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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

エルフイェーガー

作者: 黒鷹商会

遅ればせながら遊森謡子様企画の「武器っちょ企画」への参加作品です。

お手柔らかにお願いします。参加条件は以下の通り。

●短編であること

●ジャンル『ファンタジー』

●テーマ『マニアックな武器 or 武器のマニアックな使い方』

【樹木の墓場】そう呼ぶのに相応しい光景が目の前に広がっていた。



かつては多数の樹木が生い茂っていた森だったのだろうが、今ではポツン、ポツンとまばらに生えている焼け爛れた木々からしかうかがえない。



まばらに残った焼け爛れた木々も幹も枝も葉も何もかも全て焼けて失い白い墓標のように立っている。



地上には炭化した“ナニカ”がそこかしこに横たわっている。元が何だったのか見当もつかない。



灰が雪のように降り積もり“ソレ”を覆い隠そうかとしているようだ。



魔法・砲撃・爆撃などありとあらゆる攻撃の業火により、何度も何度も、繰り返し繰り返し、炎で炙られ、何もかも生きとし生きるモノ、燃えるモノ全てを焼き尽くされた場所だ。



樹林にはその生命特有の香りなど何処にも無い。そして死臭も無い。あるのは灰の匂いと木の焼けた匂い。



【木々の死臭】と呼ぶべきか?私はフードの下、顔を覆った布の中で顔を顰めた。



(全く。どんだけゲリラ戦が嫌いなんだよ。森丸ごと1つ焼き尽くすか、普通)



種族は違えどエルフはエルフだ。自然の恵みを分けて貰って日々、生活して生きられると云う事を生まれた時、いや、生まれる以前から遺伝子レベルで刻まれいる。



《砂漠の民》であるダークエルフだが、ダークだの何だの自分で言い、他人からも言われながらもエルフはエルフ。



何だかんだでやっぱり森には特別な気持ちがあるのだ。森は一心同体、自分の一部なのだ。



だが【樹木の墓場】でしかないこの場所には【死】以外の何物も無い存在。

そんな景色が闇夜の中、広がっていた。



細かい灰が風に乗って舞うなか1人でそんな思いつつ、1つ集団へ目を向けていた。



樹木の墓場の中を軍は黙々と足を進めている。その姿は無残の一言だ。



馬も無く、纏った服は半ばボロボロ、顔は埃や灰で汚れてた寄せ集め敗残兵の一群。



先の会戦で敵の攻勢に防衛線を破られ、敵の追撃を逃れて遥か後方の味方の防衛線まで絶賛☆退却中の味方の集団だ。



その姿は焼けて白くなった墓標のような木々と闇夜でまるで幽鬼の集団のようだった。



暗闇のノロノロとした歩みを進める中、幾人か兵士、主に耳の良い獣人などが闇の中に何かの音を聞きつけて歩みを止めた。



そして音が徐々に大きくなり“ソレ”が何か分かった瞬間、大声で叫んだ。



「敵機だ!」



「敵機来襲!隠れろ!!」



複数の兵達の声が飛び交った。敵が敗走する集団を更に叩くべく来襲したのだ。



「散開しろ!急げ!」



「そこの岩陰に伏せろ!」



「剣しかないのにアイツ等に太刀打ち出来無いぞ!どうするんだ?!」



「いいから隠れろ!見つかった嬲り殺しにあうぞ!」



<敵機>の言葉にいち早く反応して各自、闇夜の森の中を駆け抜けて思い思


いの場所に隠れる。



そんな姿を遠くから眺めていた私は肩に担いでいた弓を下ろし、静かに構えた。狩り(ミッション)の時間だ。





【魔法複合弓】

複数の魔法素材を張り合わせる事で射程と破壊力を向上させた複合弓。

威力や射程はは大砲並。正し弓を射るのには魔力を使う。射撃のセンスと魔力を買われてコイツを与えられた。





闇の中、焼け尽くされた森の上空に光が幾つも弾ける。多数の吊光弾が投下されて光が降り注いだ。



吊光弾の光の中、敵機が一斉に機体を翻す姿がよく見えた。



金属で作られたエンジン。布と木で作られた胴体。2対の翼。



飛行機(エアプレーン)

