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模型から始まる転移  作者: 昆布


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第90話:遺跡探索への準備

第90話として、惑星ガンマの遺跡探索に向かうルミナス乗組員たちが装備品店で準備する様子を和気あいあいと描きました。また、キャスの誤射によるハプニングも描き、話しを盛り上げました。

【出発前の準備 ― 装備品店への道のり】

補給ドックの気温は、人工気候制御により常に快適に保たれていた。重力も地球標準に調整されており、どこか古びた金属の匂いが漂う中、ルミナスの乗組員たちは装備品店へと歩みを進めていた。


「装備品店はドックの第3区画。こっちです」とアスが地図をホログラムで表示しながら先導する。


貴志がその後ろで仲間たちの様子を見ながら、優しく声をかけた。


「なあ、みんな。今回の遺跡探索、ちょっと緊張してるか?」


「ううん! ぜーんぜん!」と、ルナが両手を大きく振り上げて答える。


「携行火器ってかっこいいし、冒険って感じでワクワクするー!」


「わかるー!」とキャスが飛び跳ねるように続いた。「でも、私、失敗しやすい体質だから気をつけなきゃね〜って、思ってたら、あっ!」


キャスがつまづき、持っていた小型バッグを空中に放り投げる。その中から携行用の電子メモパッドがポーンと飛び出して、貴志の額に直撃した。


「いったぁ……」


「きゃっ! ごめんなさーい、貴志さーん!」


「いや、大丈夫だって……なんで顔面に命中するかな……」と苦笑しながら、貴志はメモパッドをキャスに返した。


ルミが小さく笑って言った。


「キャスちゃんって、本当に器用に失敗をするよね……」


「ひ、ひどいっ! でも否定できない~!」


ステラがそのやり取りを見て、少しだけ微笑んだ。


「にぎやかですね……こういうの、いいですね」


その口調には、どこか羨ましさのような、温かい感情が混ざっていた。


ルミはそんなステラに寄り添いながら、そっと囁いた。


「ステラちゃん、緊張してる? 私もちょっと、怖いんだ……戦うの、まだ慣れてないし」


「……私も、です。けれど……みんなと一緒なら、大丈夫な気がします」


アスが立ち止まり、後ろを振り返って一行に声をかけた。


「ちなみに、装備品は遺跡内部での機動性を損なわないよう、軽量モデルを選んでください。パワーアシストや小型エネルギー武器、センサーとの連動機能も確認を」


「さすがアス、ぬかりないな」貴志が感心して言うと、アスは無表情のまま淡々と返した。


「当然です。リスクのある任務に、準備不足で挑むのは愚か者のすることです」


その言葉に、キャスがふるふると震えながら言った。


「アス、わたし、愚か者にならないようにするー!」


「……なるべく、ですね」


「ヒドイー!」


笑い声が響き、ルナとキャスが肩を並べて歩き出す。ルナは勢い余ってキャスの腕を引っ張りながら、まるで遠足にでも行くかのような表情だった。


「早く行こうよー! ピカピカの武器、選びたいー!」


その時、遠くに目的地が見えた。金属製のアーチの下に、**『GEAR FRONTIERギア・フロンティア』**の光るネオンサインが輝いている。傭兵たちが出入りするその店は、最新の武器から探索用ガジェット、アーマーまで揃える有名ショップだ。


