第三節 お買い物と就職と
人行き交う大通りにて
「ぶっとべオラァッ!」
マツノの鎧をクロが飛び蹴る
「効かねぇなぁ〜!」
先ほどまで風が吹いても痛かったマツノの身体は
ヒールポーションの連続投与により完治
クロによる連撃もその一切を受け付けない
「治ってよかったね、とんでもない量のポーション使ったけど」
「俺の貯めに貯めた金奪いやがってよぉ〜金玉野郎がよぉ〜殺す」
「大剣の呪いとやらの方が辛いんじゃねえの?」
「まあそれはな、性能が落とされた上に極滅絶界・世壊断頭と極滅絶界・魔穿蠍が使えねぇのは論外だ、暫くは武炉剣以外の武器で間に合わせる」
武炉剣とはマツノの大剣の名称、
曰く『条件達成で4種のEWが使える最強武器』
・A級の中でも特に入手難易度が高い
・大剣という武器種自体が扱いづらく弱い
・EW使用の為の条件達成が難しい
・そもそも3種類しかEWが発見されてない
上記の理由から最強と謳うのはマツノだけである
「でもそれしか武器ないんじゃなかったっけ」
「金どころか武器まで盗られてんのか…拳一本で…頑張れ!」
クロの歯と親指が今世紀最も輝いた瞬間だった
「許せねぇ…次は叩き堕としてやる…クロもな」
「なんでだよ」
「僕も武器は3つしか残ってなかったなあ、武炉剣にかかった呪いはザンフォートを怒らせたマツノ個人の罰だろうね」
「全員で襲撃したろうによぉ、俺だけかよぉ」
「先陣切ったのはお前だしなぁ、金とアイテム以外は奪われてないのか?」
「スキルもセットしてたもの以外ほぼ無くなってる、これプレイヤーによるけど地獄だよ」
「開始直前に下手な装備してた連中は本当にお疲れさんだな、さっきすれ違ったおっさんとか青ざめた顔でスカートから白鳥出してたぞ」
「そんなド⚪︎キに売ってそうな装備あんの?」
「大体何でもあるし装備の外見を造れる職業もあるよ」
「職業…?」
「職業は職業でしょ、マツノは狂戦士、僕は狩人」
「そのシステム知らないな」
「…SWの実況動画とか見てたんだよね?」
「おう、派手なバトルシーンとかは見たぜ」
「勉強足りんのとちゃいますかァ」
「自分でプレイしながら勉強する予定だったんだけどなぁ、どうしてこうなった」
「クロは今職業無しだから次は装備屋と職業屋行こうか」
「ニートで草ァ」
「狂戦士っつうか気狂戦士さん…」
「暴言1だ、暴力10をくれてやる」
「常々暴言を吐いてるやつが何を言うか」
「お店行くよー武器で叩き合わないでねー」
武器をしまい拳を交わしながら器用に歩行する二人と一人、広場に繋がっている商店立ち並ぶ通りにてお目当ての店はすぐに見つかった
「おっ、ここ安いよ、クロの防具とマツノの装備の修繕してもらおうよ」
「そーだな、クロの蹴りで鎧にヒビが入っちまった、あーあ弁償」
「ザンフォートとお前の仕業だろうが」
「クロこれとかどう?」
カイが全身鎧を持ちクロに見せる
「造りが悪いわ、腕と脚が特に」
「それなら全身タイツとかにしとく?」
「初心者舐めてんのか」
「言い方が悪かったね、ただの全身タイツじゃなくて、対火対刃機能も付いてるんだよ」
「顔だけ出せるタイプ?性能はさておき絵面酷くね?」
「首までのタイプだよ、重ね着できるから関節を覆わない胸当てとか手甲とか装備するのはどう?」
「なるほどな、そのスタイルで行くか、何なら見た目度外視ならタイツだけでいいか?」
「…一応言うけど、今のSWは腕とか脚とか飛ぶし内臓が貫かれたら即死も十分あるからね、軽装でコロっと死なないでよ」
「分かってるよ、マジな話だけど重装備は向いてねぇんだよ、最悪全裸でナイフ持った方が生存率上がるぜ俺は、マジにマジに」
「まあそこまで言うなら全裸で」
「俺はいいけど世間的に良いのか…?」
カイのチョイスで重要な箇所(臓器や太い血管がある辺り)のみを覆い軽戦士クロがここに誕生した