人類連合がワイバーンやロック鳥など飛行騎獣に変わり戦争に投入し始めた鋼鉄の鳥。



速度や火力などまだまだワイバーンには及ばないが何せ数がある。コイツのお陰で戦場の制空権が取られっぱなしだ。



「コイツが居ると云う事は飛行艦も近くにいるな。まぁ、出張って来るまでに落として撤収するか・・・」



そう言いつつ矢をつがえる。肩眼鏡(モノクル)には敵機が闇の中でもよく見え、更にパイロットの姿までもよく見える。全部で8機。中々の数だ。骨が折れる。



「精霊よ。どうか我が手と我が指に戦う力を与えたまえ」



敵の中の一機に標的に選び、引き絞った矢を放った。放たれた矢は敵機に命中し、黒煙を上げながら墜落して爆発。



矢継ぎ早に2機目に矢を射る。爆発。狙い通り胴体に吊り下げられた爆弾に命中したようだ。



狙い通りに命中したので胸の内でガッツポーズしながら身を隠していた場所から次の狙撃ポイントへと移動する。その際、通信魔法で全方に最大出力で通信をいれた。



「コチラ〈ゲシュペンスト・イェーガー〉ケツ持ちは任せろ!とっととケツまくって逃げろ!」







「1番機、被弾!落とされました」



「4番機、爆散!畜生!“インビジブル・イエーガー”だと!?誰だよダックハントとかちょろい任務とか言った奴は!」



「落ち着け!全機散開!怪しい所にありったけ鉛玉ブチ込め!仕留めたら勲章モノだ!」



「後席。魔法光とか見えたか?」



「こんな暗闇の中じゃ暗視ゴーグル使っても全く見えませんよ。機長、早くトンズらしましょうよ!」



「ゴチャゴチャ、言うな!母艦に現在地を送って辺り一面、吹き飛ばして貰え!」



そう言いながらも胸の内では毒付きまくっていた。通信が聞こえたがゲシュペンスト・イェーガー、幽霊猟兵だ、と。



最悪だ。最悪過ぎる相手だ。今すぐ撤退したい。が、そんな事したら後ろから矢が飛んでくる。



頭の中で何時か聞いた“戦場のお伽噺”を思い出す。




《例えどんなに隠れても、例えどんなに遠くにいても、決して彼等の矢からは逃れられない。彼等は闇夜の彼方からジャッジメントアロー(審判の矢)を射る者なり。気を付けろ。奴等は死の風音と共にやって来る》




最悪だ。最悪過ぎて泣きそうになる。まず、弓は銃とは違いマズルフラッシュ(発砲炎)が見えない。銃声(ガンファイヤ)も聞こえない。特にこんな闇夜では発見するのは100%困難。



しかも使う矢は魔法矢。術式により追尾魔法から爆散魔法までなんでもござれ。



特に魔弓兵、“ゲシュペンスト・イェーガー”は1km以上先からありとあらゆる手を使って標的を射殺す化け物スナイパー集団。



何でこんな化け物と遣り合わんと往かないのだよ!不幸過ぎる。目を凝らして闇の中の森を見つめていると遠くで爆炎が見えた。畜生!また殺れた!どこだ!奴は居やがる!







「・・・4機目」



残りは4機。他の機が見当違いの方向に銃撃と爆撃をする。もう一射。命中。黒煙を上げながらまた撃墜した。



残り3機。矢も残り少ない。そろそろ撤退をしようかと思案し始めた。と、砲声が聞こえ、幾つもの砲弾が着弾した。



「飛行艦のお出ましか。予想より早いな」




【飛行艦】

飛行機や戦車と並び人類連合が投入し始めた空中戦艦。

コイツは厄介だ。何せドラゴンでも呼んで来ない限り撃墜が難しい“動く城砦”

飛行甲板から飛行機が出撃して制空権を掌握し動く物があれば片っ端から攻撃し、陣地や砦があれば砲弾の雨霰でズタボロにされ、町や城の上空に来ると空挺兵が降下して制圧する。

我々、魔王軍からすれば厄介極まりない兵器だ。




サーチライトで周りを照らし周り、怪しい所には容赦無く砲弾が撃ち込まれる。スポットライトを浴びるとは人気者は辛いな。



愚痴りつつ、背中の矢筒から一本の矢を取り出す。



《対艦用魔法矢》対飛行艦用の魔法矢。威力・射程共に飛行船と戦り合うのは充分なのだが魔力を込めるのに時間が掛かる。



その間、矢に込める魔力の光が漏れて居場所が敵に居場所が露呈するのが玉に傷。



せめて飛行機は全機落としたかったが、その前に母艦に此方の位置がバレてしまう・・・一寸、危険だが、やるしかないか。



標的は飛行艦まで約10km先。射程はギリギリ。魔力のチャージ終了までは10秒。敵機の数は残り3機。さて、勝負所だな。



敵の弾が飛んで来なかった御の字だな。ああ、精霊様。今日も私に敵の弾に当たらないようにお願いします。


対艦用魔法矢を弓に構えつつ、魔力を込める為に集中する。魔光が漏れ出す。



飛行船が砲塔を光の方へと向け出し、残った3機が機体を翻してソチラに向かってくる。



魔光目掛けて各機の機首から機銃の火箭が伸びる。近くに立っていた焼けた木を捉えて引き裂かれ、吹き飛び、四散した。



敵の銃撃は更に連続する。後席の銃手も続けて銃撃。抱えていた爆弾も投下して着弾音と爆発音が連続する。



飛行母艦からも砲弾が続け様に撃ち込まれ、大地を抉り、土砂を舞い上げる。




(((殺ったか?!)))




