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我が神を求め  作者: 影絵企鵝
十五章 心を描いて
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起段 仲間で終わらない

Eventful Item 

 クジャクの彫刻


 シュードラ達が暮らす森を抜けたエディ達は、ヒマラヤの山脈に沿って旅を続けた。日の当たり具合によって、ヒマラヤ山脈の万年雪は様々な表情を見せる。東から現れた朝日によって黄金色に輝き、南に昇った太陽によって白銀に輝き、西に沈む太陽によって赤銅色に輝くのだ。そのお陰で絵の勉学には事欠かず、エディは行く先々で絵を描き続けた。スケッチ、デッサン、そして油絵。描く度に、元々素晴らしかったエディの絵はさらに磨きがかけられていた。



 月が美しい夜。真砂を散らしたように美しい天の川が、その魅力を余すところなく発揮していた。ただ、今日はじっとしているだけでも汗が垂れてくるほど暑く、周りでは、キリギリス達が必死に暑さを振り飛ばそうというかのように叫んでいた。

 そんな森に開けた広場の中、エディは昼に書いたデッサンの仕上げをしていた。しかし、その手は遅々として進まない。少し集中しようと頑張る度に、近くにいる存在が気になって仕方がなくなってしまうのだ。エディはそっと顔を上げ、目の前で明日着るという服を畳んでいる少女の姿を見つめた。今日の彼女は何故か下着姿のままだった。その白く滑らかな太ももや二の腕が火に照らされ、半ば妖艶に光っているのに彼女はお構いなしだ。彼女の手元に目を下ろせば、白魚のような指がせわしなく動き、服のしわを伸ばしていた。


 そんなエディの視線に気づいたのか、ヘレンはその手を休めてエディの方を向いた。


「ねえエディ、さっきから私の事ばっかり見てるけど、どうしたの?」

「ど、どうしたも何も無いけど?」


 しどろもどろなエディの口調に首を傾げると、ヘレンは柔らかく微笑みながらそばに近寄る。


「何も無いようには見えない口調だけど? 私に何か話したいことでもあった?」


 容姿に見とれていたと言うわけにもいかず、エディはとっさに絵を見せた。


「ああ! ねえ、この絵を見てよ。上手く描けてるかな?」


 彼女の前に、アルプスの山とはまた違う、荘厳で力強い尾根が再現される。一瞬その雰囲気に引き込まれそうになったヘレンだったが、内心にこみ上げる可笑しさは消えなかった。心の中でくすくす笑いをしながら、ヘレンは雄大なヒマラヤ山脈の絵を取って眺め、大きく嘆息を洩らす。


「うん。何て言うのかな……その場で見た時の雰囲気がにじみ出てる。やっぱりエディはすごいね」


 ヘレンの丸く大きな栗色の瞳が、エディの視線を引きつける。旅の途中では小さな吹き出物が出来たりしたヘレンの頬だったが、今ではそれも収まり、白くつややかできめ細かい肌が完成されていた。かつてシレーヌに嫉妬して、今も街ですれ違う美人を羨むことがあるものの、彼女の美貌も十分過ぎるほど道行く男を惹きつけていることにエディは気づいていた。

 一方で、ヘレンもまた、エディが最近自分をたっぷり意識していることに気がついていた。くすりと笑うと、ヘレンは絵をエディに押し付けながら立ち上がる。夜空を見上げながら、ヘレンは気楽な調子で呟いた。


「今度、私の絵も描いてほしいなぁ」


 いつも通りの格好で言われたならば、エディもヘレンの表情や仕草が持つ清楚な魅力、そして可愛らしい雰囲気をしっかり描いて見せようと、そう思ったかもしれない。しかし、今はそういうわけには行かなくなってしまった。まとっているのは下着一つ。肩から先、太ももから先を夜風に晒して、ついでに凹凸のはっきりしてきた体の線を余すところ無く顕わにしたその姿に、エディは女性としての魅力を感じないわけにはいかなかった。肌の美しさはもちろん、均整のとれた胸から腰にかけての線は、被写体として非の打ち所が無い。しかし、初心なエディにとって、女性の魅力を意識するということはあまりに刺激が強すぎた。