「着きました。ここが、装備品専門店ギア・フロンティアです」とアスが言う。


貴志が深呼吸をして、全員に向かって言った。


「よし、ここで準備を整えよう。必要なのは、命を守るための装備だ。みんな、気を引き締めていこう」


キャスが右手を上げて、ビシッと敬礼。


「了解っ! 任せて、貴志さん! わたし、今日は“ちゃんと”選ぶもん!」


そのすぐ横で、彼女の肩に乗っていた小型ドローンが反応してピピッと音を立て、突然飛び出した。


「きゃっ!? ドローン、まってー! あああっ、また動かしちゃったー!」


ドローンは一瞬ふわりと浮かび、店のガラスにぶつかって止まった。


ルミが苦笑しながら言う。


「……今日は一日、にぎやかになりそうだね」


「まったく、油断できないよな……」と、貴志が肩をすくめながら笑った。


そして、扉が開いた。未知の遺跡へ挑むための、最後の準備が始まろうとしていた。


装備品店オルテガ・アームズにて】

巨大な金属製の扉が開き、ルミナスの面々が足を踏み入れたその瞬間、店内は熱気と緊張感に包まれていた。


棚には光沢あるブラスター、各種エネルギーシールド、戦術ドローン、パワーアーマーのパーツが整然と並び、天井からは細いレーザーセンサーが交差するように光を走らせていた。奥では重装備の傭兵たちが機材の調整をしており、金属の軋む音と電子音が絶え間なく鳴っていた。


「ここが《オルテガ・アームズ》か……」と、貴志が感心したように呟いた。「思ったより本格的だな。アス、どれが良さそうだ?」


アスは無表情のまま、視線を棚へ滑らせた。


「まずは軽量ブラスターと携帯型シールドです。重量を抑え、即応性を確保できるものが理想です」


すると、スッと近づいてきた若い店員が、愛想良く笑いながら声をかけてきた。


「いらっしゃいませ。どんな火器をご所望でしょうか?もし遺跡探索でしたら、軽装備がおすすめですよ。こちらが新型のハンドガンタイプ、そしてこのシールドは反応速度が速いモデルです」


