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第八話 クマとの出会い

 あれは私が6〜7歳ぐらいだったかな……。



「みんなー。今日はあの岩山にのぼるからね。いくよー!」

「おー」

「ミンミンまってー」



 などと、私がいつものように近所の子供達を引き連れて遊び回っていたら、見慣れない同年代ぐらいの少年が町にやって来たのだ。


 私はその少年を見た時なんか変な感じがした。なんかこう、子供にしては妙に冷めているというか、落ち着いた物腰というか……。


 あと、私を見て全く意に介さないで「プイッ」と目を背けたのがすっっっっっごく気に入らなかった。



 は!?



 舐めてんのコイツ??私は即突っかかって行った。


「おいコラー!あんただれよ?」


 私はソイツの正面に立ち、腰に手を当てて仁王立ちしながら聞いた。ソイツはなんかつまらなそうな顔をして私を見て、ぼそっとこう言った。


「……クマ」


「クマ?きいたことないね。ここに来たの初めて?だったら教えてあげる。ここじゃ私が一番えらいの!だから私の言う事はちゃんときくのよ!!」


 するとクマはすごい面倒くさそうな顔を向けて答えた。



「はぁ?なんだそりゃ。バカかおまえ」



 そんな返事が返ってくるとは思わず私は口を開けてしばらくポカーンとしていた。


「あー、お前ー!ミンミンにそんなこと言ったらぶん殴られるぞ!!」

「そうだそうだー。ミンミンはつよいぞー!」


 周りのちびっ子達もはやし立てる。当の私は――。



 当然ながらブチギレた!



「なまいきだお前ーーーー!!」


 私はクマに掴みかかり拳を握ってクマの胸に無雑作むぞうさに叩きつける。



 ――ガッ!!


 クマはそれまではボーっと立っているだけだったのに急に妙な武道家みたいな構えをとってそれを受け止める。


 な、なにこいつ!?岩みたい!!

 その後も何回も似たような攻撃をしたり蹴りをかましたりしたけど全く手応えがない……なんなの!?


 そしてとうとう、面倒くさそうな顔のままのクマにこう言われた。


「おい。いいかげんもうやめろ。怒るぞ?」


「ふ、ふざけんなバーカ!!大人しく私にたおされろー!」



 ――――ガッ!!



 え!!??



 何をされたのか全然分かんない……けど、気付いたら私は宙を舞っていた。そして――。



「……ふぎゃっ!!」



 そのまま受け身も取れず地面に叩きつけられる私。立ち上がろうとしても痛みと衝撃で立ち上がれないっ!!うそっ。そんな……。


 ぐっ……うぅっ……。

 私は四つん這いになるのがやっとだった。


 クマはそんな四つん這いになった私の目の前に立ってじっと見下ろしている。

 こ、こんな奴に……く、くやしいっ。認めたくない!!


 ……グスッ……ううっ。

 気付いたら涙が……目に涙がたまって……くる……あ、あ、やだ……これ。


 うっ……あ、あ、ああああああああっっっっ!!!!



「うわあああああああああああん」



 私は大泣きした。


 くやしい!!

 こんなはずじゃなかった……うううううううう。


「ああああああっっっ、ひぐっっひっうっ……ううっ……」


 しばらく泣き続ける私。


 そして困ったような顔でそれを見ているクマ。

 ぐすっ……なによ!?勝ちほこりたいの!?


「えーっ。ミンミンがまけたー!?」

「なんだアイツー??」

「つええ!!」


 周りのちびっ子達からはそんな声が次々にあがる。

 それまで圧倒的ガキ大将だった私は今の状況を受け入れられず屈辱感に打ちひしがれ、しばらくすすり泣いていた。


 するとここでクマがこんなことを言って私に手を伸ばす。


「おい、立てるか?」


「…………」


 その手を取るかどうかの判断も出来ないほどショックを受けていた私だったが、その場に一人の大人がやって来た。



 ――ザッ。



 そして大人はクマにげんこつを食らわせていた。



 ――ゴスッ!!



