表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
緑魔法で滅びた貴族、森で世界を取り戻す  作者: Uta


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/28

色授の儀

王都セリウスに春が訪れた。

白い鳥が飛び、街の広場では、七色の旗が風に踊っている。

今日は年に一度の「色授の儀」。

七歳になった子どもが、神に自らの“運命の色”を授かる日だ。


 


「緊張してる?」

母が笑って、リオンの服の襟を直した。

「だ、大丈夫だよ」

けれど声が少し震えていた。


父が横で笑う。

「泣くなよ。どんな色でも、お前は俺たちの誇りだ」

「……うん」


父の大きな手。

母のやわらかな声。

そのどちらも、リオンを包んでいた。


 


神殿の中は、昼なのに淡く光っていた。

白い石の壁には七つの光が刻まれている。

赤、青、灰、茶、白、黒、そして……まだ誰も見ぬ緑。


子どもたちはひとりずつ祭壇に立ち、

司祭が“神の糸”を額に触れさせる。

糸が淡く光り、その子の「未来の色」が浮かび上がる。


 


「レオハルト・ヴォルカン」


その名が呼ばれた瞬間、空気が変わった。

金色の陽が差し込むような気配。

レオハルトは、他の子より背が少し高く、笑顔が上手だった。

大人たちは口々に囁く。

「やはりヴォルカン家の子は品がある」

「もう将来は決まりだな」


司祭の糸が触れると、光が弾けた。

鮮やかな赤。

炎のように美しく、まぶしくて、誰もが目を細める。


リオンも思わず息を呑んだ。

――でも、ほんの一瞬、光の奥が“揺れた”気がした。

それは炎ではなく、影のような……ほんの一筋の黒。

(気のせい、かもしれない)

そう思って、リオンは目をこすった。


「すばらしい……“赤の導き”です!」

司祭が高らかに宣言し、人々が歓声をあげた。


レオハルトは微笑み、軽く頭を下げた。

整ったその笑顔に、誰もが心を奪われた。

――リオンを除いて。


 


「次、リオン・ヴァルド」


名前を呼ばれる。

リオンの小さな足音が響く。

会場の熱が少しだけ冷めた。

「ヴァルド? 森からの守護者の家か」「珍しいな」

そんな声がさざめいた。


 


司祭が糸を額に触れさせた瞬間、

光が生まれた。

それはとても静かで、やわらかかった。


緑。

草のような、芽吹きのような色。

他のどの光よりも優しく、どこまでも深かった。


誰も息を呑まなかった。

ただ、ざわめきが起きた。

「緑?」「農耕系か?」「戦では使い道がないな」


司祭が戸惑いながら言葉を選ぶ。

「……リオン・ヴァルド、神より“緑の光”を授かる」


父が腕を組み、短く笑った。

「いい色だ。どんな色でも、使い道は自分で決めればいい」

母もそっと肩を抱く。

「とっても優しい色でしたよ。きっとみんなの命を見守る色よ」


リオンはうなずいた。

胸の奥に、あたたかいものが灯った。


 


そのとき、視線を感じた。

レオハルトがこちらを見ていた。

人混みの向こうで、柔らかく笑っていた。


「おめでとう、リオン」

穏やかな声。優しい表情。

けれどその瞳の奥に――ほんの一瞬だけ、光がなかった。


リオンは言葉にできない違和感を覚えた。

胸の奥が、少しだけざわついた。


 


けれど次の瞬間、母の手が温かく包む。

「大丈夫。あなたの色はきっと、やさしい未来を呼ぶわ」


リオンは頷いた。

その言葉の意味を、本当に知るのは――

まだ、ずっと先のことだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