「ふむ……」と貴志が手に取り、ゆっくり構えてみせた。「これ、扱いやすいな。グリップもいい感じだ」


アスもそれを手に取り、エネルギー出力と重心バランスを確認する。


「出力も十分です。艦長、これなら私も推奨できます」


一方その頃、ルナは店の一角に並ぶドローンコーナーで目を輝かせていた。


「わぁ〜! 見て見て、お兄ちゃん! このドローン、ちっちゃいし、丸くてかわいい〜!」


店員が説明を加える。


「こちらは遺跡探索用の超小型ドローンです。自律航行可能で、センサーと暗視機能も搭載されています」


「すごい! しかも2個セット! お兄ちゃん、これ買っていい? 探検ごっこするー!」


「探検ごっこじゃなくて、本番だからな……」と苦笑しつつも、貴志は頷いた。「でも、選び方は正解だな」


ルナは嬉しそうにジャンプして、両手でドローンを抱えた。


【キャスの失敗】

キャスは陽気に棚を見ながら、ハンドガンタイプのブラスターを手に取ってくるくると回した。


「わぁ〜、これ、銀色でピカピカ! 超カッコイイ! あ、こっちのシールドもキラキラだよー!」


店員が笑顔で説明する。


「こちらは初心者向けのブラスターと簡易エネルギーシールドです。扱いやすさを重視してあります」


キャスはウインクして言った。


「やったー! これで私も遺跡ヒーローになれるかなっ☆」


ルミはというと、棚の前で小さく俯いていた。店員が優しく声をかける。


「ご不安ですか? ブラスターは一番軽いモデルもありますし、発射時の反動も最小です」


ルミは小さく頷きながら、小型の白いブラスターを両手でそっと持った。


「……これ、使えるかな。うまく撃てなかったら……」


アスが静かに近づき、隣に立って囁いた。


「ルミ、誰だって最初は初心者です。でも、必要な時に使えるようにしておかないと、自分も仲間も守れません」


ルミはその言葉にゆっくり頷き、小さく「がんばってみる」と呟いた。


ステラはやや緊張した面持ちで、整然と並ぶ武器に目をやっていた。


「……私は、生身で戦ったことがありません。でも、選ぶべきですよね」


「ステラ」と貴志が声をかけ、やさしく微笑んだ。「無理はするなよ。でも、もし必要なら、俺たちが教える。安心して選んでくれ」


ステラは少しだけ微笑み、小型のレーザーブレードを手に取った。それは細く、青白く光る、刺突向きの軽装武器だった。


「……これなら、私にも振れるかも」


その時だった。


「見て見て、貴志さーん! 私、構え方、もう完璧〜♪」とキャスがブラスターをくるっと一回転させながら手に持ち、無造作にトリガーに指を掛けてしまい。


「バシュッ!!」


眩しい閃光が走り、ブラスターが誤射。赤い閃光がアスの腕をかすめた。


「っ……!」


アスの顔がほんの一瞬歪み、左腕に赤く焼けたような擦り傷ができた。


「アス!!」貴志が駆け寄り、持っていたハンカチで傷口を押さえる。「大丈夫か!?」


アスは深く息を吐き、顔を伏せながら怒気を抑えて言った。


「……キャス。これは“武器”です。“おもちゃ”じゃありません。遺跡でこれをやったら、誰かが死ぬんです。わかってください」


キャスの目が丸くなり、陽気な顔が一気に真剣に変わった。


「ご、ごめん……アス……わたし、やっちゃった……痛かったよね、大丈夫……?」


ルナが駆け寄り、いつもの明るさで場を和ませようとする。


「キャス、おっちょこちょいすぎ〜! アスも、お姉ちゃん怒らないで〜!」


ルミが慌てて救急キットを取りに行き、穏やかな声で言った。


「アス、すぐ手当てするから……少しだけ我慢してね」


アスは肩で息をつきながら、ようやく表情を緩めた。


「……ありがとう、ルミ。キャスも、次からはちゃんと安全装置を確認してから動かしてください。それだけです」


キャスはうなだれながら、でも小さく頷き、言った。


「うん、アス、ごめん……私、訓練、ちゃんと受ける。絶対に、次は守る」


店員が苦笑しながら装備一式を整え、袋詰めを始めた。


貴志がそれを見ながら、みんなに言う。


「ま、ハプニングはあったけど……逆にいい警告になったな。全員、気をつけていこう。ちゃんと訓練して、遺跡に備えるぞ!」


「おーっ!」と、ルナとキャスが同時に声を上げた。ステラも静かに頷き、ルミは小さく微笑んだ。


こうして、ルミナスの乗組員たちはそれぞれの不安や決意を胸に、探索の準備を整えていった。


【《ルミナス》訓練施設にて】

訓練施設のドアが重く閉じられ、空調が静かに唸り始める。室内には簡易的なバリアで囲まれた射撃レンジと、戦闘行動用のホログラフ模擬エリアが設置されていた。各自、自分の武器を手にし、ヘッドセットとプロテクターを装着する。