借りパクナイフを見せつけてくるクロに
カイは溜息を吐くだけで最早何も言わない
「オメェら待たせた…いや違うな、ごめぇん、待ったァ?」
「ううん、待ってないよ、あとキモいよ」
「待ったわ10分も、あとキモいよ」
「お前らのくだらん寿命を10分も削れて嬉しいぜ」
「カイさんこいつ殺しましょうよ」
「あ、武器もここで買ったんだ、懐かしいね槍」
「大剣使う前は色々使ってたが…コイツも中々得意だ、武炉剣が解放されるまで色々使うぜ」
マツノの手に握られているのは
ランクC ケンドライハ大槍
大きな穂を含めて全てが緑の槍であり
柄は細めだが全体的にとても重く
素早く突くことができない造りになっている
「毒毒しい緑だな、色どうにかならねぇの?」
「良く見ろ植物へのカモフラ効果だ」
「あー…擬態して奇襲したことあるな?」
「槍をバットみたいに振るのにソコソコ強いのが面白いよねマツノは」
「突けよ…」
「槍は叩くもの」
「叩くだけなら棍棒とかの方が相性良いんじゃないかな」
「この店が良い棍棒売ってなかったンだよ」
「棍棒買う気ではあったのな、つーか金あったのか」
「有金全部で一番マシなの買ったンだよ」
「金無しか、ハハハ、俺ですら持ってるぞ」
「おかね全分くれよォ」
「半分みたいな言い方で全部せびられても」
ーーー
「職業を手に入れるってことは職案がこの世界にも?」
「ないない、有るのは職業屋こと占い屋」
「占いと職業に何の関係が?」
「プレイスタイルに合った職業を占って提案してくれるんだよ、プレイ履歴とかステータスとか装備とか色々参考にね、提案された中から選ぶわけ」
「なるほどなぁ、あっ居た、アレだろ露骨に占い師っぽい奴」
「あれはプレイヤーだね」
「紫のローブ着て水晶玉持ってるんだぞアイツだろ」
「いやそういう装備のプレイヤー」
「水晶玉で殴りかかるのか?」
「違うよ魔法でしょ」
「魔法…?スキルとは違うのか?」
「追々説明するから、ほらあったよ」
内部が外からは見えないものの
怪しげな雰囲気を持つ小屋、
看板にはゲーム内言語で占いの館と書かれてある
「たのもう、クロです」
「お邪魔しまーす…マツノ、どうしたの?黙りこくって」
「いやァなんだ、クロの職業当ててやるよ」
「3つとも?」
「おう、軽戦士C、暗殺者C、傭兵B」
「初心者プレイヤーがBランク提示されることは無いんじゃない?あと傭兵って専用クエストこなす必要あるし」
「ああ゛?知らねぇか?参考にするプレイ履歴っつうのは他のゲームも含まれてるんだ」
「ああそういう」
『貴方の運命の行方を観たところ…』
「あ、マツノ、結果出るよ」
「こい、社長!」
「職業っつうか役職じゃねぇかそれ」
『こちらの未来が観えました』
占い師が空間に手を広げると
『軽戦士C』『先導者C』『傭兵Ax』
の3つの職業が表示される
「おぉ、3つも出たぞ、で1個選ぶんだよな?どれが強えの?」
「…腹立たしいな、Axかよ」
「先導者?全然知らない職業出てきたね…」
「何だよ、レアなやつか?」
「クロ、とりあえず先導者の説明見てみて」
クロが先導者の項目に指で触れると
文章が浮かび上がる
『試練と儀式、決戦を乗り越える為の鍵になりうる淡き星光、勇気と愛を示す導きの剣』
「説明が説明になってなくね?」
「勇気と愛ってアン⚪︎ンマンかテメェは」
「これも別のゲームのデータが関わるスキルかな」
「いやァ、試練やら儀式やらの文がキナくせえ、新しい職業だろうよ」
『塔守と眷属に対する攻撃力が+15%&ヘイト増、状態異常軽減C』
「この効果強えの?」
「常時特攻系なら強い部類だね、これでCか」
「一旦傭兵にしとけ、特攻対象が限られてるなら傭兵Axの方が強え」
「傭兵はいいけどもxって何だ?」
「ゲーム内のアイテムやらに下からDCBAVの順番で強さの目安が付いてンだ、 AxはA未満B以上って覚えとけ」
