森の暮らしを創る
リオンはブランとモルム三姉妹に囲まれていた。
「よーし、リオ助!」
ブランが根の腕をぐいっと伸ばして大きな籠を持ち上げる。
「今日から“森で生きるための訓練”だ!」
「訓練って、戦うの?」
「ちがーう!」と三姉妹が声をそろえる。
「ご飯です!」「おうちです!」「あと寝るとこ!」
「生活だ!」とブランが胸を張る。
「森は生きてる。食べることも、寝ることも、命の魔法の一部なんだ。」
木々の間から、トレイニーの声が響いた。
「そのとおり。
森の呼び子よ、生活を整えることは“森を治めること”に通ずる。
お前の緑は、命の巡りそのものなのじゃ。」
リオンはうなずいた。
まだ上手く扱えないけれど、昨日感じた“森の息”をもう一度思い出す。
「じゃ、まずは食べものだな!」
ブランがどっかと腰を下ろす。
「昨日の光果はうまかった。次は野菜いってみようぜ。ほらリオ助、緑の魔法だ!」
リオンは地面に手を当て、ゆっくり息を吸った。
土の匂いが濃くなる。指先がほんのり緑に光る。
「――出てこい、野菜!」
しばらく沈黙。
モルムたちが首をかしげる。
「……なにも起きませんね?」
「もう少し応援したほうが?」
「がんばれ、野菜ー!」
「うるさいよ!」リオンが笑いながら言う。
その瞬間、ポン、と音を立てて地面が膨らんだ。
そこから葉っぱが伸び、太い茎がぐんぐん伸びて――
「……にんじん?」
「おお! やったなリオ助!」
「いや、ちょっと待って。これ――」
抜き上げた瞬間、根の先がふるふると震えた。
にんじんの先に、ぽっと光が灯る。
それはまるで小さな魂のようで――
「ありがとう、リオン様……この土、とてもあたたかいです……」
「しゃ、しゃべった!?」
モルム三姉妹が拍手。
「わー! 精霊ですー!」
「野菜に宿りましたー!」
「これが森式の有機精霊栽培ですー!」
ブランは腹を抱えて笑った。
「最高じゃねぇかリオ助! お前の魔法、面白すぎる!」
トレイニーが低く笑う声を響かせる。
「命を生む魔法は、時に予想もしない形をとる。
呼び子よ、それが“森の意思”というものじゃ。」
にんじんの光は少しずつ淡くなっていく。
「ありがとう……また、いつか……」
そう言い残し、にんじんは静かに土へと還った。
跡には小さな芽が、ひとつだけ残っていた。
リオンはその芽を見つめ、胸の奥がじんわりと熱くなるのを感じた。
「生きて……くれたんだね。」
「そうさ、リオ助。」
ブランが肩をどん、と叩く。
「それが森のやり方だ。生まれ、還って、また芽吹く。
お前の魔法は“命を繋ぐ魔法”なんだ。」
トレイニーの枝が静かに揺れた。
「うむ……。森が笑っておる。これぞ“呼び子”の第一歩じゃ。」
遠くでミリウスの角が淡く光った。
森全体がざわめき、祝福の風が吹き抜ける。
リオンは微笑み、そっと土を撫でた。
「……ありがとう、またね。」