「う、うん……今度ね。今度描いてあげるから」

「ほんとに? お願いしたからね」


 笑顔はやはり可愛らしい。大人になりきれていない彼女の魅力に、エディは思わず虜になりそうだったが、エディはそんな自分を恥じた。そして、顔をしかめてヘレンをたしなめる。


「で、いつまで下着姿でいるの?」

「え?」


 ヘレンの首の傾げ具合は、本当にエディが何を言っているのかわかっていないようだった。ため息をつくと、エディは言葉を変えて指摘した。


「だから、服は着ないのかい?」

「なんでそんな事聞くの? 今日はさすがに暑すぎるから、このまま寝ちゃおうかなあ……なんて思ってたんだけど。いいよね?」


 エディは驚いて目を丸くした。思わず首を強く振り、不機嫌そうな顔になる。


「だめだよ。年頃の女の子がそんな格好。はしたないよ」


 ヘレンは口を尖らせた。肩をすくめると、判然としない口調で呟く。


「何でいきなりそんな事言うの? ここにはエディしかいないんだからいいじゃない。昔はそんな事気にしてなかったのに」

「昔は下着で寝るようなことしてなかったでしょ」


 澱みなくエディが言い返すと、ヘレンは前屈みになり、必死に手を合わせてきた。


「暑いんだから勘弁して。お願い」


 思わず胸元に目を走らせてしまったエディは、自分こそがはしたない人間だと責め立てながら唇を噛む。


「けどさあ……」

「寝させてやればいいじゃないか。それで何か問題があるのか?」


 エディが言い澱んだところに、ロードが言葉を滑りこませた。地に伏せて、すっかり休息の体制を整えているロードは、まるでエディを小馬鹿にしたかのような尻尾の振り方をしていた。確かに、別に問題はないのだ。自分が動揺して心臓が跳ねてしまうこと以外には。しかし、そんな姿を見るとどきどきして眠れない、などと言えるはずもない。エディはついに諦めた。


「いえ……ありません」


 うなだれたエディが白旗を上げると、ヘレンはにっこりと笑ってロードの側に駆け寄り、そっとその頭を撫でた。


「よかった。ありがとね。ロード」

「気にするな。大したことじゃない」


 そりゃあ、馬のロードには関係ないさ。心の中で皮肉を呟くと、エディは毛布を引っさげさっさと火元から遠ざかった。明日になれば、ヘレンも服を着てくれるだろう。今日のところはさっさと寝て、緊張感溢れるこの時間をやり過ごそうと心に決めていた。しかし、それすらもヘレンは無邪気に阻む。寝転んだエディの隣に、早速彼女は腰を落ち着けてしまったのだ。毛布を被って身を横たえ、エディにたっぷりその愛らしい笑顔を魅せつけた。


「おやすみ。エディ」

「あ、うん。おやすみ……」


 ヘレンを前にしては、その表情ばかり気になって眠れない。そっけなく思われると考えながらも、エディは寝返りを打って背を向けた。同時に、エディはどうしてこうもヘレンの事が気になって仕方ないのかに思案を巡らせ始めた。確かに、彼女は魅力的だ。絶世とは言えないまでも、気立ても良い、顔も可愛らしい。今たっぷりと見た通り、女性としての魅力も十分。こうして考えてみると、ヘレンに惹きこまれてしまうのがむしろ当然のように思えてきてしまった。虜にされかかっている今の自分、無頓着だった昔の自分。極端すぎる自分を理解することが出来ず、エディは溜め息をついた。

