第70話:作戦の朝と戦場の緊張
第70話として、海賊掃討作戦の朝、ルミナス艦橋での緊張感ある準備と、連合軍全体ブリーフィングでのファーエル少将とマール大尉の説明を、戦場の緊迫感を込めて描きました。
※表題を章から話に変更しました。
【ルミナス艦橋の朝】
海賊掃討作戦の朝を迎えたルミナスの艦橋は、いつも通りの朝のように見えつつも、どこか重い緊張感が漂っていた。アスがコンソールに座り、各部の点検を淡々と進めていたが、その手つきにはいつも以上の慎重さが感じられた。ルナがドローンコンソールの前でそわそわしながら準備し、ルミがセンサー席でレーダーを確認する姿も、いつもより静かだった。そして驚くことに、普段ブリーフィングにギリギリで飛び込んでくるキャスが、開始10分前に艦橋に到着していた。
キャスが少し緊張した顔で呟いた。
「ふぅ…間に合った。今日は寝坊できないよ…」
アスがキャスに目を向け、珍しく優しく言った。
「キャス、時間通りですね。特務曹長としての意識がついてきたようで、いい心がけです」
艦長・貴志が艦橋中央の指揮席に立ち、全員の視線を集めた。
彼の声は穏やかだが、鋼の芯がある。艦の鼓動が、その声に合わせて高まっていくように感じた。
「みんな集まったね。それじゃ始めるよ。今日は海賊と戦う日だ。でも、何か新しいことをするわけじゃない。いつもと同じように、全力で持ち場を守ってもらいたい。それだけでいい」
貴志が一人ひとりの顔を見て、優しく、しかし力強く指示を出した。
「アス、操艦と火器管制を頼む。いつも通り、艦を完璧に動かしてくれ」
アスが敬礼し、冷静に答えた。
「艦長、分かりました。私に任せてください」
「ルナ、ドローン隊を頼む。お前の機動力で敵を撹乱してくれよ」
ルナが目を輝かせ、元気よく返した。
「お兄ちゃん、分かったよー! ドローン隊でバッチリやっちゃうね!」
「キャス、防御システムを頼む。チャフとフレアのタイミング、しっかりな」
キャスが緊張しながらも、明るく敬礼した。
「艦長、全力で頑張ります! 訓練の失敗は繰り返さないよ!」
「ルミ、レーダーで索敵を頼む。ルミナスをよく知ってるお前だから、何かあったら教えてくれ」
ルミが優しく微笑みつつ、真剣に頷いた。
「艦長、ルミナスはお任せしてね。私、みんなを守るよ」
貴志が改めて全員を見渡し、穏やかだが力強い声で締めた。
「みんな、いつも通りやってくれれば勝てる。俺たちのルミナスなら大丈夫だ。頼んだぞ」
艦橋に緊張感と信頼が混ざった空気が流れ、全員がそれぞれの持ち場で準備を始めた。
その瞬間、艦橋に一斉に椅子が滑る音が響き、全員が動き始めた。
艦長席に静かに腰を下ろした貴志は、誰にも聞こえないほどの声で呟いた。
「いよいよだな…みんな、頼むぞ」
【連合軍全体ブリーフィング】
連合軍の指定宙域に到着したルミナスの艦橋ディスプレイに、通信が繋がった。
画面に映ったのは、凛とした姿勢の若い女性士官、ファーエル少将だった。
彼女の鋭い目つきと落ち着いた声が、艦橋に戦場の緊張感を一気に持ち込んだ。
「私は今回の海賊掃討作戦の指揮官、ファーエル少将だ。貴官らは私の指揮の下、全力をもって取り組んでもらいたい」
ファーエルが背景のディスプレイを指し、作戦概要を示す図を表示した。
「今回の掃討対象は、海賊要塞フォートレス、通称『リーフ』だ。過去、この宙域を通過する輸送船や軍艦が手痛い目に遭ってきた海賊の拠点だ。
今回の作戦でこの暗礁を取り除き、宙域を安全に航海できるようにするのが目的となる。
詳細は副官のマールから説明させる。各自、全力を尽くせ」
ファーエルが一歩下がると、副官のマール大尉が前に出た。彼女の声は冷静で、事務的だが、戦場の重みが感じられた。
「マール大尉だ。今回の戦力は、ファーエル少将麾下の直属部隊、旗艦の空母『メディス』、戦艦『デミス』以下6隻。アレス大佐の第1分艦隊8隻、ブラウン大佐の第3分艦隊8隻、そして傭兵艦3隻。合計25隻だ。なお、傭兵艦はファーエル少将の直属部隊に編入される」
ルミナスの艦橋で、キャスが小さく呟いた。
「私たち、少将の直属か…緊張するなぁ」
マールがディスプレイに要塞の図を表示し、説明を続けた。
「作戦の流れはこうだ。まず、各部隊の戦艦を中心とした重レーザー砲による艦砲射撃と遠距離ミサイル攻撃で、敵要塞の攻撃兵装、シールド装置、索敵装置を無力化する。海賊艦艇は、巡洋艦が最大で旗艦と推定される。その他、小型のミサイル艦が多数おり、合計15隻程度と見ている。こちらの接近またはこちらへの攻撃で出てくると推定される」
ルナがドローンコンソールを握り、目を輝かせた。
「小型艦なら私のドローン隊でやっつけちゃうよ!」
マールがさらに続けた。
「各部隊の巡洋艦以下は、接近する海賊艦艇の撃破を実施せよ。空母『メディス』は、接近してくる海賊艦艇を艦載機で各個撃破する予定だ。10時ちょうど、戦艦『デミス』の重レーザー砲およびミサイル攻撃開始を合図とする。各艦は全力をもって取り組め。以上」
通信が切れ、艦橋ディスプレイが暗くなった。
【ルミナス側の緊迫感】
通信が終わると、艦橋に一瞬の静寂が訪れた。貴志が立ち上がり、全員に目を向けた。
「ファーエル少将の直属か…俺たち、逃走艦の捕捉が主だって言ってたな。アス、ルミ、敵の動きをしっかり捉えてくれ。ルナ、キャス、接近してきたら即座に対応だ。準備はいいな?」
アスがコンソールを操作し、冷静に応じた。
「艦長、艦の制御と火器管制は万全です。敵の動きに即応します」
ルナがドローン隊の準備を進め、元気よく言った。
「お兄ちゃん、ドローン隊、いつでも出せるよ! 海賊、逃がさないからね!」
キャスが防御システムをチェックし、少し緊張した声で答えた。
「貴志さん、チャフとフレア、準備OKだよ。私、防御頑張るから!」
ルミがレーダーを睨み、穏やかだが真剣に言った。
「艦長、ルミナスのレーダーは私が守るよ。昔、似たような海賊と戦った時、逃走艦が狡猾だったから…何かあったらすぐ教えるね」
貴志が全員を見て、力強く締めた。
「よし、みんな、いつも通りだ。俺たちならやれる。10時まであと少し、気を引き締めていこうぜ」
艦橋に戦場の緊張感が満ち、ルミナスは作戦宙域での戦闘開始を静かに待った。
貴志の優しさ、アスの冷静さ、ルナの元気、キャスの緊張と決意、ルミの経験が、チームの結束を固め、確実な任務成功を約束していた、はずだった。
ルミナス艦橋の緊張感ある朝と、ファーエル少将による全体ブリーフィングを戦場の緊迫感を持って描きました。
次話では、ルミナスの長い1日が始まります。
ご期待ください。