「ああそういう、x含めて11段階か?」
「DxとVxが無ェから8段階だ」
「傭兵のAxってどんなもんだったっけ、僕もあんまり覚えてないや」
『攻撃力+5%、速度値+1、軽状態異常無効、回復力+20%、遠距離攻撃被ダメージ-10%』
「詰め込めるだけ詰め込んだ感じだなこれ」
「強いね、さすがA X」
「マツノとカイの職業は何ランクなんだ?V?」
「Aランク相当だ、カイも俺もな」
「相当っつうと?」
「職業をAにしたあと特殊職業に進化させることができるんだよ、狂戦士と狩人はそれだね、ただ進化って言ったけど単純なパワーアップじゃなくてデメリット付きのパワーアップだから…」
「A相当ってわけか、だけど使い方によっては化けるんだろ」
「そういうこと、傭兵からの進化も複数あるよ」
「了解、んじゃあ傭兵でお願いします!」
『では、貴方の行く道に希望がありますように』
「サンキュー占い師!、よっしこれで準備完了か、早速塔とやらに入ろうぜ」
「薄汚い塔の中の生命を絶やしてやるぜ」
「プレイヤーも?」
「勿論」
「勿論じゃ困るんだけども」
支度を終え3人は占い屋から離れた
ーーー
「忘れ物ないよね、消費アイテムも色々買ったし分配もしたし、パッシブスキルは…クロが解禁されてないし後回しだね」
「?」
「強いて言うならスキルセットだろうな、俺は変化がないこと確認済みだ、セットしてねえスキルはほぼ盗られた」
「僕も幾つか盗られたけどセットしてたスキル欄は無事だよ、クロは初期スキルちゃんとセットしてある?」
「スキルスキル…あぁこれか」
空間を叩きスキルの項目を開くと
4つの枠それぞれにスキルが装填されているのが見える
『ジャンプアップ』
『クイックスライド』
『ヒールC』
「エンチャントパワーC」
「名前でなんとなくやれることは分かるな」
「ジャンプ力強化、1m先への高速移動、微回復、攻撃力微増ってことね」
「なるほどな、じゃあヒールとパワーは『ブレイクパリィ』と『徒手喰剣』に変更しよう」
「待ておい」
「何で初期スキル以外持ってるの?」
「知らん…」
「ブレイクパリィの取得条件って『大型モンスター相手に3連続ジャストパリィ』でしょ?補助無しで達成したの?」
「ぜってェ狼と戦った時だろ、そっちは想定内だが徒手喰剣はマジで知らんぞ、何だァそのスキル」
「知らん…」
「知らんじゃねぇよいいから説明を開きやがれ」
『スキル使用後2秒間格闘攻撃を装備武器による攻撃扱いに、その間に1回以上格闘攻撃に成功するとその後30秒間、斬撃の攻撃力が+100% CT180秒』
説明を覗き込む二人の眉間に皺が寄る
「…尖ってんなァ、俺が欲しいぜこのスキル」
「条件付きとはいえ30秒間+100%は壊れスキルだね…いや条件のキツさでトントンかな?」
「冗談だろ、コイツならデメリット無しみてぇなもんだ」
「ピーキーだけど強えってことだな?」
「うん、上昇値が凄いよ、例えばエンチャントパワーCだったら1分間攻撃力が+15%だからねえ」
「クソ強だな、絶対使いな、もしくはよこせ」
「嫌でーす、俺のでーす、お前はひたすら剣で飛んでてくださーい」
「今からテメェの喉元に飛んでやるよ」
「「勝負ッ!」」
「いちいち街中で激突しないで恥ずかしいから」
漫画表現みたいな煙をあげながら
通りを闘い歩く2人と1人は塔の麓に着く
「おっもうこんな近くか」
「塔がデカすぎて距離感が掴めん」
「…よし、早速入ろうか」
遥か高き白壁の塔はいくつもの口を開けて
試練に挑むものを待ち構えており
一人また一人と渦巻く紫の霧へ消えてゆく
新たに塔に呑まれるは3人組の戦士たち
「さあ行くぞ!」
「おォ!」
「飛び込めー!」
死地に赴くには余りにも勇ましき顔と態度で
男達は向こう側が見えぬ渦の中に飛び込んだ
ーーー
第四節に続く