 エディは静かに目を閉じる。人というのは、どこかの感覚を控えるとどこかの感覚が研ぎ澄まされる。目を閉じたエディの耳に、ヘレンの静かで幸せに満ちた寝息が聞こえてきた。見ずとも、今ヘレンが愛くるしい表情をしているのだろうと想像がつく。想像がついたエディは、ヘレンが後ろで無防備に眠っているということを実感してどぎまぎしてしまった。エディは何度も何度も深呼吸をして、その弾んでしまった鼓動を抑える。その後、エディは五感の意識を遠ざけ、何とか眠りへの道を歩み始めた。



 エディはいつものように、ヒマラヤの尾根を見つめながら、気楽な調子でデッサンを続けていた。デッサンが上手く行けば、今日は油絵として完成させるつもりでいた。その考えに反応しているかのように、今日は良く鉛筆が走る。あんまり上手く書けるので、エディは何だか気分が良くなっていた。

 最後の仕上げに、今日はヒマラヤの陰影にこだわってみようと考えたその瞬間、背中に柔らかい感触を感じる。エディは苦笑すると、画材をおいて首を傾げた。


「ヘレン? 一体どうしたの」


 背中に抱きついた彼女は、エディの質問には答えない。ヘレンはエディの肩に頭を載せて、いかにも幸せそうな声色で呟いた。


「うーん……大好き、エディ」

「え。あ、あ。ええ?」


 あまりに驚いたエディは、思わず舌がもつれてしまった。今までヘレンが言ってくれた『好き』とは次元が違う。エディはただただ赤面し、うつむいてしまった。彼女は相変わらず幸せそうで、子猫のような声を上げている。それを聞くと、エディも離れてとは言えない。頬の熱を感じながら、エディは首に回された彼女の細い腕を眺めているしかなかった。


「ねえ。私を見て?」


 ようやく背中から離れたと思ったら、ヘレンは猫撫で声でエディに尋ねる。拒む理由は無く、エディはヘレンに言われるがままに振り向いた。その瞬間だ。

 目を優しく閉じたヘレンが素早く迫ってきた。突然のことに戸惑い、エディの目にはヘレンの動きがやたらとのろのろして見えた。その隙に、ヘレンの唇が、エディの唇にそっと重なった。



「あ!」


 エディは一生の中でも一二を争うほど驚愕しながら目を覚ました。肩で息をしながら、何とか冷静に周辺を見回す。すぐに気がついたのは、ほとんど背中に密着した状態でうずくまっているヘレンだった。エディは安堵のため息をつく。夢は本人の望みが現れるとも言われていたが、言い訳が見つかったからだ。


「そっか。ヘレンがぴったりとくっついていたから、思わずこんな夢を……あはははは」


 一人苦笑いしながら、幸せそうに寝息を立てているヘレンを起こさないように立ち上がる。ただの汗、冷や汗が混じって、エディの服はもうべとべとになり、肌にぴったりとくっつくようになってしまっていた。

 それを見たエディは、一人肩をすくめて旅嚢の中から自分の着替えを引っぱり出し、近くに見つけていた川へ水浴びしようと歩き出した。




 しかし、次の瞬間にはまたしてもヘレンに悩まされていた。


……いつもこうしてきたじゃないか!


 エディは何とか自分自身に喝をいれようとするが、少しでも気を抜けばヘレンが密着している背中に意識が飛んでしまう。純粋な少年でいようと頑張る理性と、『異性』に興味津々な本能がせめぎあい、エディは周りの風景に気を配る事すらも頭からぶっ飛んでいた。すっかり自分の中の事で手一杯になってしまって、いくらヘレンが肩を叩こうが気付かない。とうとうロードが足を止めてしまった。


「どうしたの、ロード」


 エディが上ずった声で尋ねると、ロードはしきりに足踏みしながら強い調子で嘶いた。


「どうしたもこうしたもあるか! さっきからまともに手綱もとってくれないだろう! 私もヘレンも困っているんだが……」


 ロードは本当に困窮している色をにじませた。村に入るか入らないかの分かれ道で、エディは一向に指示を出していなかったのだ。苦笑いすると、エディは手綱を村に入る道へと振った。


