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緑魔法で滅びた貴族、森で世界を取り戻す  作者: Uta


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農園をつくる

リオンが“想いで育てる”力に気づいた翌朝。

森はまた一段と賑やかになっていた。


「リオ助ー! おきろー! 今日は農園の日だぞ!」

ブランの声が朝露を弾くように響いた。


リオンは寝ぼけ眼でゆりかごから抜け出した。

外に出ると、森がざわざわと息づいている。

昨日のパンの香りがまだどこかに残っていた。


「農園?」

「そうだ! 食いもんが足りねぇ!」

「え、足りないの?」

「当たり前だろ、昨日のにんじんスープ、にんじんさんまで食っちまったろ!」


「えぇぇ!?」

三姉妹が慌てて首を振る。

「にんじんさんは元気ですー!」「葉っぱの先だけですー!」「でも本人は“また生えます”って!」


木の根の陰から、ピョコンと葉っぱが出てきた。

「大丈夫ですよー! 再生済みです!」

にんじんさんは今日も元気だった。


「でな、今日は森の“土人つちびと”たちが手伝ってくれるらしいぜ」

ブランが腕を組むと、足元の地面がもぞもぞ動いた。


そこから、小さな影たちがぞろぞろと現れた。

身の丈は30cmほどで木の葉や花を纏っている。目が宝石のようにキラキラだ。

顔は丸く、帽子のようにキノコが生えている。

それぞれ色とりどりで、背中に小さな苔の羽が揺れていた。


「わぁ……かわいい!」とモルム三姉妹が声を上げる。


「紹介しよう、こいつらは“グリンメル”族。精霊みたいな小人だな!」

「みたいなとはなんですか!ちっちゃいけど立派な土の精霊です」


聞くところによると昨日の願いながら作物を育てる力に引き寄せられたのだとか。


「あのー、もしよろしければそのお力見せていただけないですか?」


「お前らは謙虚なのか豪胆なのか分かんねーやつらだな」

笑いながらブランが根を打つ。


「まあまあいいじゃない」

そう言いながらリオンは地面に手を置いた。

にんじんさんの言葉を思い出す。

“想えば、芽吹く”――

だったら、みんなが笑顔になれる食材を。


「――実れ、“森の恵み”!」


緑の光が広がる。

地面がふくらみ、ツルがのび、色とりどりの実が生まれた。

ふわふわの穂をつけた穀物、香り高い葉野菜、甘い汁をたたえた果実。

太陽のような花の下には、バターの香りのする根菜まで。


「おおおー!」「すっごーい!」「いい匂いです!」


グリンメルたちは大喜びで走り回る。

一人は転げ、一人は葉っぱを抱え、もう一人は早くも口をもぐもぐ。


「こ、こら! まだ収穫してないってば!」

「す、すみませんっ、でも……うまい!」


森の中に笑い声が広がった。

トレイニーの声が木々を伝って響く。


「よいぞ、呼び子よ。

 この森は命の流れ、汝の想いが風となり、水となり、土を潤す。

 いずれ、この森は“世界を養う大地”となるじゃろう」


リオンは少し照れたように笑った。

「大げさだよ、トレイニー。でも……いい匂いでしょ?」

「うむ。すこぶる腹が減るのう」


ブランが両手を上げて叫ぶ。

「よし! 今日は“収穫祭”だ! みんな食えーっ!」

「うわーい!」


笑いと香りがあふれる中で、

リオンはふと空を見上げた。


陽光がまぶしい。

あの日の涙は、ちゃんと“実り”に変わっている。


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