砲撃 攻撃した飛行船の乗員も飛行機のパイロットも同じように思った。

パイロット達が確認の為に弾着地点の上空を旋回する。



集中砲火を浴びせた場所にはどデカイクレーターしか無かった。



周りも探索したが敵の姿も矢も飛んで来ないでの殺ったと判断してやっと全員が“ホッ”と一息、吐いた。



生き残った飛行機も燃料も弾薬も少なくなったので飛行母艦に次々と着艦して補給の間にパイロットは一休みする。残存兵の追撃は夜明け頃になるがその間、休める。



そんな気を抜いた矢先、光跡を描きながら一本の矢が飛翔。砲口の中に飛び込み内部で爆発。



砲塔内部の砲弾に引火して船体が真っ二つに折れ、飛行燃料や爆薬、艦載燃料に引火して爆散した。乗員達が一体何があったのか知らぬまま全員が天に召されたのだ。



「・・・・・・我ながら上手く言った」



緊張の糸を解きながら、口から言葉が漏れた。今居るのは地割れになっている場所の底。丁度、飛行船の下に当たる場所だ。



敵が執拗に攻撃したのは囮で置いたランタン。魔法で遠隔操作でも光を点けたり消したり出来る高価な代物だったが・・・絶対に補充申請してやる!(涙)



見えるなら見えない様にすればいい。丁度、地面に出来た裂け目の中に潜り込み、敵を確実に射つチャンスを待った。



敵がダミーに引っ掛かり、敵が気を抜いて母艦に帰途した所への一撃。裂け目で周りから光が漏れないポイントからのスナイプ。



名付けて<一石二鳥ホイホイ大作戦!>上手く云ったと通信札を取り出しながら連絡を取る。



「あ、もしもし。私ですが任務完了した。ハイ、ハイ・・・・・・補給地点で合流ですね。解りました。次の指令はそこで。あ、ランタン敵の攻撃で壊れたので支給のほうお願います・・・・・・・・・・・・えッ?給料から引く?そりゃないですよ!必要用経費でしょうが!?・・・あ、ちょっと切らないで下さい!」



通信札での連絡を終了した。給料からの天引きで気分はブルーだ。合流する補給地点は遠い。



戦争はまだまだ続く。この戦争、いつまでも続くのか。だが、祖国が戦い続ける限りは戦い続けよう。闇夜に向けて一歩を踏み出した。その姿は闇夜に消えていった。






人魔世界第一次大戦。ファンタジー世界版第一次世界大戦。魔王国と人類連合との会談中に魔王と首相が暗殺された事で勃発。

人間の国家連合の人類連合軍VS異種族連合の魔王軍との世界大戦。以後、10年に渡る戦乱が続いた。

【|ゲシュペンスト・イェーガー《幽霊狩人》】

エルフや獣人など弓に長けた種族の中から優秀な射手で構成されたスナイパー弓兵部隊。

全員が某ズドン巫女、某弓兵、ホワイト・フェザー、白い死神なみの腕前の人間ばかりが集めた超絶弓兵集団。

単独・2人で行動し、敵中深く潜り込み敵の指揮官の暗殺、撤退支援狙撃、超長距離狙撃など行う。

透明マントや望遠・暗視スコープ機能付きの片眼鏡(モノクル)など特殊装備とkm先からの長距離狙撃により1人で一個師団に相当。

敵から“幽霊狩人”と恐れられている。



【魔法複合弓】

複数の魔法素材を張り合わせる事で射程と破壊力を向上させた複合弓。

製作には特殊な魔法素材を熟練した職人が射手に合わせて作ったワンオフのオーダーメイド品。複合弓ごとに名前が付けられている。

複合弓を射るには射手はそれなりに魔力が込めないと射れず、また高い射撃スキルが居る為に魔法・射手双方のスキル(才能)がいる。

この両方の理由から生産数と射手数による複合弓の数は少ない。

使用する矢は魔法を込め、呪文が刻まれた魔矢。様々な魔法素材で作り、呪文を刻み、魔法を込めて専門の職人が製作する。

シャフト(矢の胴体の部分)に呪文を刻む事で射程や命中が上がる。

(矢尻)を変えることで複数の魔法を使う事ができ、矢羽が動きミサイルのように追尾できる。

矢尻やシャフトの部分の術式の組み合わせにとっては加護、回復、結界なども行う事が出来る。



【ダークエルフ】

エルフの一種。肌が黒いのが特徴。それ以外は他のエルフとほぼ同じ。

森にすみエルフとは違い砂漠に住む遊牧民族。宗教はエルフと同じく精霊信仰。

その為、普通のエルフのように排他的なコミュニティーではなく俗っぽくて友好的。そして若干、好戦的。

エルフと同じく弓に長けているが馬術・シャムシール(新月刀)にも長けているガチンコ戦闘民族。

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[一言] ランデル・オ−ランド「俺たち第901ATTの戦いは、こんな風に華々しく称賛されるものじゃないんですけどね」 前に見たときは分かりませんがパンプキンシザ−スの影響がありますね。 戦争ものなら…
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