く感じられた。

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