「いたああっ!?」


 クマの叫び声が聞こえる。


「くぉらクマ!お前何してんだ。ケンカは駄目だって言っただろうがー」

「い、いってぇ!……師匠、だってコイツがいきなり――」

「言い訳をするな。お前は将来『武王』になるかもしれん特別な子供なんだ。すでに今の時点で大人より強いんだぞ。軽はずみなケンカなどもっての外だ!!」


 私はようやく立ち上がってクマの顔を見た。


 すると、やはりクマは口を一文字にして「理不尽だ……」とでも言いたげな、複雑な表情を浮かべていた。


 沈んでいた気分が少し回復した私はピューッと逃げるように家に帰り、それから次の日、早速クマに再挑戦した。




「あっ、いたーーっ!クマー。今日はあんたに絶対勝つ!!」

「うわっ。またお前か。俺、戦えねーって言ってんだろ。師匠に言われてんだ……」

「は?なにそれ??勝ち逃げじゃん!?ふざけんなー!!」

「知らん」

「ぬぬぅ。……あ!じゃあこうしよう。私がお前に一撃でもいれたら私の勝ち。お前は攻撃をかわし切れば勝ち。それでいいでしょ?」


 それを聞いたクマはちょっと考えて、こんな事を言った。


「じゃあ俺が遠くに逃げればいいんじゃねーか?お前より絶対足早いし」


「はあ!?ふざけんな……いや、うん、良いよそれでも。ただし『お前は私が怖くて逃げ出した』って皆に言いふらすからね!!」


 するとあまり表情を変えないクマが初めてムッとしたように眉を釣り上がらせた。



「お前……ムカつくな」



 へー、こいつも一応ちゃんと怒ったりするんだー。へー、でもさ――。



「どりゃっっ!!」



 その瞬間!腕を真っ直ぐ伸ばしただけの軽い拳がクマの腹にヒットした。


「うぐっ……」


 あはっ、やっぱり!怒ってると反射神経鈍っちゃうよねー!?


「やった!私の勝ちー!!いえーいぃ」


 私は両手を高らかに上げて勝ち名乗りをした。もちろんただのおふざけだ。ん?……あれ?

 クマを見るとなんかガチ凹みしている。いや、どした?



「い、一撃食らった……負けた……」



 は!?



「いやいやあんた、そこは――今のナシ反則!!――って言うとこでしょ!?何大真面目に凹んでんの??」


 クマは真面目な顔でこんな返事をする。


「どんなときでも、攻撃を食らいそうになったら防御か避けるかしなきゃだめなんだ!だから、今のは俺の負けだ」


 クマのイミわかんない理屈に私は戸惑い、しばらくしてとある結論に達した。



 ――コイツ、実はめっちゃくちゃバカ(真面目)なのでは……??



 それまでのクマの「愛想の悪いムカつく奴」というイメージと違うちょっと意外な一面を発見して、私はなんか笑えてきた。


「プッ……あはははははははははっ!あんたアホでしょ!?あはははははっ!!」


 クマは恨めしそうにじっと横目で私を見ている。


「ねえ、クマ。私勝ったんだから、おんぶしてよ。お水くみに井戸行こー!」


 そう言ってクマの背中に飛び乗る私。


「み、水?」

「そう!井戸はあっちだからね!あっちー」と指をさす。


「まあ俺負けたしな、行くかー。てか、お前って変なやつだよな……ふふっ」


 え?


 頭しか見えなかったけど、今クマが確かに笑った。コイツも笑うんだ……へー。私は不思議と感心してしまい、つられて笑顔になった。



 そんな感じで少しだけ仲良くなった私達は、その後もよく一緒に遊んだ。


 私はクマにカンソーの町を案内する代わりに武術を教わった。

 教わったと言うより、二人で居ると私はなんかクマに攻撃してみたくなるので、クマが仕方なくそれをいなす……といった感じだ。正直結構楽しかった。





 ――クマとの関係はそんな感じで昔から変わっていない。最近変わったことと言えば私が()()()()()に興味を持った事だ。ふふふ。

 おかげでクマには以前よりも避けられているが私は全く気にしない。



 ちょっとしたキッカケで、あんな気持ちいいことがこの世にあることを知ってしまったのだ。ふふ、私は決めた!


 これからも「気持ちいいこと」を追い求めて生きていく……と。


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