「よし、始めよう。今日の目標は“安全な射撃姿勢の確立”と“初動対応の基礎”。」

貴志が全体にそう声をかけ、班分けを行った。


「アス、キャスの指導頼む。ステラ、きみは俺と一緒にやろう。武器の扱い方、基礎からでいい」


キャスは元気そうに手を挙げたが、表情にはほんの少しの不安と、先ほどのミスの影が見えた。


「はいっ! がんばります! でも、アス、また怖くなったら優しくしてね…?」


アスは無言でキャスを射撃レーンへ引っ張っていった。目は完全に“教官モード”。


【キャスの訓練:鬼教官アスの地獄メニュー】

アスはブラスターを持ったキャスの後ろに立ち、鋭い声を飛ばした。


「まず構え方! 足、肩幅。腕の角度30度維持。ブレるな。目線は照準器。撃つ前に深呼吸!」


キャスが慌てて体勢を取り直す。


「は、はいっ!」


「“はいっ”はいらない。撃て。正確に、そして、安全確保」


キャスが深く息を吸って、照準を定める。バシュッ! ブラスターから赤い光が走るも、的の右下数メートルに命中すらしない。


「どこ狙ってるんですか!? 右の壁が敵なんですか? もう一回!」


キャスが撃つ。外す。撃つ。ぶれる。撃つ。撃つ…


「腕が上がってる! 下げて! 重心ずれてます! 指に力入れすぎ!」


キャスは次第に額に汗を浮かべ、膝が震え始める。目に涙すら滲ませながら、それでも手を止めなかった。


「アスぅぅ……私、失敗してばっかりで、うぅ、もうダメかも……」


「“ダメ”かどうか決めるのは、あなただけです。やめるなら、もう遺跡には来ないでください。続けますか?」


キャスが震えながら、ブラスターを構えた。


「……うん。続けるよ」


そして、数十回目の発射で、ようやく光弾が的の中心近くに命中した。


「……当たった、よね? 当たったよねっ!?」


「ええ、たった一発。ですが、そこからがスタートです」


キャスが泣き笑いで手を広げた。


「やったー! やっと“失敗の連続”から卒業だぁ~!」


アスはふっと口元だけで笑った。


「卒業はまだまだ先です。次は連続射撃と安全装填。構えてください」


【ステラの初訓練:機械のような静けさ】

その頃、ステラは貴志と共に、別レーンで静かに、しかし正確に訓練を行っていた。


「ブレードは一旦置こう。今日はまずブラスターの基本を」


ステラは頷き、手にした小型ブラスターをゆっくり構える。


「どうしても……“引き金を引く”という行為に、ためらいがあります。でも、必要ですよね?」


貴志はうなずいた。


「必要だ。でも、無理するな。引けないなら、撃たなくていい。心が決まったときに、撃て」


ステラは静かに目を閉じて、深呼吸。そして。


バシュッ!


一発、静かに、しかし正確に。見事、的の中心にヒット。


「……え?」


貴志が目を丸くした。


「ステラ、きみ本当に初めてか?」


ステラはゆっくりとブラスターを下ろした。


「解析と手順の反復は得意です。ですが、問題は“恐怖”です。撃てるかどうかは、きっとその場の判断次第でしょう」


貴志がニッと笑う。


「それでも撃てた。それだけで充分だよ。あとは経験だな。少しずつでいい」


【ルナとルミ:それぞれの自信と恐れ】

別のレーンでは、ルナが元気よくドローン2基を飛ばし、遠隔操作でターゲットを撃ち抜いていた。


「お兄ちゃん! 見ててね! この子たち、すごいんだよ! わたし、もしかして天才かも!」


貴志が笑って返す。


「うん、ルナ、良いセンスしてる。動きも正確だし、指示も的確だ。そいつら、頼りにしてるぞ」


ルナは得意げにピースサイン。ドローンが空中でくるりと回った。


その隣では、ルミが慎重に一発ずつ、小さなブラスターを構えて撃っていた。


「……怖い。でも、みんなを守るには、撃たなきゃ」


的に当たるたびに、ルミの表情が少しずつ、ほんの少しずつ自信に変わっていく。


「当たった……。次も、当てられるかな」


貴志が彼女に近づき、そっと声をかけた。


「ルミ、大丈夫。お前の撃ち方は、正確で優しい。それは武器を扱ううえで、大事なことだよ」


ルミはその言葉に小さく笑みを浮かべ、「ありがとう」と呟いた。


【夕方、訓練終了の鐘】

気づけば時間は夕刻。照明がオレンジに切り替わり、施設全体に夕方の仕事終わりのサインが鳴り響いた。


キャスはヘトヘトになりながらも、ブラスターを大事そうに持ち、貴志のもとに駆け寄ってきた。


「貴志さ~ん! 私、的にちゃんと当てられたんだよー! アスには怒られっぱなしだったけど…頑張ったよー!」


貴志は笑いながらキャスの頭をポンと撫でた。


「よく頑張ったな。お前は明るいから、訓練の空気も軽くしてくれる。これからも頼りにしてるぞ」


アスは腕を組みながら、厳しい目でキャスを見ていたが、その口元にはほんのわずかな満足の色が見えた。


ステラは黙ってブラスターを返却しながら、貴志に一言。


「これが、戦うということなのですね。次は……もっと、正確に撃ちます」


ルナがルミと手を繋ぎながら小走りで戻ってくる。


「お腹すいたー! 訓練って疲れるねー! 今日の夕飯、なぁに〜!?」


ルミが笑いながら答えた。


「たしか、カレーだって……アスが作った、スパイスたっぷりのやつ」


「ひぃ……アス姉ちゃんの、激辛で舌が壊れるやつ……」


笑いと共に、訓練施設を後にする一同。厳しさの中に、それぞれの確かな成長が光っていた。

遺跡探索のリスクから、装備品店での和気あいあいとした雰囲気で描写しました。キャスの誤射から訓練の様子も描いています。

次話では、夕飯からプライベートの時間を笑いとちょっぴりの感動を織り交ぜながら描写していきます。

ご期待ください。

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