「ごめんよ。少し考え事してて」

「頼むぞ。最近何だか変だからな」

「ねえ、大丈夫?」


 半ば嫌味を伴ったロードの声色、ヘレンの心底心配している控えめな声色を聞いて、エディは唇をもごもご動かしながら肩を竦めた。


「あは……ごめん」

「全く……」


 鼻を鳴らしたロードはまだ何か言いたそうにしていたが、主に忠誠を示してそれ以上は不満を言わなかった。



 村に入ってみた途端、エディ達はあんぐりと口を開けてしまった。近づく毎に、太鼓の音がどんどこどんどこ、軽妙で愉快な音が絶え間なく響いてくるのも聞こえていたし、ラッパの甲高い音も太鼓の音に折り重なるようにしてその存在を主張していた。初めのうちは何かのお祭りかと思っていた二人だったが、実際に入ってみると、どうにもそういった雰囲気ではない様子なのだ。


「お祭り、なのかな?」


 ロードから降りながら、ヘレンは首を左右に何度も傾げた。エディは太鼓の凄まじい響きで心臓を揺すぶられ、その圧倒的な雰囲気に気圧される。それでも、エディは目を凝らして人だかりを見つめた。鮮やかに着飾った男女一組が、後ろに十数人ほど従え、脇を太鼓やラッパを携えた人々で固めて練り歩いている。さらにその脇で人々が道を作り、ススキのような形をした飾りを振り回して、さらに着飾った男女をからかってみたり、祝いの言葉を投げかけたり、歓声を送ったり。とにかく大騒ぎしていた。

 そこでエディはピンと来た。今まで思い描いていたものとは異にした姿だが、男女を祝う行事など、一つしか思いつかない。


「結婚式。かなあ?」


 頬を染めてはにかみ、小さくなってうつむいている女性を見つめながら、ヘレンは小さく手を打った。


「ああ! なるほどね。……随分派手なんだ、ここの結婚式って。何だか照れちゃう」

「どうしてヘレンが照れ――」


 手を組んで胸の前に持って行き、柔和に微笑みながらその光景を見つめているヘレンに、エディはいつも通りに冗談っぽく話しかけようと思っていた。しかし、エディは思わず言葉を途中でやめてしまった。結婚式の様子を見て、ヘレンの姿を見て、エディはついに自分を焦がす『なにか』に気がついた。

 エディは拳を一度握りしめ、何度も何度も自分に問い詰めた。その勇気はあるか。実ればいい。実らなかった時、それでも変わらず旅を続ける自身があるか。そんな心配はいらない。たった一度の失敗で崩れてしまうような関係を、自分達が築いてきたはずはない。そう自分に言い聞かせたエディは、素早くヘレンの右手を取った。とっさの出来事に戸惑ったらしく、ヘレンは目を丸くした。頬も少し赤くなっている。


「え、ど、どうしたの?」

「ヘレン。ちょっと俺と来て欲しい」


 エディの真剣な瞳に当てられ、ヘレンはますます頬が火照るのを感じた。


「う、うん……いいよ」

「ありがとう」


 エディは礼もそこそこに、ヘレンの手を引き誰の目も通らない建物の影へと導こうとした。ただ、それに待ったをかける存在が一人、否、一頭だけいた。彼にしては珍しく、少々寂しそうな声色になってしまう。


「お、おい。俺をこんなところに置いてどこ行くんだ?」

「ちょっとそこで待っててよ。俺はヘレンだけに話したいことがあるんだ」


 真剣そのものの声色を聞いて、ヘレンは自分から湧き上がる感情だけで頬が火照っているわけではないことに気がついた。今まさに、エディの心は情熱に燃え上がっていたのだ。ヘレンは肩を竦めて小さくなると、ロードに向かって微笑んでみせる。


「大丈夫。すぐ戻るから」

「……寂しいものだな」


 ロードはそう呟いたきり、尻尾を毛先一本余さず垂らし、足元の地面を見つめだしてしまった。



 一方、ヘレンを物陰に誘い込んだところまではよかったのだが、ここに来てエディは再び緊張してしまった。手いじりして、ヘレンの笑顔もまともに見られない。足元ばかりを見つめていると、それを不審がったのか、ヘレンが困ったような笑顔で尋ねてきた。


「ねえ、どうしたの?」


 ヘレンと目があった瞬間、エディはついに覚悟を決めた。今までヘレンに抱いてきた気持ち。恋愛を知る余裕を失ってしまったエディには、それがどういった気持ちであったのかがずっとわからなかったのだ。だがしかし、否応なしに心は大人となり、理性がほとんど知らなかった『恋』という心を、エディはヘレンに抱いていたのだ。今、『真実を求めて』の主人公と同じくエディは一人の少女へ抱いた恋心を打ち明けた。


「ねえ。この際だし、俺ははっきりさせちゃいたいんだ」

「何が?」


 首を傾げる姿も絵になる。そう思った瞬間、エディはヘレンの魅力に心を掴まれていた事を実感する。その実感を糧にして、エディはさらに勢いを付けた。


「これからのこと。旅を終えた先のことも。……要するに何が言いたいかっていうとね、俺は、ヘレンにこの上なく恋しちゃったんだよ」


 ヘレンは驚きに目を見開き、思わず開いた口を手で塞ぐ。その頬は真っ赤だ。そんなヘレンの様子には気を払わず、エディは矢継ぎ早に言いたいことを言ってのける。そうでもしなければ、途中で心が緊張で折れてしまいそうだった。


「ヘレンの表情は、笑顔一つ取っても俺は数えきれない。そんな可愛らしい顔を毎日見られるなんて、僕は幸せだよ。それに、性格も優しくて、落ち着いてて、ついでにちょっぴりお茶目で。とても可愛い女の子だなあ、なんて思ってたけど、ヘレンも十分大人の女の人になってたんだってこと、最近気づいちゃって。……そしたら、もう何だか、ヘレンに対する思いがどんどん湧き上がってきちゃって。……とにかく、俺はヘレンのことが、みんな大好きなんだよ。だからさ。どうか……俺はヘレンと単なる仲間じゃ終わりたくなくなっちゃったんだよ……」


 頬を赤らめてうつむき、組んだ自分の指先ばかり見つめていたヘレンだったが、最後の哀願するような口調を聞いた途端に、ようやく彼女は顔を上げた。その表情は、とても嬉しそうに輝いていた。


「よかった。やっと言ってくれたんだね。やっぱり、こういうことは男の子から言ってもらわなきゃ」

「え……それってつまり!」


 ヘレンの満面の笑みを見て、エディもつられて顔を輝かせた。一旦恥ずかしそうに目を伏せると、そのまま彼女は深々と頷いた。


「うん! 私も。エディとただの友達で終わるの、寂しいなあ、なんてずっと思ってた。多分、シレーヌに嫉妬した頃から、ずっと。……だから、とっても嬉しい!」


 エディは頬が緩み、目元にじんわりと涙が浮かんでくるのを感じた。恋心が実るというのは、どうやら泣くほど嬉しいものらしい。必死に涙を拭いながら、エディは深く頭を下げた。


「ヘレン。これからもよろしくお願いします!」

「うん。……あ。一つだけお願いしていい?」

「ああ。何でも言ってよ!」


 ヘレンはくすりと笑うと、はにかみながら尋ねた。


「ねえ、これから……二人きりの時には、『エド』って、呼んでもいい? 私達だけの、特別なあだ名にしたいの」


 エディは迷うこと無く頷く。きっと、これがお互いの関係をより素晴らしい物へと塗り替えていく第一歩なのだろう。エディはそう感じていた。


「ああ! もちろん!」


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